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第44回

 「どっかーん!4周年ライブ」のレッスンはタイトスケジュールということもあり、かなり大変だった。

 しかし、今の私は「どっかーん!」ライブの選抜16人に選ばれたという高揚感で不思議と疲れを感じなかった。

 全員で披露する楽曲のほかに選抜16人にはセンターとしての立ち位置で披露できる楽曲が用意された。私にとっての初めてのセンターに正直、身も心も震えなかったと言えば嘘になるが、このためにイベント期間は頑張ってきたし、何よりも一緒になって戦ってくれたファンのみんなの顔を思い出すと、こんな重圧は平気だった。


 あっという間にライブ当日を迎えた。私は前日、あまり眠れなかった。レッスンの時には平気だった重圧が前日の夜からのしかかった感覚があった。

 ライブ直前、ライブに出演するメンバーで円陣を組んだ。その時はアドレナリンが出て、気分は高揚していた。改めてアイドルというのは喜怒哀楽を超えて重圧や高揚など情緒が不安定になるものなのだと実感した気がする。

 ライブは幕を開けた。ライブの序盤は全員曲だった。私は選抜メンバー16人中15位だったこともあり、立ち位置こそよくないが、そんなことよりもこのステージに戻って来られたことの嬉しさの方が勝っていた。

 ライブは全員曲を終え、MCを挟み、ユニット曲へ進む。私の出番はまだだ。

 ユニット曲が終わり、MCをステージでは行っている。話題はゲームアプリ「どっかーん!」のことだった。このMCが終わると私のセンター曲だ。

 私が準備を終え、ステージの袖で震えて待っていると、高坂春奈が声をかけてきた。

 「ひなちゃん。ここまでよく頑張ってきたね!センターの景色、楽しんできてね!」

 あまりたくさん声を掛けず一言で済ませたのは私の緊張をこれ以上、高めないための高坂先輩の配慮だろう。

 「はい、楽しんできます!」

 私は力強く答えた。


 高坂先輩は私に対して気丈に声を掛けてくれたが、昨年12月に卒業を発表していた。

 そして、今年の6月の卒業公演をもって最終活動日だと運営から公式に発表があった。

 私は卒業発表の日、高坂先輩と朝まで電話をし、沢山泣いた。高坂先輩は最後まで泣かずに振舞ってくれたが、時折、声が震えていた。

 「私は劇場公演に沢山出させて頂いたお陰で『劇場の女神』なんて言われて、注目されて、選抜に選ばれたりしたけど、次の『劇場の女神』はひなちゃんだと思うんだよね!だからさ、毎日コツコツ、劇場公演も懸命に出演すれば必ず見てくれている人がいるからさ。」

 私が高坂先輩からその日に貰った大切な言葉が脳裏をよぎっていた。


 ステージのMCが終わり、ついに私はステージへ向かった。向かう先はいつもの後ろのポジションではない。センターだ。

 「白石ひなです。それではお聞きください。『重力プレッシャー』……。」

 お読みいただきありがとうございます!

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