第三十六話「所長ちゃんの行く末」
オクマーマはとりあえず、ノリオの元へ向かうが――。
(オクマーマは、一体どうしたらいいんでちょうか。ザラス団のことは、ノリオちゃんに知らせたら危険っちゅ。ノリオちゃんは、知ったら必ず命がけでもザラス団を探ろうとする正義漢っちゅ。このことは、オクマーマだけでなんとかするしかないっちゅ……)
オクマーマが、深刻な思いでノリオの編集室に到着すると――それとは正反対に、勇んで話しかけてくるノリオ。
「あっ、オクマちゃん! 前から頼まれていた『研究所が解散した後、大和テツ所長がどうなったか』という件だけどね、やっと調査出来たよ!」
「えっ⁉ 本当っちゅかっ!」
「ああ。大和博士は研究所の解散後、中小のロボット工学研究所を転々としていたんだ。そこで、普通のメカロボットについては研究を続けていたらしい。ただ念波の研究については設備もないので、研究所が閉鎖されてからはストップ状態だったみたいだ」
「そ、そうっちゅか……」
「しかも研究所を設立した時の莫大な借金が残っていて、かなり苦しい貧乏生活だったらしい。それでも支えてくれる良い女性と出会ったらしく、その方と結婚して娘さんも授かったそうで。それからは、幸せに暮らしていたそうだ。でも……」
「どっ、どうしたっちゅか?」
「大和博士はそれから、交通事故にあって亡くなってしまったらしいんだ……。今から、ほんの数年前に」
「ええっ⁉」
「博士は嵐の日にタクシーに乗って、海沿いの絶壁道路を走っていたところ……なんらかの原因でガードレールを突き破り、車ごと海に落ちたそうだ」
(だったら……。オクマーマが見たあの所長ちゃんに似ていた指揮官は、所長ちゃんとは別人なんでちょうか。確かに、写真で見た所長ちゃんより怖そうな顔だったっちゅ。それに、肌の色も濃かったように見えたっちゅが……)
「ただし。数日後に運転手の遺体は発見されたが、大和博士は遺体すら発見されず状況判断で死亡扱いにされたらしい。だから厳密に言えば、博士が百パーセント死んだとも断言出来ないんだ」
(遺体は、発見されてないっちゅか! じゃあ、生きていた所長ちゃん本人の可能性も……僅かに残りまちゅ)
「それでその事故はね、単なる交通事故のニュースとして『嵐の日に乗客一名を乗せたタクシーが崖を転落、二人とも死亡』とだけ一応報じられたようだ。でも『その被害者が、以前に念波研究で一時話題になった大和博士だった』という点まで報じたメディアは、一切皆無だったらしい」
「どうしてっちゅか?」
「もう人々の記憶から、念波のことはすでに風化していたのもあるけど……大手メディアは、元々大和博士を理不尽に叩いていたからね。騒がれることもなく、ひっそりと処理されてしまったようだ」
「そうだったっちゅか……」
「それでね、オクマちゃん。博士がそうなってしまって、残された奥さんと娘さんのその後なんだけど……。割とつい最近、その娘さんも病気で亡くなられたらしいんだ」
「…………⁉」
「そして、奥さんの方は……娘さんが亡くなられた直後、家を出たまま行方不明になってしまったとのこと。奥さんについては、貧乏すぎたせいか不運にも写真の一枚すら残ってないそうだ。仮に極一部の顔を知ってた人を探し出せたとして、モンタージュを作るとしても……記憶の曖昧さとか色々な難点があり、再現率3割以下のあまり似てないものしか作れないらしい。完璧に作るのは、ほぼ困難とのこと」
「ああ~っ……」
力なき溜息を出し、ガックリと肩を落としてしまうオクマーマ。
「でも一応、大和一家が住んでいた家の場所は突き止めたよ!」
「ほんとっちゅかっ⁉」
「かなり人気のない場所にポツリとある、相当なオンボロ家らしい。奥さんが行方不明になってからは、仕方なく空き家として役所が管理した状態になっている。取材許可を取ったので、この腕章があれば家の中を見ることが出来るよ。場所は……ここだね。僕はこれから、そこへ取材に行く予定だ。オクマちゃんも……」
ノリオがそう言いかけるや否や――オクマーマは腕章の一つと、場所が書かれた紙を掴んで――すぐさま編集室を飛び出していく。
「オクマーマが、今すぐ調べてきまちゅ~~~っ!」
その声が聞こえた時には、もうノリオの視界からオクマーマの姿が消えているのであった。
「あ~っ! オ、オクマちゃんっ! ……もう出てっちゃった。うん、まあ、そりゃオクマちゃんとすれば、一刻でも早く調べたいだろう。僕も、後から行ってじっくり調べよう……」




