第四部 Replicant
スインたちを置いて、僕は建物の小さな一部屋……レオンのいる部屋に行った。
ドアを開けるとやっぱりレオンは椅子に座ってソワソワしていた。
「……大丈夫か?」
その問いかけに応じる代わりに、ベッドの縁に座る。
「まぁ、僕が作りものなのは分かってた事だし、今更特に思うことなんて無いよ」
「そうじゃねーよ。……俺しか居ない時ぐらいは、正直になれよ」
レオンは時々、やけに鋭いから困る。それが大体重要な時だから、余計に。
「……やっぱり、寂しいよ、そりゃ」
レオンは僕の隣に座る。
「そうか、……気休めにしかならないけど、俺だってみんなとの違いで今でも悩むぜ」
「……だよね。僕は恵まれてるよ、本当。だからこそ、この環境と自分が釣り合ってない気がして……怖いんだ」
「フィラでもそう思ってたんだな」
「僕だって人間なんだし……いや、まぁ、それで良いのか……?」
不意に、『自分は人間である』という定義の揺らぎを感じる。
おそらく分かりやすく困惑してしまった僕を見て、
「作られたにしても、十割人間の要素で作られてるんだからそこは間違いねーだろうよ。俺とかキョンシーの人とかの方が怪しいまであるぞ」
「まぁ……確かに」
「まぁ、フィラは俺の事も人間だと思ってくれてると信じてるけどな」
「当たり前だろ」
「だからフィラを信じるぜ俺は。……中身が誰でも、どんな姿になっても」
「そう」
こんなにも強い信頼の言葉は、他にあるのだろうか。
目を合わせられなくなった僕の頭を、硬い手が撫でる。傷付けないよう、浅く、そっと。
「フィラ」
頭の手が無くなって、代わりに腰に腕を回される。
「何」
急に慣れない体勢にされて、思わず語気が強くなる。
「このタイミングで言うのは狡いし、状況が状況だけどさ、伝えられないままになるのも嫌だから、言う。
信じて貰えないかもしれないけど、俺は……フィラが、好きだ。勿論、恋愛的に、」
「は?」
突然の甘ったるい言葉に、脳が追い付かなかった。
「……返事とかが、欲しい訳じゃないから、いいけど」
分からない分からない。小説でこう言う類の表現は結構読んだ事はある。でも、それが意味のある行為だとは思えないでいた。
急に触れられている所が熱く感じた。これが……恋ってやつなのか?
「……馬鹿」
「……だよな、俺らはあくまで仲間で「違う」
意を決して言う。
「レオンの癖に、先に言うなんて……」
「何だよそれ……って、え?」
「お陰で、意識しちゃうじゃないか、馬鹿」
どうか、この感情は『フィラ』のものでありたい。




