第1回
【読者の皆様へ/作品に関する注釈】
※この物語はフィクションです。登場する人物、団体、名称、作品等はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※作中には実在のアイドルグループやラジオ番組、エンタメ文化等の要素をモデル・モチーフにした表現が含まれますが、特定の個人や団体を批判・酷評する意図はございません。
※一部、アイドル業界の構造や裏側に関する描写、主人公の挫折や悩みといったビターな表現が含まれます。
※専門知識や制度に関する描写には細心の注意を払っておりますが、物語の展開上、現実と一部異なる表現やフィクションとしての演出・脚色が含まれる場合があります。あらかじめご了承ください。
※本作はWebメディア「note」にも掲載しております。著者本人による投稿であり、転載等ではございません。あらかじめご了承ください。
2022年秋、僕は衝撃の出会いをした。
そう…この出会いは偶然、いや必然だったのかもしれない…。
たまたまその夜は何もすることがなくSNSをふと見ていた。そこで目に入ったのは「AYB32新メンバーによる新番組YouTube生配信決定」の文字。コロナ禍を経て、グループの人気が下がりつつあるAYB32の数年ぶりの新メンバーによる配信番組の告知だった。その告知は初回が配信された後の告知だったので、配信アーカイブが残っていた動画を見つけた僕は期待せずに動画を開いたのであった。
「さあ、始まりました!AYB32 20期生新メンバーによる新メンバーだけの番組。司会は天の声が務めます。」
(どうせ、売れない芸人か…フリーのアナウンサーかな…。やけにテンション高めだな…。)
僕は半ば冷笑の気持ちで見入っていた。あの子が登場するまでは…。
「早速メンバーの自己紹介から参りましょう…。」
一人ひとりキャッチフレーズを緊張した面持ちで話し、出身や名前を言っていく。出身地は北海道から沖縄まで幅広かった。
「はい!理系で一番かわいい実験娘!神奈川県出身 白石ひな!大学一年生の18歳です!」
その姿は一人だけ衣装の上に白衣姿、黒髪ストレートで清楚な面持ち、そして上品な可愛さ、透明感のある白い肌に笑うと柔らかくなる口元、可愛さの中にどこか大人びた落ち着きがあった。
僕は一目見た瞬間、度肝を抜かれた感情になった。こんな感情はいつ以来だろうか。気づいた時には他のメンバーに目もくれず一気に配信時間の2時間が過ぎ去っていった。
後から調べると白石ひなは神奈川県出身、血液型はB型、身長は162㎝と、公式サイトに輝く笑顔の宣材写真と共に記載されていた。SNSで『白石ひな』を検索すると生配信された日付の投稿に『無加工でも強い』『顔が良すぎる』と書かれていた。加入したのはこの生配信の約一か月前だったようだ。
(生配信をその日に生で見れば良かった…。)
僕は出遅れた感を感じ、少し自己嫌悪に陥った。基本ネガティブが性分なのだ。
2022年10月、あの配信を見てから僕の灰色だった日常は少しずつ色づき始めたのだった。確実に言えることはあの白石ひなの顔が脳裏から離れなくなったこと。そして、毎日のように「白石ひな」で検索をかけ加入前のオーディション動画まで遡ってみていたこと。
「私は理科が小学生の時から好きで…」「実験のようにみんなの心を化学反応させるように頑張ります」何度、彼女の自己紹介を聞いただろう。
「18歳か…」僕はそうつぶやいた。




