↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/51

第46回

 世間ではゴールデンウィーク真っ只中の2025年5月6日。

「高坂春奈卒業コンサート」は開催された。今回の卒業コンサートで披露する楽曲のセットリストは高坂先輩が運営と相談して決めたものだった。セットリストと共にセンターも高坂先輩が決めてくれたらしい。

 卒業コンサートの1か月くらい前、私はいつものライブのようにレッスンを行っていたが、その最中に高坂先輩に声を掛けられた。

 「ひなちゃん、運営と相談してさ、名曲セレクションっていうパートで一曲、センターで披露してほしいってことになってね。」

 「え!?本当ですか?」

 私は急な抜擢に素直に驚いた。

 その楽曲は高坂春奈が劇場公演でセンターとして長年、披露してきた大切な楽曲だった。その楽曲を私がセンターで披露することは申し訳ないという気持ちと共にあの卒業発表の日の夜に高坂先輩から言われた、

 「次の『劇場の女神』はひなちゃんだと思うんだよね!」

 という言葉の期待に応えたいという気持ちになった。

 その日からレッスンは勿論、自主練にも明け暮れた。


 「高坂春奈卒業コンサート」当日。

 私は「どっかーん!4周年ライブ」でセンターからの景色は見たので緊張しないかと思っていたが、当然のように緊張が襲い掛かってきた。

 「ひなちゃん。緊張しなくていいからね!劇場の女神らしく頑張って!」

 高坂先輩は自らの卒業コンサートでも後輩に配慮してくれる優しい先輩だ。

 「まだ、劇場の女神は高坂さんですよー!」

 私は涙声で返した。


 私は高坂先輩が劇場で歌い繋いできた楽曲をセンターとして丁寧に披露した。

 「ひなちゃん、本当にありがとう…。」

 舞台袖で抱きしめてくれた。その時、我慢していた涙腺が崩壊した。まだライブは続くというのに……。

 

 高坂春奈はファンに向かっての最後の挨拶でこう語った。

 「……私は最初こそ、ぱっとしたアイドルじゃなかったかもしれません。仕事も劇場公演しかなく、選抜に入れず、時には何でアイドルになったのだろう……。何でAYB32に入ったのだろうと悔やんだ日もありました。しかし、私は劇場公演に立ち続けました。すると、どこかから『劇場の女神』という異名を付けて頂き、私の存在価値を見出すことが出来ました。ありがとうございます。そこから選抜に入り、逞しい後輩も出来、優しいファンの皆様にも恵まれ本当に幸せなアイドル人生を歩めました。私が大切にしている言葉があります。それは、『ステージとチャンスは平等』ということです。今、選抜に入れなくて苦しんでいるメンバー、そして、センターに立てなくて藻掻いているメンバーもいると思います。しかし、ステージとチャンスはみんな平等です。ステージで頑張っていれば必ずチャンスは訪れます。だから諦めずにメンバーには劇場、そして、公演を大切に守っていってほしいと思います。支えてくれたメンバーのみんな、本当にありがとうございました。そして、ファンの皆様……」

 私は高坂先輩の後ろで挨拶を聞いていて、これでお別れだと思うと涙が止まらなかった。

 最後の曲は涙で声が出ていなかったかもしれない。それでも、精一杯、最後の曲を披露した。

 卒業コンサートが幕を閉じ、沢山のメンバーやAYB32を卒業した高坂先輩の同期メンバーが舞台裏に駆け付け、話すことは出来なかったけど、私は舞台袖で抱きしめてくれた感触と最後の挨拶を忘れることはなかった。

 お読みいただきありがとうございます!

 少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、ページ下部の【ブックマーク追加】や【評価(★★★★★)】で応援していただけると大きな励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。