第三十五話「悪の秘密テロ組織・ザラス団」
マユミに『危ないことはしないで』と嘆願されたものの、やはりその正義の心には逆らえない。オクマーマはその後も引き続き、危険な情報収集に度々首を突っ込んでしまうのであった。
(また死にそうになったら、怖いっちゅ。でもこれは、念波ロボのオクマーマにしか出来ない使命っちゅ。マユミおねーちゃん、心配させてごめんなちゃい……)
そしてオクマーマは、普通の人間では絶対不可能な情報収集が可能なだけに――ついに、麻薬取引どころではない巨悪のシッポを掴んだのである。
それは、悪の国際秘密テロ組織『ザラス団』の活発化であった。
世界各国の情報機関ですら『名称以外その存在を一切掴めていない』という、恐るべき組織である。
実はこの頃、表には一切公表されていない重大事件が発生していた。
国が念波ロボット研究所から没収していた『念波鉱石』も含む一連の保管品が、ザラス団によって丸ごと強奪されてしまっていたのだ!
もちろんこの事件は、政府でも高官だけしか知らない重大機密事項である。
政府高官は秘密裏に特殊部隊を結成し、早速ザラス団のことを調査させていた。
しかしザラス団は非常に巧妙であり、一体どこの誰が団員なのかも一切不明なままであった。ゆえにザラス団の本拠地はおろか、前線アジトの一つすら突き止める手がかりすら皆無なのだ。
そんな政府高官をあざ笑うかのように、高官だけが入室出来る幹部室の専用通信モニターに『ザラス団の前線指揮者』を名乗る者から、初めて『顔出し』でメッセージが入ったのである――。
「政府高官の諸君! 役立たずの特殊部隊などチョロチョロさせてるようだが、無駄な抵抗はやめたまえ!」
「なにっ⁉ そっ、それを知っていて、かつ直接このモニターへアクセスしてくるとは……一体何者だっ⁉」
「我々ザラス団は、念波を利用して『生物だけを一瞬で消滅させてしまう増幅装置』を完成させた。嘘ではない。これを知った君たちは、残り少ない期間を死の恐怖に怯えながら暮らすがよい。そして、我々の存在すら知らず日々ノンキに暮らしている、おバカな一般国民と共に死ね! ハッハッハ」
一切正体不明なザラス団の中で、初めて顔出し予告してきた前線指揮者は――なんと、大和テツにソックリの人物であったのだ!
この一件が起こった時、オクマーマは『政府高官の汚職という、別件での潜入捜査』をしている最中であった。偶然、この一件を知ってしまったのである――。
(こっ、これはマズいっちゅ! それにあの顔は、間違いなく所長ちゃんにソックリっちゅ……。どうして、所長ちゃんがテロ組織の指揮官っちゅかっ⁉)
政府高官たちが混乱状態になる中――困惑したオクマーマは高官部屋を抜け出し、とりあえずノリオの元へ向かうのであった。
一方で高官たちは、あたふたしながら言い合いを始めてしまう。
「いっ、今の指揮者は、念波ロボット研究所の元所長・大和テツ博士にかなり似ていたぞ!」
「しかし彼は確か、数年前に事故で死んだと聞いている。もっ、もしもだ、彼が万が一生きていたとして、ザラスの団員になっていたとしたら……その装置は、おそらく本当に開発されてしまっておりますぞ!」
「まさか大和博士は、国が研究所を強制閉鎖したせいで……念波研究を出来なくされた上、莫大な借金が残ってしまったことを恨んで⁉」
「いや! 私は彼を知っているが、彼はそんな人物ではない! 正に、正義感の塊のような人だった。少なくとも、そんな理由でザラス団に協力するとは思えん!」
「そっ、そうだ。彼は事故にあう直前には、私生活でも幸せになっていたと聞いている」
「今の映像だと、本来の彼と比べて……なんだか、人相が相当悪かったようだが……」
「確かに、肌も不自然に黒っぽいような感じだった。果たしてあれは、本当に大和博士なのか⁉」
「とにかく! あれが大和博士なのかどうかは別にして、重大危機なのは間違いない。これはもう全国民に事実を発表して『政府は、逃げずに最後まで全力を尽くす』と宣言するべきだ!」
「そうだ! 国民一体になって協力すれば、座して死を待つよりなにかが起きるかもしれない!」
「いや、それは大パニックになるだけだ! なにも知らないまま、変に苦しませず……我々も、国民と一緒に死のうではないか。その方が、国民にとっても幸せだろう……」
「なにを言う! 最後まで諦めるな!」
「しかし今、この事実を晒したら……研究所から没収していたものを強奪させてしまった件で、世界各国からも非難の的にもなってしまうぞ! ザラス団は手始めに我が国を全滅させたら、ここを無傷のまま本拠地として利用するだろう。それからおそらく、世界各国も全滅させる気だ。もはや我々には、対抗手段がない!」
「とにかく、念波鉱石まで強奪されてしまったのは致命的だ! せめて鉱石さえ、こちらの手中にあれば……とりあえず念波が届かないように宇宙の遠くまで運んでしまえば、少なくとも地球は安全だったんだぞ!」
「今それを嘆いても、どうにもならんだろうが!」
「もしあれが本物の大和博士だったとしたら、本当に止めようがないぞ……」
「そういえば、大和博士以外の元所員たちは今どうしているんだ? 少なくとも、まず彼らに意見を聞くべきだ!」
「元所員たちは、解散後みんな散り散り状態だ。メンバーの現在の身元を探し出すのも、時間がかかる……」
「と、とりあえずだ。元所員たちを全員探し出した上で意見を聞いてみて、SPをつけて厳重警護させろ。手荒だが、安全のためなら仕方ない! 外部の人と会わせないように、安全な建物の中にずっと幽閉してしまってもいい! 情報を集めるんだ!」




