声
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ネズミを(物理的に)飲み込んでから数時間。
俺の体は一回り大きくなり、色も心なしか透明から深い青へと変わっていた。
進化の余韻に浸っている暇はなかった。
洞窟の奥から、今度は「カチャリ、カチャリ」と、生物らしからぬ硬質な音が響いてきたからだ。
「……またネズミか? いや、もっと重いなー。」
「うげっ。」
視界の端に映ったのは、錆びついた剣を手にし、カタカタと顎を鳴らすスケルトンだった。
肉がない。つまり、さっきの「窒息作戦」は通じない。
スケルトンは俺を見つけるなり、容赦なく剣を振り下ろしてきた。
俺はとっさに体を平べったく伸ばして回避する。
「危ねえ! 骨のくせにキレが良すぎるだろ!」
剣先が地面の岩を砕く。まともに食らえば、核をやられて即終了だ。
俺は逃げ回りながら、必死に自分のステータスを確認した。さっきのレベルアップで、新しい力が解放されているはずだ。
《 スキル【粘着糸】および【酸弾】が使用可能です 》
「これだ……!」
俺は体の一部をピストルの銃口のように突き出し、スケルトンの膝関節を狙って、凝縮した消化液を撃ち出した。
シュッ――ドロリ。
「ガチ……ッ!?」
放たれた酸がスケルトンの膝に命中し、瞬く間に骨をどろどろに溶かしていく。
バランスを崩して膝をつくスケルトン。
今だ。
俺は【粘着糸】を放ち、スケルトンの持つ錆びた剣を絡め取った。
そのまま糸をたぐり寄せ、剣ごと、そして崩れ落ちた骨の山ごと、自分の中に「包み込んだ」。
「うっ、鉄の味がする……」
硬い。重い。けれど、体内の溶解液がフル回転を始める。
無機物を分解するのは骨が折れる(骨だけに)が、不思議な高揚感が全身を駆け巡った。
《 鉄およびカルシウムを検知。解析完了 》
《 固有スキル【擬態:鉄剣】を獲得しました 》
《 外殻スキル【硬質化】を獲得しました 》
「えっ、剣になれるの?」
試しに念じてみると、俺のぷよぷよだった表面が、メタリックな光沢を帯びてカチカチに固まった。
これならもう、ネズミに噛まれても痛くも痒くもない。
その時だった。
「――おい、今の音を聞いたか? この先に魔物の気配がするぞ」
洞窟の入り口の方から、複数の足音と松明の明かりが近づいてきた。
人間の声だ。
元の世界なら涙が出るほど嬉しい再会だが、今の俺は、どう見ても「レアな素材を落としそうな強そうなスライム」だ。
「見ろ! あんなところにメタルスライムがいやがる!」
「ラッキーだ、ありゃあ高く売れるぞ! 囲め!」
剣を抜き、殺気立って近づいてくる冒険者たち。
俺は内心で激しくツッコミを入れた。
(……いや、メタルじゃなくて、ただの鉄分多めのスライムなんだってば!)
だが、言葉は届かない。
俺の異世界サバイバル、始まって早々の相手は――「人間」だった。
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