試験前日
『よっ!よっ!マイクロウェーブ!!』
アリーシャ15歳
そこには鮮やかに木々を跳び回り華麗に魔法を使いこなす少々の姿があった。
その姿は綺麗な栗色の髪と大きな瞳が特徴的で大人の女性と遜色ないほど美しく成長していた。
また探知魔法、攻撃魔法は中位まで使いこなすまでになっていた。
これはひとえに父ブラッドの教えがあってこそである。
『レッドコウモリさんごめんなさい。また、牙だけもらっていくね。』
<おーい!アリーシャ!そろそろ帰るぞ!>
<なんだアリーシャ、また牙集めしているのかい。明日は選抜試験だろ?帰って体を休めないと支障が出るぞ?>
『何言ってるの?お父さん。明日選抜試験でせっかく街まで出るっていうのに!なかなか行けないからできるだけ集めておくの!それにたくさん持っていけばスタントンさんが鑑定に色つけてくれるからお得なの!』
<アハハ!アリーシャはちゃっかりしてるな。そうゆうとこは母さんにそっくりだよ。けれど、今日はここまでにしなさい。>
アリーシャは初めて鑑定をして依頼、自分でお金を稼ぐことに目覚めてしまっていた。
初めは磁石を使って川で砂鉄を集める毎日
下級魔法が使えるようになってからは
レッドコウモリの牙
中級の攻撃魔法が使えるようになってからは
ヘビトカゲの尾
サイホースの蹄
などを持てるギリギリの量を集めては換金所まで持っていく生活をしていた。
『はあい。じゃああと1匹だけ!』
そうゆうと、アリーシャは眼を閉じ精神を集中する。
『マイクロアロー!!』
<おいおい、アリーシャ。一体その魔法を誰にぶつけるっていうんだい?>
『まあ見てて!』
『サーチアイ!』
そう唱えるとアリーシャは音波の弓を放ちその刹那、遠くで何かが落ちる音が聞こえた。
<ほう!なかなかやるな。下級魔法とはいえその応用と身体強化系の魔法を同時に使い、肉眼で捕らえる事が難しい位置のモンスターに着弾させるか…弓の精度も申し分ない。>
(<やはりアリーシャはバランスタイプか…>)
※マイクロアロー…マイクロウェーブの応用。音波を弓矢状の形態の留め、実際の弓で放つ事を可能にする技。マイクロウェーブより範囲は狭まるが精度、速度共に強化される。殺傷能力は皆無。
※サーチアイ…自らの視力を大幅に向上させる。身体強化系魔法。主に偵察などの任務で使われる。下級魔法。
<この調子なら明日の試験、いい線までいけるかもな!>
そう言うと自らの拳をアリーシャに向ける
それに反応し照れ臭そうにブラッドに拳を向け
拳を重ね合わせる。
これは信頼の証。
年頃のアリーシャには父親と拳を重ねることは少々恥じらう部分だがこれをやると妙に気合いが入る事をお互い知っているようだった。
<よし!母さんがご馳走作るって張り切ってたし遅くなると怒られるから急ぐぞ。>
明日は娘の門出である。
一人前になろうとしている娘に長年疑問に思っていた事をぶつけてみる。
<なあアリーシャ、キミはなぜそんなに換金することが好きなんだ?>
『えっ!?そんなの決まってるじゃん!』
『お金は裏切らないからだよ。』
『お父さんもそろそろ働いたら?毎日修行ばっかりしてさ!娘に嫌われなかった事を感謝したほうがいいよ。』
余計な事を聞いてしまったと悔いるブラッド。そして、もう何年も前から一人前なんだと思い少し寂しい気持ちになる父であった。
アリーシャ15歳
明日トレジャーハンターギルド入団選抜試験を迎える。