イエローGET大作戦!(2)
「・・・仕事にならん」
はー・・っとため息を吐くライは物憂げで色っぽかったりする。
そんなライを見ていつものように部下達が切なげなため息を吐く。
しかし今日はそれだけではなかった。
椅子の手の部分に女が2人、座ってライに纏わりついていた。
右にピンク、左にブルー。
そしてピンクの横にスイとエンが居たりする。
入り口付近にはドクとイエローが口やかましくじゃれあっている。
非常にうるさい。
ライはドクから惚れ薬のことを効き、尚且つパープルが解毒剤を博士に作らせに行ったことを聞いて早くパープルが戻ってくることを今か今かと願っていた。
なんでも始めに見た相手を好きになるらしい惚れ薬。
「ねぇ、無視しないで。か、勘違いしないでよ!?別にあなたが好きとかじゃないんだからね!」
「・・・・」
「ライさん・・・こっち向いてください・・・かっこ良いです~」
「・・・・」
「ピンクさん、好きです」
「スイ、今更なに言ってるんだっ!ピンクさんもどうしたんですか!?ライ様が好きだなんて・・・そんな、俺・・・!!」
「・・・・お前達・・・」
「イエロー様ー!!!!この残りを飲んでくださいませ!!」
「よるなぁぁぁぁぁ!!」
「お前達、静かにしないかっ!!!!」
「「「「「「!!!」」」」」」
バチバチバチ・・・っとライの操る雷がそれぞれの足元に落ち、余韻を残し煙を上げた。
辺りはしーんと静まり返る。
そのことに満足してどかっと椅子に座り直したライだが、女性人達が更にぽーっと見つめていることには気づかない。
「全く・・・今日は仕事にならんな。休みにでも・・・・な!?なんだ!?」
「「「「「ライ様ぁ~~~!!」」」」」
その場に居た女部下が雰囲気にやられてか今まで秘めてきた思いを爆発させピンクやブルーに続いてしな垂れかかって来た。
唯一仕事をしていた層までめちゃくちゃになり、カオスと化す。
まさにハーレム状態。
「ドク、一体どれだけ惚れ薬を作ったんだ・・・」
「え!?これはわたくしのせいでは・・・!」
むせ返るような女の匂いに顔が引きつっている。
眉間に皺が寄り漏れ出す雷を制御するのに気を使っているその時。
こんこん、と扉にノックが響く。
「失礼します。あの、スイちゃんここに居ます、か・・・?」
「ああ、パープル。待っていた。直ぐに解毒剤を・・・・パープル?」
「・・・・・・」
「パープル」
驚いて目を見開いているパープルを見て、ライは然もありなんと疲れたように苦い顔をした。
自分の恋人にこれだけの数の女がしな垂れかかっていれば誰でも驚くだろう。
そして嫉妬するものだと思うのだが、パープルはただ驚いて目を見開いて固まっていただけだ。
ハートを飛ばして来る女を掻き分けてパープルに近づこうとするのだがなかなか近づけない。
目をぱちくりと瞬いているパープルを見て少し寂しい思いになる。
少しは嫉妬してくれても良いのではないか、と。
そんなことを思っていると突然パープルが踵を返した。
「お、おい!どこへ行く!解毒剤は!?・・・ぇえい!離せ!!」
「ライ様~!!」と纏わりついてくるため思うように身動きが取れない。
扉がまた開かれる音がして戻ってきたのかと希望の光をともした、が。
「・・・なんだお前か」
「うあ~・・・ライちゃんなんて羨ましい・・・って!!なんで俺のブルーちゃんまで!!・・・は!!さてはライちゃん世界中の女を自分の物にしようと・・!?いやー!不潔よっ不潔!!・・・っておわっ!!ちょ、ライちゃん!!ちょっとふざけただけじゃん~」
思いっきり雷を落としたライに向かってぶーぶーと文句を言うのは博士。
言いながらちゃっかりブルーを捕獲したのだが。
「離せ~!何しやがんだっ!このくそ親父ぃぃぃぃぃい!!!」
「なっ・・・!!!くそ親父・・・!?」
ガーン!と分かりやすくショックを受ける博士は余りの衝撃にその場に崩れ落ちた。
その隙にライの元へ嬉々として戻って行くブルーを涙目に見つめる。
「俺の可愛いブルーちゃんが・・・まさかの反抗期・・・しかもライちゃんの毒牙に・・・」
わざとらしく「うっうっ」と泣いてみせる博士にライはもう1発雷を落とした。
見事命中し、ぷしゅー・・・っと煙を立てる。
「いい加減にしろ」
「わーってるって。ちょーっと遊んだだけじゃん。ほれ、解毒剤」
投げられた解毒剤を片手で受け取ったライは即座にブルーの口に放りこむ。
いきなりその場にガクリと崩れ落ちたブルーを受け止めそのまま博士に渡した。
「・・・変なことしてないよな?」
「する訳がないだろう。お前と一緒にするな」
気を失っているブルーを愛おし気に撫でてお姫様抱っこをする。
そして来客用のソファにどかりと座ったかと思うと、いつに無く真面目な顔でライを呆れたように見た。
むっと眉を寄せてライは博士を睨む。
「なんだ」
「あのさー・・・泣かすなよ。あいつが人前で泣くなんてよっぽどだぞ」
