第7話 不思議な不思議な生き物
僕とシルバーは一筋の光をたどった。その先には何が広がっているのだろう。どんな世界が待ち受けているのだろう。期待と不安が入り混じる不思議な感覚に陥っていた。徐々に光が近づいてくる。眩しさに耐えられず思わず目を閉じる。しばらくしてゆっくりと瞼を開いた。
◇◇◇
ここは森なのかな。木々は生い茂り、地面を覆う草花が太陽の光を受けてキラキラと輝いている。鳥たちがさえずりと心地よい風が吹く。空気が美味しい。
「……ここはどこだ」
「思ったより普通の世界ね」
シルバーは冷静に答える。
後ろを振り向くと禍々しい大きなドーム状の闇が見える。僕たちの世界と繋がっている時空の歪みだ。
「とにかく、この時空の歪みの原因を調べないと」と僕は言った。
「そうね」シルバーが答えた。
まずはこの場所を知らなければならない。周囲を探索することにした。あたりをよく見ると、時折、見たこともない不思議な生き物の姿を見かけることがあった。こいつらが地球を襲う怪物なのかもしれない。
草むらの先に道のようなものが続いている。おそらく町があるのだろう。僕とシルバーはそこへ向かうことにした。
道に近づくために草むらに向かって一歩踏み出した。
その時だった。突如として、目の前にネズミの怪物が出現した!体色は鮮やかな紫色で、腹部から鼻先にかけては明るく白い。瞳は赤い。尻尾の先がくるりと丸まっている。
「グルルルゥ」
鳴き声を発しながら僕たちに向かって体当たりしてきた。
「危ない!」と叫び、僕はとっさに避けようとするが間に合わない。
(ああ、死んだな……)
痛みを感じる暇もなく僕は地面に倒れ込む、目の前が真っ暗になった。
◇◇◇
明るい部屋の中で目を覚ます。
(生きているのか……?)
手を動かしてみるが動く。身体を起こす。自分の身体を見る。特に変わった様子はないようだ。服も着たままである。近くにいるシルバーはまだ眠っているようだ。
「気がついたようじゃの~」
「ん?」
声の方に顔を向ける。そこには一人の老人がいた。真っ白な短髪で、鋭い眼差しをしている。どこか威厳を感じさせる雰囲気を持っている。年齢は60歳くらいだろうか。白衣をまとっており、その手に握られているのは分厚い本であった。彼はこちらに歩み寄り話しかけてきた。
「はじめまして、ワシの名はユキナリ。君の名前は何というのかな?」
「僕は京太といいます」
「おぉそうか、君の名前はキョウタというのか」
そう言って椅子に腰掛けた。僕にも座るように促した。彼の言葉を聞き、自分がなぜここにいるのか思い出そうとした。たしか、紫色のネズミの怪物に襲われ……。その後の記憶がない。
「あの、あなたが助けてくれたんですか? ありがとうございます。ところでここはどこですか?」
「ここはワシの研究所だ。ワシはこの世界の怪物について研究しているんじゃよ」
「怪物?」
「うむ。例えばこの子じゃな」
そう言われて老人の足元を見ると、そこには燃えさかる爬虫類の怪物がいた。
「この子は火を噴く怪物じゃ。愛らしい顔をしておるじゃろ」
「はい、可愛いですね」
「実は凶暴な性格をしておってな、油断すると大火傷をするぞ」
「え!?」
見た目はとても可愛らしく無害に見える。でも、もし暴れて火を噴いたら……、と思うと恐ろしい。
「他にはこんな奴もいる」
次は背中に植物が寄生した怪物が現れた。背中の植物から数本の触手を伸ばしている。
「この生き物は?」
「植物の怪物じゃな。毒ガスを出して獲物を弱らせる。触手を使って攻撃してくるから注意が必要じゃ」
「なるほど……」
「こいつは成長すると、光合成で集めたエネルギーを使ってビーム光線を出すようになる。危険な怪物じゃ」
(気持ち悪い触手だな……不思議な生き物だ……)
その後も様々な生物が紹介された。どの怪物も不思議な見た目をしていた。そして彼らは全てユキナリ博士の飼い慣らしているペットだということが分かった。
「ユキナリ博士はどういう研究をしているんですか?」
「ワシはこの世界の全種類の怪物について調べ、図鑑を完成させようとしているんじゃ」
「すごいですね……、あの、僕は草むらで怪物に襲われました。どうやってこの怪物たちを飼い慣らしているんですか?」
僕は気になって質問した。
「それはな、彼らの好物を毎日与え、愛情を持って接し、信頼関係を築くことが重要なのじゃ」
「すごい、本当に飼い慣らせているんだ……」
「キョウタも怪物を飼ってみるといい。慣れればきっと愛着が湧くぞ」
ユキナリ博士は笑みを浮かべて言った。
「怪物……ですか……」
そんなもの飼えるわけないだろ!と思ったが口には出さなかった。……しかし、僕たちの世界を救うための重要なヒントだ。過去に僕たちの世界を襲った怪物はこの世界の怪物たちだ。そうすると、僕たちがユキナリ博士のように怪物を飼い慣らすことができれば、争わずに済むのではないだろうか……。これからの対策について色々考えていると、シルバーが目を覚ました。
「シルバー!大丈夫か?」
彼女は辺りを見回して呟いた。
「ここはどこ?」
「ユキナリ博士の研究所だよ、博士が僕たちを助けてくれたんだ」
「そうなの?」
「うん、それにね。ほら見てごらん」
僕の指差す先には先ほどの紫のネズミの怪物がいた。
「グルルルゥ」
ネズミの怪物はそのつぶらな瞳で僕らのことを見つめていた。シルバーが恐る恐る近づくとネズミの怪物も近寄ってきた。
「かわいい~!」
シルバーが抱きつくと、ネズミの怪物も彼女の身体に尻尾を巻きつけた。嬉しそうだ。その様子を見ながら、僕は考えていた。
(待てよ……あの触手を出す植物の怪物を飼い慣らすことができたら……、色々楽しめるんじゃないか!?)
