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「Paranoia Method」

シーン追加・シーン変更しました。

「……っ」

わずかな日の明るさで、セレーネは目を覚ました。

頭を押さえながら、ゆっくり上半身を起こす。

「どれくらい寝ていたんだろ……」

そう呟きながら周囲を見渡す。

客車の中は薄暗く、湿った空気が立ち込めていた。

「そうだ……みんなは!?」

思い出したように立ち上がり、急いで機関室へ向かった。

「タケル? シモンズ?」

そう呼びかけるが

タケル達の姿はなかった。

セレーネは焦る気持ちを抑えつつ、貨物室へ向かう。

貨物室へ入ると、床に工具が散らばっていた。

その中心に黒いバイクが、綺麗な状態で佇んでいる。

さらにその奥には、マコとハンナが着ていた旧時代の服が

吊るされ、乾ききらずに揺れていた。

セレーネは少し落ち着き、客車へ戻っていく。

「みんな、どこへ行ったんだろう、、、」

ふとテーブルに目をやると、蒸した芋が置いてあった。

腹の音が鳴る。

セレーネは空腹を感じ、芋をひとつ食べる。

味付けはされていたが、すでに冷めていた。

「とりあえず、みんなを探さないと」

セレーネは汚れた服を脱ぎ、新しい服を着る。

セレーネは小さく息を整える。

少し重い汽車の扉を両手で押し開ける。

足を下ろし、少しだけ勢いをつけ、地面に着地した。

生ぬるく、どこか懐かしい香りの風が吹き抜ける。

「私、この場所を知っている……?」

セレーネは風でたなびく髪を抑え、前を見る。

視界の奥には、歪な形の塔がそびえ立っていた。

「起きたな」

突然、真後ろから声が聞こえた。

驚き振り向くと、

汽車に寄りかかるネモがいた。

「どうして、あなたが……」

一歩引き下がり、身構えるセレーネ。

「フッ……分かりやすくなったじゃねーか」

そう静かに呟き、ネモは翼を広げる。

「次の客が待っているんでね」

そう言って、ネモは飛び立っていった。

セレーネはタケル達に何かあったのかと、再び胸がざわつく。

視線を揺らすと、道端に落ちたライフルが目に入る。

その先にはショットガンも転がっていた。

胸が締めつけられ、セレーネは塔の中へと走り出す。


塔の内部を散策するセレーネ。

「なんだろ……この気持ち」

廃れた食堂を通り抜け、誰もいない通路を、

何かに引かれるように歩いていく。

気が付くと

ある研究室の前に立っていた。

セレーナはゆっくりと扉を押し開け研究室に入る。

薄暗い室内には、枯れた植物がいくつも並んでいた。

セレーネは足を止める。

「この場所は……」

言葉の途中で、胸が締めつけられるように痛んだ。

視界が揺れ、床が遠ざかる。

突然、いくつかの光景が頭の中に流れ込んだ。

不健康な白衣の男。

紫色の瞳をした男とカート。

大勢の研究者達。

「そん……私は……」

足元から抜けるように崩れ、

セレーネは意識を失い、倒れ込んだ。


塔の中。

機械音が静かに響く薄暗い部屋で、

アランは青白く光る画面を見つめていた。

「なんなんだこれは……」

画面には、広々とした廊下を走るタケル達の姿が映っていた。

傷を負いながら、何かから逃げている。

「止めてくれ!」

アランは声を荒げる。

「どうやら排除システムが始動しているようだね」

リエムは落ち着いた声で言い、

興味深そうにキーボードを叩く。

「この塔は人類最後の砦だ。

 過剰なまでの危機感や最悪の事態を想定し、徹底的にリスク管理をしている」

「安全性を確保するために、部外者の侵入には厳しくてね……排除システムを止めるにはっと」

画面を見つめ、ファイルを探すリエム。

リエムの指がふと止まる。

画面に小さくエラー表示が灯った。

「悪いが、僕にその権限はないようだ……」

「なっ……!」

アランは歯を食いしばる。

「だったら……権限のあるやつを起こすとか、

 制御システムそのものを物理的に壊すとか……」

抑えきれない焦りを滲ませ、リエムに詰め寄るアラン。

「おいおい、無茶を言わないでくれ。僕にも立場ってもんがあるんだ」

アランは悔しそうに、落ち着かない視線で画面を見つめる。

タケル達の背後では、

禍々しい“何か”が這うように迫っていた。



「あいつら、なんなんだよ!」

息を切らしながら、吐き捨てるタケル。

「おそらく、オートマタの類でしょうね」

壁に寄りかかりながら息を整えるシモンズ。

「静かにしろよ!見つかっちまうだろ!」

小声で騒ぎ立てるマコ。

