第三十四話「オクマーマ、爆散!」
情報を得た警察は、真の取引現場へ機動隊をすぐに出動させていた。
そして、あっさりと取引現場を包囲するに至ったのである。
マユミのような少女から『麻薬取引』という場違いな通報であっても、警察が疑わず聞き入れたのは一つの理由があった。
実はノリオが『もしこの日に、こういうタレコミがあったら、それはイタズラではなく本心通信のスクープだから本当にすぐ出動してほしい。責任は、すべて本心通信の編集長・南部ノリオがとる』と、先に手回ししてくれていたのだ――。
まさかの完全包囲をされてしまった悪人たちは、青天の霹靂で困惑してしまう。
「あれほど完璧だったこの場所が、どうしてバレた⁉」
センサーに頼らず、目視で車の中を必死に探る悪人たち。
すると、誰も見たことない『シッポがないクマのぬいぐるみ』のようなものが、トランクの片隅に入っているではないか!
「これだっ! これはメカが使われてはいないが、これ以外に盗聴元は考えられない! チキショーッ!」
オクマーマの魂が離脱している、空の本体を発見した悪人たちは――もう逃げられなくなってしまったという、激しい怒りにまかせ――オクマーマの体を、思わずナイフでザクザクと切り刻み始めてしまったのだ!
マユミに通報してもらった後、そろそろ本体の方へ魂を戻らせようとしていたシッポのオクマーマであったが……突然、死ぬほどの悲鳴をあげてしまう!
「アアーーーッ!」
「どっ、どうしたのっ⁉ オクマちゃんっ!」
「痛いっちゅーーーーーー!」
「オ、オクマちゃんっ……、あっ、あああっ……」
目の前で、オクマーマのシッポが死ぬほどの悲鳴で痛がっていても、なにもしてあげられないマユミ。なすすべなく、泣きながらシッポを包むことしか出来ないのであった。
悪人たちは切り刻まれたオクマーマの本体を地面に叩きつけ、足でグリグリと踏みつけて怒りを爆発させる一途であった。
もうその頃には、シッポのオクマーマは地獄の痛みで気絶してしまうのであった。声が止まり、ピクリとも動かなくなってしまう。
そして現場では、警察に追い詰められた悪人たちがさらに自暴自棄となり――切り刻まれたオクマーマの体の中にダイナマイトを詰め、火をつけて警察の方へ投げつけてしまった!
「危ない!」
思わず盾を構える、警察の機動隊。
飛んできた、ダイナマイト詰めのオクマーマは――空中で大爆発!
「うわあっ!」
体がバラバラになり、火がついたオクマーマの首、手足、細かい部位が、盾に当たって跳ね落ちる!
そこから悪人たちはさらに抵抗しようとするも、武器はもう切れてしまっていた。機動隊は突撃し、現場の悪人を無事に全員逮捕したのである。
それから――燃え尽きたオクマーマ本体の灰は、マユミの元にあるシッポへ自動的に集結した。
「あっ、これはっ⁉ も、もしかして……オクマちゃん本体の灰なのっ⁉」
マユミはオクマーマに聞いていた話から、その灰をシッポと一緒に静かな場所へ丁寧に安置するのであった。
それから時間経過と共に、だんだんとオクマーマの姿に修復されていくのを目の当たりにしたマユミ。
(ほ、本当に……。オクマちゃんは……不死身なんだ……)
そして数日で完全修復され、気絶していた自我も目覚めるオクマーマ。
「うう~っ。また復活したっちゅ……」
「オ、オクマちゃんっ! よ、良かった~っ!」
完全復活したオクマーマを、涙目になりながらおもいっきり抱きしめるマユミ。
「じ、事件は……。どうなったっちゅか?」
「オクマちゃんのおかげで、無事解決したわよ!」
「そうっちゅか! 良かったっちゅ!」
「で、でも……。私、オクマちゃんのあまりにも悲痛な姿が……もう見ていられないわっ! いくら正義のためでも、あんな危険なことはもうやめてっ!」
「マユミおねーちゃん……」
オクマーマは、自分を大事に思ってくれているマユミの心が本当に嬉しかった。
それでもオクマーマは『自分しか出来ないことだから、やるしかない』と、マユミに言うのであった。
「じゃ……せめてっ! せめてオクマちゃんが、痛みを受けずに済む方法を第一に考えてほしいわ! お願いっ!」
「わかったっちゅ。なんとか、考えまちゅ!」




