兆し
うだるような暑さの中、激しく煙を上げて川沿いを走る汽車。襲いかかるショクブツを無慈悲にも轢き潰しながらひたすら前へと進んでいた。貴社と並走しているボートからは機関銃が顔を出し、水面や空中のショクブツを一掃していた。
「ちょっと、すごい音してるけど、本当に大丈夫かよ?」とヒステリックに叫ぶマコ。「大丈夫だと思うよ。」と工具を運びながら答えるユース。
「シモンズはマトモだと思ったのに。なんでハンナはあんな奴のこと、、、。あのバカ二人は生身で飛び出していくし、、。」とぶつぶつ悪態をつくマコ。「こんなんだったら、意地でも兄貴について行けばよかった!」とマコは叫んだ。「ベックだって似たような類だと思うけど、」と呟くセレーネ。「いうようになったな。」と微笑みながら、客車に入ってくるカート。忙しなく移動しているユースも客席に入ってきて、「ちょっと、カートさん?!ボイラー室は?操縦は?」と慌てふためく。「悪い悪い」と笑いながらすぐに戻るカート。「ちょっ、え」と驚きながらカートを追いかけるユース。「なんなんだよ!」と再び騒ぎ始めるマコ。その横で、セレーネは胸に手を当て、窓から外を見る。
ショクブツが周囲からいなくなると、汽車とボートはスピードを緩め始める。「やっと、落ち着いたか」と
汽車の上に座り込むタケル。「そっちは問題ないか?」とボートに向かって叫ぶアラン。「大丈夫です!」と答えるハンナ。
「ずいぶん経つな」そう呟きながら前方を見つめるタケル。「俺らの村を出て2年以上経つか?」とアランは空を見上げる。
「一面の雪景色しか知らなかった俺らが、この蒸し暑さの中で、ショクブツ相手に大立ち回りときた、」そう笑いながらアランを見つめるタケル。
アランは「初めに比べて、ずいぶんと賑やかな旅になったな。」と背伸びをする。
「この調子で行くと、もう半年もせずに旅が終わるな。」とタケルが言うと、「塔が最終目的じゃないだろ。」と問いかけるアラン。
タケルは神妙な顔つきで「世界を救うすべがないかもしれないぜ」と問いを返す。
「もしそうだとしても、この旅は無駄にならないよ」と明るく答えるアラン。「外の世界を知れたこと、協力してくれる奴らに出会えた」そう言ってボートの中のシモンズを見つめるアラン。「世界を救うのにベックが協力してくれるかね?」と笑うタケル。「なんだかんだ言っても手伝ってくれるさ。あいつはそういうやつだ」と笑い返すアラン。
「おーい、二人とも。面白いもんが見えるぞ」
二人の間に流れていた静かな時間を遮るように、ボイラー室からカートの声が響く。
アランとタケルは顔を見合わせ、カートの指差す方向へ目をこらした。
「ん? 山しか見えねーよ」
タケルは眉をひそめる。
するとアランが、小さく息を呑むように言った。
「……あれが」
タケルは望遠鏡を手に取り、前方をくまなく探す。
「どこだよ……」
そして──
山岳の合間から、一本の細い“棒”が空へ向かって伸びているのが見えた。
「……見えた。あれか」
タケルは思わず声を漏らす。
「やっと見えた……」
アランは目を細めた。
「これが、世界を救えるかもしれないっていう……」
タケルは唾を飲み込む。
「俺たちが目指していた“塔”だ」
アランは塔を強く見つめながら言った。
「おい!塔が見えるってよ!」とセレーネとマコに声をかけ、客室を出ていくユース。「あたいは興味ないね。全く犬っころみたいに騒ぎ立てやがって。」と呟くマコ。マコはしばらく我慢していたが、「あんたは見に行った方が良いんじゃないの?行きづらいなら私もついていってやるからよ」と、自分が見に行きたいのを隠しつつセレーネに話しかける。しかしセレーネからは返答がない。「セレーネ?」ともう一度声をかけ、セレーネの姿を探すと、セレーネは胸を押さえて汗をかきながら苦しんでいた。「大丈夫か?!」とマコは駆け寄る。「少し休めば大丈夫」と荒い息遣いの中、声を振り絞りながら話すセレーネ。「バカ!そんな状態じゃねーだろ」と心配するマコ。そのままセレーネは倒れ意識を失ってしまう。




