第5話 変わるための一歩
はぁあぁあぁあぁ~~~~…
か・ん・ど・う の一言です…
私が今まで過ごしてきた世界は一体何だったんだろう。
世界が違うっていうか…次元が違うっていうか…
「ねー、ラルちゃん。」
「何? サクセス。私は今このすばらしい景色に浸ってるんだから。」
「ねー、ラルちゃん。」
「だから何!?」
「今走らなかったら遅刻かも。」
え?
「うそーーーーーーーーーん!!!!」
私もサクセスもハクも、3人そろって猛ダッシュ!!
「何でオレまで。」
隣でハクがぼそっと呟いた。
「うるさいわねぇ!! しょうがないでしょ!! 私たち庶民からすれば、こんな学校もう夢なんだから」
「オマエもう、一回来てるだろっ!!」
「それでも夢のまた夢だから、何度見ても感動するの!!」
だってあのすごすぎる校舎を目の当たりにしたら、誰だってビックリでしょ。
昇降口はまさにお城の入口。女の子なら絶対夢見る、童話に出てくるようなお城。
ここを学校と呼んでいいのだろうか…
普通の学校でいう昇降口に入って、私は立ち止まった。
「おい、どうした? 急がねぇと遅刻するだろ。」
もしかしたら聞いちゃいけないのだろうか…
「ご、ごめん…もしかしたらすっごく恥ずかしい質問なのかもしれないけど…聞いていい??」
「くぷぷ…どーしたの??」
その明らかに恥ずかしい庶民発言期待してますって感じの顔やめてくれないかなー。
「あ、あのさ…く、く…」
二人とも訝しげに私を見つめる。
いや、サクセスは若干ニヤけてるけどっ!!
「靴箱は??」
・・・
「っぷ、ハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」
予想通りのリアクションをどうもありがとう。
「もーオモシロすぎね!! これ以上笑わせないでよっ。あーもう、笑い死にしそう…」
笑わせたつもりがないことがなんとも…
「あのなー、靴は脱がなくていいんだから靴箱はいらないだろ。」
「え!? 靴、脱がないの?」
「庶民学校は靴を脱いで、野蛮に裸足で駆け回るのか。」
「裸足では駆け回りませんっ!! 履き替えるのっ!!」
「あっそ。」
ッイッラーーーーーーー!!!!!!!!!!
「さーさー、急ぐよ、ラルちゃん。くぷぷぷ…」
「もー、いいかげんにして~!!」
私が暴れる手はもちろん届かず、サクセスに掴まれてしまった。
そのまま手をひかれて、一緒に走った。
そこでも一つ疑問。
…階段なんだ…
学園長に会いに行くときは、空飛ぶ円盤だったような…
また茶化されるのは嫌だから、とりあえずこれは黙っておこう。
「ラルちゃんは、残念だけど僕と同じクラスじゃないよ。」
「残念?」
「もー、隠さないで。狙ってたでしょ?」
「っな!!」
「あー、もちろん冗談だよ? 残念なのは僕の方。」
サクセスの冗談は、冗談に聞こえないよ…って、ん?
今、残念なのは僕の方って…
「ラルちゃんと同じクラスが良かったな…」
ドッキーーン!!
な、ちょっと…ホントにそんな残念そうな顔しないでよっ…
「同じクラスだったらラルちゃんのこと、いつでも茶化せたのに…」
そーいうことかいっ。
「オマエはオレと同じだ。」
「え…あ、そう。」
何か伝えたそうだったけど、ハクは何も言わない。
「ラルちゃん、察してあげて。」
サクセスが耳元でこっそりと話しかけてきた。
「本当は『何か聞きたいことがあったらオレに聞け』って言いたいんだよ。でも、照れくさくて言えないんだよ。」
サクセスはハクのモノマネを入り混じりながら言った。
その言葉に反射的にハクを見る。
「ね? その証拠に顔がすっごく真っ赤でしょ?」
ハクの顔は…りんごだった。
たった一言言うのにここまで照れるって…なんかちょっとカワイイ…
って私何思ってるんだろ。
サクセスの方を見てみると、クスクス…いや、ニヤニヤ笑ってる。
サクセスはハクのこともいじっちゃうんだな。
二人って相当仲いいよね。
階段を上がって、たぶんここは3回だと思う。
「ここが2年生の教室。」
「教室って…」
上がった先には廊下がずっと奥まで続いていて、その両側に教室がズラリと並んでいる。
「な、何クラスあるのよ…。」
「うーん、そうだねー。…たしか24か、25か…」
「26だ。」
「に、にじゅうろく!?」
ありえないんですけどっ!!
「そんなに人数が多いの?」
「いや、一クラスは25人ずつ。」
「それでも、結構全校生徒数はおおいでしょ…。」
「そうだね、650人。」
「一学年650人って…多すぎだよ…」
教室を全部数えると、右側13、左側13…確かに26クラスだ。
「でもさ、私が転校してきちゃったら、26人になるんじゃないの?」
「ううん、心配ないよ。」
「理事長は、最初からオマエを入れる気だったらしい。だから、もともとオマエの席はある。」
「え!? じゃあずっと、一つ誰も座らない席があったの??」
「アホか。オマエの机をわざわざ最初から置いていたわけじゃない。」
だよね。
それにしても教室もすごいな。扉からしてもう…高くて、重たそうで。
窓はきれいな色のついたガラスで絵のような装飾がある。教会の窓みたい。
なんの絵だろ…龍? 三匹の龍の絵みたい…。
「おい、行くぞ。」
「へ? あ、うん。」
「僕はGクラスで、ラルちゃんはJクラス。」
「A、B、Cで分けてるんだね。」
「うん、AからYまで。まー、文字によって好き嫌いができちゃってるんだけどね。」
「? どういう意味?」
「たとえばー…Xクラスとかカッコよくない?」
「そ、そうだね…でも、そういう問題なのかな…」
「まー、そうなんだけどね。でもJもかっこいいよ。」
「うん…?」
「行くぞ。」
私はハクの後ろについて、Jクラスに行った。行って気付いたけど、サクセスとは隣のクラスだった。
「じゃあね、ラルちゃん。なんか困ったことがあったら、いつでも僕のとこに来ていいから。隣同士だし。ま、わざわざ僕のとこに来なくても頼りになる男がいるけどね。」
そう言ってサクセスはハクに目配せした。
ハクはフンッとそっぽを向いたけど、その時も心なしか顔が赤かった気がする。
そしてハクは私を見て、「来い」と一言言うと歩き出した。
私もあわててハクの後に続いた。
サクセスが手を振っていたので手を振り返したけど、なんだか短期間ですごく仲良くなった気がする。
重い扉はまだ授業が始まっていないせいか、開いたままだった。
あー、ここからやっと始まるんだな。
そう感じながら、ハクに続いて、一歩踏み出した。
その時だった。
まだ何も見ていないし、聞いてもないけど…
踏み出したその瞬間、
ここから何かが変わる…
そんな気がした。




