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第30話 ブラジャーの着け方

脱衣所ではシルバーがバスタオルを体に巻いてドライヤーで頭を乾かしていた。その姿をじっと眺めていると、彼女は鏡に映る僕たちに向かって話しかけてきた。


「ねぇ、京太さん……」


「どうしたんだ?」


「そういえば、あなたたちの服はここにないけど、どうするつもりなの?」


そう言われてみると、たしかにその通りだ。今、この宿に僕らの着替えはない。僕とレナは地球から転移して来る前に裸になったのだ。


「それは困ったな……。地球に服を取りに行ったら、またここに戻って来れる自信がない……。僕はまだ【時空転移】を上手くコントロールできるか分からないんだ……」


「それじゃあ、私が京太さんとレナの服を買ってくるから、それまでは裸で我慢してくれるかしら?」


「ああ、分かった。頼むよ。レナもそれでいいか?」


「うん!お願いします!!」


「任せてちょうだい。それじゃあ、服を着たらすぐに行ってくるわね。二人とも大人しく待っていてね。あと、ちゃんと体を拭かないと風邪引いちゃうかもしれないから、しっかり体を拭いて、髪を乾かすのよ」


「分かった」


シルバーは体に巻いたバスタオルを取り、下着を身に着け始めた。僕はその様子をじっと眺めている。彼女がショーツを足に通そうと前屈みになると、腹筋を覆っている薄い皮下脂肪の柔らかさが強調される。豊満な乳房が重力に従って垂れ下がりプルンと揺れ動く。それから彼女がショーツを上に持ち上げていくと、秘部と臀部がショーツによって覆われた。透け感があるため裸よりも卑猥な感じがする。


続いてブラジャーを手に取り、慣れた手つきで装着する。彼女のブラジャーの着け方は、一度お腹のあたりにブラジャーを巻いてからそこで先にホックを止めてしまうやり方だ。メーカーが推奨する手順ではないが、素早くブラジャーを着けることができるというメリットがある。ホックを止めると、彼女はお腹に巻いたブラジャーを胸の方に持っていき、肩紐を掛け、カップの中に自分の乳房を収めていく。ブラジャーを着けると彼女の大きな膨らみがより一層強調される。


僕はシルバーが下着を身に着ける様子に釘付けになってしまっていた。レナも僕の隣に立ってその様子をじっと見つめている。シルバーの美しくも淫靡な雰囲気に魅了されてしまっていたのだ。最後に、いつもの黒いローブを着て、頭にガスマスクを装着する。準備ができたのか、シルバーは僕たちに声を掛けてきた。


