第十五話「オクマーマに、装備はあるのか」
オクマーマはそれから毎日、融合度を高める練習を開始していた。
その一方で、今までのように街へ繰り出しての善行も試みるも――相変わらず、ほとんど失敗する毎日であった。
そんな日々にくじけそうになると、度々マユミの元へ行っては心が癒されるオクマーマ。
「オクマちゃん。自分の秘密を知ってから、毎日頑張って特訓してるみたいだけど……調子はどう?」
「練習はしてるんでちゅが……まったく変化が見られまちぇん。でも、そう簡単にいかなくて当然っちゅ。オクマーマは、あきらめまちぇん」
「偉いわね! そういえばオクマちゃんは、こんなにモフモフのぬいぐるみ状態だけど……一応ロボ扱いなわけよね。だったら、ほら! なんか、ロボットらしい装備とか、そういうのはないのかしら?」
「ロボットらしい装備っちゅか? ……あっ! そういうのは、今まで思いつかなかったっちゅ!」
マユミから、新しい視点のヒントを得たオクマーマ。
その日の夜からは、そういう視点でも念じてみる練習を開始するのであった。
(オクマーマは、これでも一応ロボット認定っちゅ。ひょっとしたら、ビームとかミサイルとかが出せたりするんでちょうか? いい子ちゃんの記憶の中に、なにかヒーローロボットのような記憶が残ってないでちょうか? うう~っ)
眠っているキミナの記憶へ、必死にアクセスを試みるオクマーマ――。
――それは、大和キミナがまだ元気だった頃のある日。
「オクマーマちゃん、今日も遊びまちょう」
そう言いながらオクマーマを置き、横に『超合金ロボット・カタイナー』と書かれた箱を取り出すキミナ。
これは、キミナの父が子供時代に好きだったスーパーロボットアニメの超合金である。父が大人になってから『懐かしさのあまり、大人げなく購入してしまった』というもので、そこそこ出来が良い。
そしてこのカタイナーは『ぬいぐるみオクマーマと共に残された、数少ない遺品の中の一つ』でもあった。また、貧乏だった大和家において唯一存在していた玩具でもある。
箱の中には、カタイナーの武器が納まる『色々な形の収納穴』が開いている。だが、いくつかの武器はすでに紛失しており、わずか数点しか残っていない。
それでも、家にいる時はこのカタイナーとオクマーマを戦わせて遊ぶのが、キミナの大きな楽しみの一つとなっていた。




