第五十話「サイボーグテツの憂鬱」
改造されて悪に染まったサイボーグテツだが、脳や体そのものは間違いなくテツのものである。時々、自分ではわからない記憶がフラッシュバックすることが度々発生するのであった――。
(なっ、なんだ、このボロ家は……⁉ それに、この女と赤子は……なにか、どこかで見たような、見ないような……ウウッ! なんだ、この温かいような変な気分はっ⁉ 頭が痛いっ! ウウッ……)
苦しみながら、両手で頭を抱えるサイボーグテツ。
「ハァ、ハァ、ハァ……。なっ、なぜ! 時々、この光景が俺の脳裏に浮かぶのだっ⁉」
サイボーグテツにとっては、それがなんの光景なのかもわからず……フラッシュバックが起こる度に、変な気分でひたすら苛立つのみであった。
そこに、黒装束の団員が報告に入ってくる。
「テツ指揮官。全国各地に装置の子機を配置して参りました。政府はもちろん一般国民の誰にもバレず、まず発見不可能な場所に配置したので完璧です。後は念波エネルギーを一週間チャージして、スイッチを押すだけで国民は壊滅です」
苛立って頭を抱えていたサイボーグテツは、それを聞いて首を回しながら背筋を伸ばす。
「そっ、そうか……。よし、ご苦労!」
「この作戦は、最後まで秘密裏に実行してしまってもよろしいのですが……。我々ザラス団は、至急に相手を殺害したい場合以外は『まず相手にゆっくり恐怖を与え、その末に実行する』というのが基本的なモットーでございます」
「ほう」
「ですので今回は、我々が念波鉱石や関連機器を国から強奪したことを唯一知っている『政府高官』にだけ先に通達し、そいつらに恐怖を与えた上で実行しろというのが上からの指令でございます。では指揮官、よろしくお願いします……」
――このような経緯で、サイボーグテツによる政府高官へのテロ宣言がなされたのである。
もうテロ実行日までは、残り一週間弱しかない。そんな中、オクマーマは『どのようにしたらテロを止められるのか』と、一人で孤独に悩むのであった。
「政府の特殊部隊は、もう子機の場所を必死に捜索しているらしいっちゅが……。手がかりもないのに一週間以内に見つけるのは、まず不可能っちゅ。オクマーマは、どうしたらいいんでちょうか……」