「・・・何を言っている」
「パープルのこと言ってんだけど?さっき廊下ですれ違った」
「!・・・・・・!!」
今更ながら追いかけようとしたが思いっきり腰に衝撃を受けて前につんのめった。
ピンクがライの腰に抱きついたのだ。
ライが叫ぼうとしたとき、またしても扉が開かれた。
そしてその人物がピンクを見て、次いでライを見、殺気を発した。
「・・・ピンクを離せ!魔王!!」
「・・・お前の目は節穴か?どこをどう見れば私がこの桃色を掴んでいるように見える?・・・あと、私は魔王ではない」
「うるさい!」と言って鉄拳を振り上げつつ新たなる侵入者、レッドが殴りかかっていたのでライはやれやれと手をレッドにかざしたのだが、意味が無かった。
「ぶほぉ・・!」とレッドが吹き飛んだのだ。
ピンクの大きなハサミによって。
ピンクはライの前に立ちはだかりハサミを床にぶっ刺した。
倒れこんだレッドを見下ろすピンクの顔は相当なものらしい。
ライには見えなかったが、位置的にピンクの表情が見えるであろう博士の顔が真っ青だ。
若干震えている気さえする。
「この人に何する気?死にたいの?」
「ピ、ピンク!!正気に戻ってくれっ!・・・ひぃ!!」
最上級の笑顔を向けられ必死に言い募るレッドの股の間にハサミが刺さった。
さすがのレッドも青ざめて腰を抜かした。
しかもこれをしている間中、ピンクは輝かんばかりの笑顔である。
ライは持っている解毒剤を後ろから回した手でピンクの口に含ませた。
途端、その場に崩れ落ちたピンクをレッドが下から支える。
「お前、ピンクに何をした!?」
「・・・あいつらに聞け」
ドクを顎で指し、ライはやっと廊下に出たのだった。
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一方ライの消えた部屋では、どよん・・と濁った空気が充満していた。
この空気の元はスイとレッドだ。
まずスイは自ら壁に頭を打ちつけながら「嘘だ、あんなの俺じゃない。記憶よ消えろ。消えろ消えろ消えろ消えろ・・・」と呪文のように唱えている。
引きつった笑みと虚ろな目がポイントである。
次にレッド。
イエローを物凄い形相で掴み上げ揺さぶっている。
なぜかと言うと・・・。
「イエロー、大好きよ」
「いや、ピンク。俺パープルちゃんの事が好きで・・・」
「何で?あたしのどこがいけないの?・・・あたしだって貧乳だよ」
「う・・・う~ん」
ぺたり、と自分の胸を触って上目遣いに見つめる美美少女、ピンクにパープル一筋のはずのイエローも「う~んう~ん」と頭を抱えて悩んでいる。
「イ、イエロー様!わたくしの方があなた様を愛しておりますわっ!」
「ごめん、俺貧乳が好きなんだ」
自慢の胸を否定されドクがその場によよよ・・・っと崩れ落ち、レッドはピンクの胸を見つめて悩んでいるイエローを揺さぶった。
「おい、待て!お前パープルが好きなんだろ!?ピンクに手をだすな!!・・・胸を見るな!!穢れる!!」
「いや~・・・だって俺のこと好きって言ってるし・・・」
「惚れ薬のせいだろぉがっ!!」
がくがくとイエローを揺さぶり締め上げている。
そう、惚れ薬。
気絶したピンクに面白半分で飲ませたのはもちろん博士。
飲ませた瞬間目を覚まし、ドクから逃げ回っていたイエローを運悪く見てしまった、と言うわけだ。
博士はまだ気を失ったままのブルーを自身の膝を枕に寝かせて、それをにやにやと見物していた。
「あ~すっげぇ楽しいー・・・あと半分くらい残ってるからな~・・・誰か面白そうな奴いねぇかなぁ・・・」
ブルーのふわふわの髪を弄びながらパープルが持ってきた惚れ薬の瓶を眺める。
半分は解毒剤を作るために使った。
そして残りの半分は自分のためにとって置いた。
こんなに面白い物捨てられるはずがない。
仕事にならず、皆部屋から出て行ったので今この部屋に居るのは博士とブルー、レッドにピンク、イエローとドクそしてスイと何故か焦げているエン。
威嚇のはずのライの雷が当たっていた。
誰にしようかな、と部屋をぐるりと見渡すと扉が開いた。
そこにいたのはパープルで。
ぎっと博士を睨んだ。
「・・・ちょっと。いつまで居座る気?ライ様の迷惑でしょう」
「ターゲッチュウ!」
泣いたとは思えないほどいつも通りのパープルを見て博士はぱぁぁぁあっと顔を輝かせた。
そんな博士を見てパープルは顔を顰める。
「何気持ち悪いこと言ってんのよ。さっさと・・・?ブルーどうしたの?」
「あ~・・・それがわかんないんだよ~。ちょっと見てやってくれない?」
ブルーを心配してかパープルが素直に近寄ってきたことにほくそ笑む。
ブルーの顔を覗き込んだパープルをがしっと掴んだ。
「おっしゃ!捕獲!!」
「っつ!!何すんのよ、この変態おや、じぃぃ!?・・・むぐぐぐぐ!!」
惚れ薬がパープルの喉を嚥下していく。
そして始めに見たのは、もちろん顔を固定していた博士だった。