「っち、あいつら、どこに隠れてても追いかけてきやがる、、、」

そう呟くタケル。

そんなタケルをシモンズはジッと見つめる。

「っ?なんだよ?」

「いえ、あれでよかったんですか?」

そう問うセレーネ。

「いいもなにも、、、」

タケルは戸惑いながら、視線を足下に落とす。



数時間前。

塔の前で武器を手に、戦闘を繰り広げるベックとタツ。

「っち、こいつら、ショクブツじゃねーよな!」

叫びながら発砲するタツ。

ベックは深傷を負い、ながらも刀を構えている。

ベック達の周囲には、

地面を這う、サソリのような巨大な金属体と、

頭上を旋回する鳥型の金属体がいた。

サソリが節のある脚で地面をかき、

尾の先端をわずかに震わせながら迫ってくる。

鳥は空気を切り裂くように、

タケル達の頭上を円を描くように回っていた。

「ち…今回ばかりは、まずいな」

ベックが死を覚悟したその時、

タケル達の乗った汽車が、煙を上げて現れた。

汽車から放たれる無数の銃弾。

サソリと鳥は銃弾を受け、怯む。

「マコさん! お二人を頼みます!」

機関銃を操りながらハンナが叫ぶ。

「おうよ! 言われなくても」

そう言ってマコは救急箱を手に取り、駆け出していく。

サソリがマコに気付き、巨大な体を震わせる。

「あんたの相手は俺たちだ!」

マコを庇うように、タケルとシモンズが乗ったバイクが

サソリ目掛けて駆け込んでいく。

「兄様! 上!」

ハンナの声に、シモンズはハッと上空を見上げる。

巨大な鳥の足爪が、目の前に迫っていた。

「くそ!」

攻撃を避けようとして、バイクは派手に横転する。

吹き飛ばされながらも敵を見据え、着地するタケルとシモンズ。

そんな二人を見て、どこか金属味を帯びた雄叫びを上げる

巨大なサソリと鳥。

一定の距離を取り、対峙する両者。


するとどこからか、

「しゃがんでな!」

と叫び声が飛んできた。

咄嗟にマコはしゃがむ。

その頭上を、高出力の光弾が通過する。

鳥は一瞬怯み、タケル達から距離を取った。

金属を軋ませ、威嚇するように雄叫びを上げる。

「おうおう、威勢がいいねー」

不敵で、どこか無邪気に笑う声。

「お前は……!」

シモンズが振り返る。

「今ここで、あんたらに死なれちゃ、俺の計画が台無しになるんでね」

太陽の逆光に浮かぶ黒い影。

腕にはアーマー、背には翼があった。



「あいつら、セレーネには気づいてなかったから、それに、何故かネモには手を出さずにいたし」

そう弱々しく呟くタケル。

「だからって、」

マコがそう言いかけると、

「俺だって信用できないよ。

 でも、あいつに頼むしか他に……」

そうタケルが言い終える前に、

轟音と共に壁が破れた。

砕けた壁の奥から、サソリが尾を突き立てている。

「完全にロックオンされてるじゃねーか……

 塔の中に入り込めば、逃げ切れるかと思ったのに……」

タケルに担がれたベックを見て、アルは険しい顔をした。



タケル達が追い詰められていく様子を

苦しそうに見つめるアラン。

思わず立ち上がり、部屋を出ようとする。

「どこへ行く気だい?」

リエムに声をかけられる。

アランは悔しそうに俯いた。

リエムはそんなアランを見つめ、

一瞬、物思いに耽る。

部屋の静けさが、ふっと沈んだ。

「……一つ提案なんだが、過去に行ってみないかい?」

「は?」

唐突な言葉に、アランは戸惑う。

リエムは棚から白いゴーグルを取り出した。

「僕は排除システムへの妨害プログラムを展開する。

 少し時間がかかるかもしれない。その間に、」

リエムはゴーグルを軽く投げ渡す。

「君には“過去”を見てきてほしい。

 解除のヒントがあるかもしれない」

アランは眉を寄せる。

「それに……君が人類を導くなら、過去を知らなければならない」

「導くなんて了承してない」

アランが吐き捨てるように言うと

リエムはわずかに微笑んだ。

「判断は後でいい。まずは知ってほしい」

アランはしばらく黙り込んだ。

映像に映るタケルを見つめ、

拳をゆっくりと握りしめる。

「……分かったよ」

そう言ってゴーグルを持ち上げる。

「おっと、それの使い方はわかるかい?」

リエムがゴーグルを指差す。

「それをかければ、過去の記憶を体験できる」

アランは電源を入れ、椅子に腰を下ろした。

「では、よろしく頼んだよ」

リエムが静かに言う。

「あんたもな」

アランは短く返し、ゴーグルをかけた。

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