「ユキナリ博士、怪物を一匹貸してもらえませんか?」
「ワシから言おうと思っていたところじゃ。構わんよ、代わりにワシの図鑑を完成させるのを手伝ってくれないか?」
「はい!」
「ではこの中から好きな子をそれぞれ一匹ずつ選ぶといい」
そう言ってユキナリ博士は僕たちの前に3匹の怪物を並べた。僕は迷わず、植物の怪物を選んだ。
「名前はつけてあげるのか?」
「はい、『フッシー』にします」
僕は植物の怪物を抱きしめた。
「これからよろしくな、フッシー」
「フッシー!」
「すぐ懐いたようで、よかったのう」
そう言ってユキナリ博士も笑顔になった。
「私はこのネズミの怪物にしようかな」
シルバーは珍しくガスマスクを外してネズミの怪物を抱きかかえていた。ネズミの怪物は彼女にすり寄って懐いているようだった。
「名前は『ピョン吉』にするわ」
シルバーはピョン吉を抱いて微笑んでいた。ピョン吉は彼女の頬をペロリと舐めた。
「シルバー、せっかく怪物をもらったんだ。僕と勝負しろ」
「別にいいけど、私に勝てると思ってるの?」
「もちろんだ。お前を負かして僕はもっと強くなる」
「分かったわ。やりましょう」
そうして僕らはバトルを始めた。
シルバーが しょうぶを しかけてきた!
シルバーは ピョン吉を くりだした!
「ゆけ!フッシー!君に決めた」僕はフッシーをくりだした。
「フッシー、触手攻撃だ!」
触手がニュルっと伸びて、あっという間にシルバーを捕まえてしまった。
「くっ、放せ」
シルバーの体に触手が巻き付いている。
「ふはは、触手で捕まったな。もう逃げられないぞ」
「何よこれぇ」
シルバーが必死にもがくが抜け出せないようだ。
「さあフッシー、触手で彼女をひん剥いてやれ」
「フッシー!」
フッシーは無邪気に返事をした。そして触手は器用に彼女の衣服を脱がし始め、彼女の上着をはぎ取った。
「やめて!こんなところで裸になるなんて嫌!お願い!」
「おぉ、いいね。そのままブラジャーも取っちゃおうか」
「フッシー!!」
「そんなぁ……」
シルバーの美しい肉体があらわになってゆく。彼女は羞恥に耐えているようだ。彼女の豊満な胸がぷるんと揺れた。
「うわ、凄いな……」
触手がシルバーの体の上でウネウネ動き、身体中を撫でまわしている。彼女の顔は次第に蕩けた表情になっていった。僕は興奮していた。
「いい眺めじゃないか。フッシー、そのまま、パンツまで脱がしちゃえー」
「フッシィィー!!」
僕の指示通り、シルバーの下着に触手が掛かる。その時、シルバーが動いた。
「調子に乗るなぁ!!」
シルバーがそう言った瞬間、僕の体は強力な力で地面に吸い寄せられ、全身が叩きつけられた。僕は仰向けに倒れ、身動きが取れなくなってしまった。フッシーも戦闘不能になった。彼女は怒りの眼差しを僕に向けている。
「これは『じゅうりょく』か?」
「そうよ、これで身動きできないでしょう」
僕の体は鉛のように重く、全く動かすことができない。
「くそぅ……」
彼女は勝ち誇ったように言う。
「降参するなら、許してあげてもいいわ」
「誰が降参なんかするかよ!」
だが、鉛のような体はピクリとも動かせず、とても戦える状態ではない。シルバーは余裕綽々といった様子で僕を挑発してくる。
「私のこと、甘く見てたんじゃないの?その程度の力でよく私に挑もうと思ったわね」
シルバーにバカにされ、僕は言い返す言葉もない。
(このままでは勝てない。どうすれば……)
シルバーがこちらに近づいてくる。彼女は僕の腰の上で馬乗りになり、見下ろしてくる。
「ねぇ坊や、悔しいの?」
シルバーは妖艶に笑いながら僕に問いかける。そして僕の顔に手を伸ばし、優しく頬を撫でた。
「でも、あなたが悪いのよ。私に勝負を挑むから」
そう言うと、今度は首筋を指先でツゥッとなぞってきた。ゾクっとした感覚が走る。体が震えてしまう。
「ひゃうっ」
僕は声を上げてしまった。恥ずかしくて死にそうだ。シルバーはクスリと笑うと耳元で囁いた。甘い香りが漂ってくる。
「可愛い反応をするのね。そういうの、嫌いじゃないわ」
「ぐぬぬ」
シルバーは顔を近づけてきた。彼女の吐息が顔にかかる。
「キスしてあげようか」
シルバーの柔らかい唇が触れた。柔らかくて、温かくて、気持ちよかった。体の芯が火照り、力が抜けてゆくような感じがした。
「ふふ、ドキドキしてきたでしょ」
彼女は舌を僕の口の中に入れて、絡ませてきた。熱い唾液が混じり合う。頭がボーっとして何も考えられない。シルバーは僕を抱きしめ、強く密着してくる。お互いの鼓動が高鳴っているのを感じる。
つづく