第32回
「どっかーん!ライブ」が終わると、私は地方出張公演のレッスンに追われていた。
地方出張公演は北海道から沖縄県まで20都市で開催される予定になっており、メンバーの中で3番目に多い10公演回ることになった。実施時期は9月上旬から10月下旬まで実施され、私の地元である神奈川県公演にも出演することが決まった。
私は大学3年生になり、この夏は大学の期末試験とレポートで地獄だった。理学部というのは文系学部のように自宅でレポートを書いて提出したら済む科目は少なく、筆記試験がメインとなる。数式や物理法則、化学反応式を暗記してその場で解かなければならず、1つの科目を落とすと即留年となる危険もあった。また、研究室の配属の進路選択も迫られており、心身ともにいっぱいになっていた。
その上、スケジュールを調整しての10公演回るというのは自分の中のキャパを既に超えていた。この頃から過労からくる体調不良で公演を休演することが増えた。
両親には加入当初から「学業とアイドル活動の両立」をすると約束していた分、休演となることは心苦しかった。
そんな中でも応援してくれるファンのために頑張ろうと思い、日々の公演から地方出張公演のレッスン、大学の勉強と努力を続けた。
ある日、レッスンの途中で目の前がちらつき真っ暗になって、膝から崩れ落ちた。
その後、視界はぼやけながら、メンバーやレッスンの先生の声が微かに聞こえた。
(私、どうしちゃったんだろう…。)
その時は何が起こったか分からなかった。
その後、救急車のサイレンが遠くから段々と近づいて来る音が聞こえ、私は病院へ搬送された。
気が付いたら両親とレッスンの先生が傍らに立っていた。
「大丈夫だからね…。ひな…。毎日頑張っていたもんね…。」
母の声は震えているように聞こえた。
医師が部屋に入ってきてこう告げた。
「疲労とストレスから来る貧血だと思います。意識もしっかりしていますし、今日、点滴が終わったら帰れますよ。これからはしっかり休養を取るようにしてくださいね。」
私は情けなさと辛さで涙を流した。
この時ばかりはもうAYB32の活動を続けられない。卒業を真剣に考えた。
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