「じゃあ、行ってきます」


「気を付けてな」


「早く帰ってきてね!」


シルバーは軽く手を振って部屋から出て行った。


「それじゃあ、僕たちも体と髪を拭こうか」


「うん、そうだね」


僕は脱衣所の棚に置いてあったタオルを手に取り、まずはレナの髪の毛を優しく撫でるようにして水分を取っていく。


「痛くないか?」


「大丈夫だよ」


「そうか。レナの髪は綺麗だなぁ。サラッサラで、すごく柔らかい……」


「ありがとう……」


彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめながら微笑んでいた。


「よし、髪は一旦これくらいにして、次は体を拭いていくぞ」


「はーい」


僕は彼女の体に付いた水滴を全てタオルで吸い取っていく。首元や背中、腕、脚、お腹など、隅々まで丁寧に。特に、脇の下や胸の谷間、太ももの内側は特に念入りに。


「んっ……あっ……くすぐったいなぁ……。ふふっ……!」


「我慢してくれ。ちゃんとしないと体が冷えて風邪を引くかもしれないからな」


「んぅ~……。あっ!ちょっと!そこはダメだってば!!」


「ごめんな……。でも、もう少しで終わるから……」


「えへへ……。いいよ。続けて……」


彼女は声を出しながらも、僕のすることを全て受け入れてくれていた。僕は彼女の反応を楽しみつつ体の水滴を拭いていった。


……


「はい、これで終わりっと」


「ふう……。キョウタって意地悪なんだね……、子ども扱いしたり、急に弄んだり……」


「すまない。レナの反応が可愛くてつい……」


「もう!!そういうところズルいんだから!!!」


「ははは……、ごめんな……」


「……もう、……今度は私の番だよね?キョウタの体を拭いてあげるよ!」


「ああ、頼んだよ」


レナはタオルを手に取って、僕の背後に回り込んだ。


「じゃあ、始めるね。痛かったら言ってね」


「分かった」


彼女はまず首元の辺りからタオルを当て始めた。そしてそのまま、肩、右腕、左腕、背中、腰、お尻、足の後ろ側と順番に拭き取っていった。次に、前側に移る。


「じゃあ、胸の方に行くね。失礼します……」


「どうぞ」


彼女は僕の胸板にタオルを押し当てた。そこから円を描くように胸の外側へと移動させていく。胸筋のラインに沿ってタオルを動かしていくのだ。胸をマッサージするように、胸全体を包み込むようにして、ゆっくりと丁寧に。


「気持ち良い?」


「ああ、とても」


「良かった。それじゃあ続けるね」


続いて僕のお腹や下腹部、足の前面へとタオルを滑らせていく。その動きはとても繊細で丁寧だった。彼女の手付きが心地良く、僕は目を閉じて彼女の手に身を委ねる。


「こんな感じかな。どう?」


「うん、凄く上手だと思う。ありがとう」


「えへへ、よかった!」


僕はしばらくそのまま彼女に体を拭いてもらう感触を楽しんだ。


……


「よし、僕の体を拭くのはもう大丈夫。レナはドライヤーで髪を乾かしていいよ。女の子は髪が命なんだろう?」


「うん、ありがと!」


彼女はドライヤーで自分の髪を乾かし始めた。その間、僕は部屋の中を探索することにした。シルバーが普段どんな生活をしているのか知りたいと思ったからだ。


(といっても、ほとんど物がないんだよな。宿に備え付けの備品くらいしか置いてない)


部屋の中にはベッドと机と椅子、テレビ、小型冷蔵庫、クローゼットぐらいしかない。部屋の床を見渡すと、ふと、倒されて置いてあるキャリーバッグが目に入った。


(あれは……?)


近づいて確認してみると、それは旅行用のキャリーバッグのようであった。僕は恐る恐る蓋を開ける。すると中にはシルバーの下着類や衣服などがぎっしりと詰まっていた。彼女の服は全て黒色のもので統一されており、ブラジャーとショーツも全て黒であるようだ。


僕は少し躊躇いながらもその黒い下着を一つ取り出してみた。黒いレースの装飾が施されたセクシーなデザインのショーツだ。それを指に引っ掛けて持ち上げ、しげしげと眺めている。何だかいけないことをしているような気分になった……。


いけないと思ったものの何故か僕は無性に気になってしまい、さらに興味本位で他のものも探り始める。ブラジャーとショーツ以外に、ガーターベルトとストッキングもあった。彼女がガーターベルトを着けているところを想像するだけで、興奮した。


(……!?)


そのときだ。突如として強烈な視線を感じた気がしたので振り返ると、そこにはいつの間にかレナがいた。こちらに向けてジトッとした目を向けていた。慌てて手の中に収めたものを隠す。レナは呆れた表情をしていた。恥ずかしさと焦燥が入り混じった複雑な心境になる。顔は赤く染まっていることだろう。顔全体が熱いのだ。そんな僕を見て彼女は言う。


