第三章 伝説の薬草を踏んでいた件
ルナのおばあさんのもとで修業を始めて三日目。
アリアは朝から森へ薬草採取に出かけた。
「あっ、これはヒールワート。それとブルーセージ……あ、モスフェンも生えてる。それにしてもこの辺の森、種類が多いなあ」
るんるんと草を摘みながら歩いていると、足元に見慣れない草があった。
葉が銀色がかった緑色で、光に当たると微かに輝く。茎が細くて、普通なら見落としそうな小ささ。
「これは……なんだろ。雑草かな」
アリアはひょいと摘んで、かごに放り込んだ。
帰宅すると、ルナのおばあさんがかごをのぞき込んだ。
「良く採れたね……」
ルナの手が止まった。
「……あんた、これどこで採った」
「あ、その銀色のやつですか。なんか光ってたので。雑草かと思って」
ルナのおばあさんの顔色が変わった。
「雑草……」
「違いましたか?」
「違う」ルナは震える手でその草を持ち上げた。「これはシルバーリーフ。百年に一株あるかないかの幻の薬草だ。万病に効くと言われて、存在すら疑われてた植物だよ」
「え」
「王宮の薬師が一生かけても見つけられなかったものを……」
「雑草じゃなかったんですか」
「雑草じゃないよ!」
アリアは固まった。
ガリウスが部屋の隅でお茶を飲みながら、静かに言った。
「……似たようなセリフを聞いた気がします。なんでも普通じゃないんですね、あなたは」
「褒めてます?」
「褒めていません」
ルナのおばあさんは、シルバーリーフをそっと台に置いて、アリアをじっと見た。
「あんた、どうやって見つけた?」
「なんとなく、光ってたから」
「光が見えたのかい」
「見えましたけど……見えない人もいるんですか?」
ルナは長い沈黙のあと、深くため息をついた。
「やっぱりそうか。あんたには薬草の目がある。これは生まれつきの才能で、百年に一人出るかどうかの話だよ」
「……え」
「聖女として失格になったのは、神様がしくじったんだろうね。あんたが持ってた力は、聖女の力じゃなくて、薬師の力だったってことだよ」
アリアはしばらく黙った。
百年に一度の聖女の儀式でクビになった日と、百年に一株のシルバーリーフを踏んでいた日が、同じ週だった。
「……私の百年、ちょっと密度が高すぎませんか」
ルナがくっくっと笑った。ガリウスがお茶を吹き出した。
「お前は本当に……」
「なんですか」
「何でもありません」
ガリウスが珍しく言葉を詰まらせた。アリアはそれをよく見ておこうと思ったが、彼はすぐにいつもの仏頂面に戻ってしまった。
その夜、ルナが少しだけ声を落として言った。
「ひとつ、覚えておきな。シルバーリーフのことは、村の外では話さない方がいい」
「なんでですか?」
「王都では、薬師ってのは立場が弱いんだよ。病を治すのは神の御業だって、教会が言い張るからね。腕のいい薬師が目立つと……昔から、いろいろあった」
「いろいろって?」
ルナは答えなかった。ただ、少しだけ遠くを見るような目をした。
アリアはその表情が気になったが、深くは聞けなかった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
笑いすぎて聖女をクビになったアリアが、辺境でルナおばあちゃんと出会い、薬師としての才能が開花し始めました。
第4章以降では——
・不治の病の少女との感動の出会い
・村が国中に知れ渡るほどの大騒ぎ
・王都の大神官からの妨害
・ガリウスとの関係の変化
・そして聖女の真実が明らかに……
——と展開していきます。
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「笑われてクビになった聖女、実は伝説の薬師でした」
著者:九十九 ぐるり
引き続きよろしくお願いします!
九十九 ぐるり




