第四十九話「悪のサイボーグテツ」
アキを処刑したザラス団員たちは、テツの処置について相談を始める。
「大和博士はどうします? このままだと、まもなく死んでしまいますが……」
「今、上からの指令が来た。仕方ないので手先のサイボーグとして改造し、鉄砲玉の前線指揮官として利用する方向に切り替えろとのことだ」
まず団員たちは、死ぬ寸前になっているテツの脳に『絶対取り出し不能のチップ』を埋め込むのであった。そして肉体も人口筋肉や人口皮膚で補修し『悪のサイボーグテツ』として、蘇生させたのである。
サイボーグテツの人相は本来のテツより悪くなり、肌は人工皮膚で補ったとはいえ――一度黒焦げになってしまった影響で、全体的に少し濃い色となっていた。
「よし、改造は成功だ。大和博士の頭脳や念波に関する知識は、アキの愚かな拷問のせいで本来の大和博士より劣る状態になってしまったが……。それでも、まだ世界で唯一『念波を活用出来る第一人者』であることには違いない」
そこにまた、別の黒装束団員が入ってきた。
「報告します。大和アイコ夫人は、娘の死亡で精神がやられて夢遊病のように家を出たまま行方不明になってしまった模様です。最後に山の方へ向かったようですが、そのまま消息を絶ちました」
「なに? 行方不明だと? ……まあいい。毒が潜伏していれば、どこにいようが発病して結局のたれ死ぬだけだ。もし万が一死ななかったとしても、我々がいずれ起こす大規模テロでどちらにせよ死ぬことになる。もう博士がこうなってしまった以上、拷問の餌としての使い道もなくなってしまったからな。捜索の手間をかけるだけ無駄だ、放置しておけばよい」
「了解しました」
「念波鉱石は、とりあえずこのサイボーグテツの体内にセットしておいた。どちらにしろ彼にしかこの特殊念波をマトモに扱えないのだから、彼の体内にセットしておけば都合がいいだろう」
こうして、ザラス団の新たな前線指揮者『悪のサイボーグテツ』が誕生したのである。
サイボーグテツは脳に受けたダメージにより、本来のテツよりも知能は劣る。とはいえ、それでも念波の機器を作る頭脳は十分残っていた。サイボーグテツの知能でも作れる限りの念波兵器を、ザラスのテロのために開発してしまったのだ――。
「ハッハッハ! ついに出来たぞ、俺は天才だ! この子機を全国に数か所配置して、一週間念波エネルギーをチャージすれば……全国の人間を、すべて一瞬で消滅させられるぞ!」
「テツ指揮官、さすがです。それでは、この子機を我々が絶対にバレないように全国各地に配置して参ります……」
「それと、この小さな親機も火山のふもとに埋めておいてくれ。深く埋める必要はない、浅くていいからバレない所であれば十分だ。この親機が火山のマグマエネルギーを使って念波エネルギーをさらに増幅し、各子機へ超念波エネルギーをチャージする仕組みになっている。じゃあ、頼んだぞ!」
「かしこまりました。おまかせください……」
親機と数個の子機を持ち、ザラス団前線アジトの研究室から出ていく黒装束の団員たち。それを見ながら、自信満々に笑うサイボーグテツ。
「フフッ。この作戦を成功させれば、俺はザラス団の中でも確固たる地位を築けるだろう。生物がいなくなったこの国を無傷で占領し、ここを拠点として世界征服だ!」
そんなふうに考えるサイボーグテツだが、部屋を出て行った黒装束の団員たちはニヤリと笑っているのであった。
「バカめ……。サイボーグテツも、ザラス団の正体を隠したままテロ活動するために顔出しで最前線に出す鉄砲玉の一人にすぎない。今回の作戦がもし失敗したら、彼も当然お役御免に決まっているであろう。クックック」
ザラス団において、表に顔を出すのは必ず使い捨ての鉄砲玉だけである。その統制が徹底されている、恐ろしい組織であるのだ。
「本来の大和博士だったら、知能もどんどん進化するのでこの先も必要だったのだがな。このサイボーグテツは、ただでさえ本来の大和博士より劣化している上……これ以上、脳が進化することもないのだ。だから彼は、この兵器以上の念波兵器はもう生み出すことが出来ない。もし今回のテロが失敗したら、彼も用済みで処刑されるだけだ。クックック」