「……ねえ、全裸で何をやってるの?……流石にちょっと引くんだけど……」


「いや、これは違くて!!……ただ見てただけなんだ!別に変なことを考えていたわけじゃない!」


「……まあ、キョウタの変態行為にはもう慣れてるから……別に何も言わなくてもいいけどさ……私も服が無いから全裸だし……」


「……」


「でも、いくらなんでもシルバーの下着を漁るのはダメだよ……人として」


「うぅ……そうだよな……。悪かったよ……」


「それにしてもキョウタって意外とムッツリさんなんだね……」


「……はい」


僕はシルバーの下着を元の場所に戻した。そしてレナと一緒にベッドに腰掛ける。彼女は僕の隣に座っているのだが、どうしても意識してしまう。肩と肩が触れ合うほどに距離が近いのだ。彼女の呼吸の音やシャンプーの香りが漂ってきて、落ち着かない気持ちになってしまう。


「暇だね……」


彼女は静かに呟いた。


「ああ、暇だな……」


僕は同意して相槌を打つ。


「でも退屈ではないよ……。キョウタと一緒だから」


「そっか」


「うん!」


レナは僕の方を向くと、ニコっと笑みを浮かべた。彼女はベッドに腰かけたまま足をパタパタと動かしている。その姿が可愛らしく思えた。


「あのさ……、キョウタとシルバーってどういう関係なの?」


突然レナは質問を投げかけてきた。


「……え?」


僕は思わず訊き返す。


「……いや、ほら!恋人とか愛人なのかなって思って!!」


そう言って彼女は悪戯っぽく笑う。


「んー、シルバーは恋人というより愛人かなぁ」


「やっぱりそうなんだね……、じゃあさ、もし私がキョウタの愛人になったらどう思う?」


彼女は上目遣いでそう尋ねてくる。その様子はどこか妖艶な雰囲気があった。僕は緊張してしまい、声が裏返ってしまう。


「お、おお……、それはもちろん嬉しいよ。レナみたいな可愛い子と付き合えるなら大歓迎だ。すごく幸せだと思う。でも……、レナのことは大切な家族だと思っているし、今の関係を壊したくないというか、ずっと一緒に暮らしたいというか……」


僕の頭は混乱していた。自分でも何を言っているのかよくわからない。


「……ふふっ、ありがと!私も大好きだよ!」


彼女は楽しげに微笑むと立ち上がり、僕に抱きついてきた。


「うわっ!?ちょっ、レナ!?」


そのまま押し倒されるような形でベッドに倒れ込む。彼女の豊満な胸が顔に押し付けられた。彼女の体は柔らかく、温かかった。彼女は両手で僕を抱き締めたまま動こうとはしない。僕は動けない。


「ねえ、キョウタ……私のこと好き?」


彼女は甘えた声でそう問いかけてくる。


「ああ、好きだよ……」


僕は彼女の体をギュッと抱きしめた。心臓が激しく脈打っているのを感じる。ドキドキする。だが嫌ではなかった。心地よい高揚感に包まれていた。


「キョウタのことが好きなの……」


レナの言葉が脳に響く。それは甘く、蕩けるような響きだった。僕は彼女の背中に回した手に力を込める。すると彼女はビクッと震えて、ゆっくりと顔を上げた。彼女は少し潤んだ瞳で僕を見つめている。僕は吸い込まれるように彼女の唇に自分の唇を重ねた。彼女は抵抗しなかった。柔らかな感触に心を奪われる。頭がボーっとしてきた。何も考えられない。何も……。ただ、このまま永遠にキスを続けていたいと思った。いつまでもこうしていたい。そう思った。そのとき―――


ガチャリという音が部屋に響いた。


「服買ってきたわ……」


「…………」


「…………」


「……ごめんね、ノックを忘れてしまったわ。それにしても随分と盛り上がってたみたいね……」


「ああ、うん、ちょっと盛り上がったね……」


「そ、そうだね……」


「そろそろ服を着たらどうかしら?風邪を引いてしまうかもしれないわよ」


「そうだな……」


「そ、そうだね……」


僕はレナと一緒に立ち上がって、シルバーが買ってきてくれた服を着た。



つづく

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