表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の元一般人――異世界ラノベの主人公に憧れた俺、最強でも現実は甘くなかった  作者: ITIRiN
第7章:王の顔、そして一人の男

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/145

第85話:孤児院襲撃

「なにしやがるんだマイカ‼ 痛いだろうが!」


どうやら俺がいちゃも…じゃなくて、国民の皆さまからいただいたご不満に対して回答している間に、屋上へ上がってきていたらしい。マイカが腰に両手を当てて立っていた。


「さっきも言ったけど言葉使いには気を付けなきゃ駄目でしょうが! なんなの、さっきのマフィアの人みたいなセリフは」


「どこがマフィアだよ。俺はただ優しく『そこで待っててね♪』って言っただけだろうが」


「どこら辺が優しかったのかなぁ? 私には気が済むまで殴るって聞こえたんだけど」


昨日のティアとアベルに比べたら超優しいじゃん。ティアなんて自分の部下を殺そうとしてたからな。


「世界一優しいことで有名な俺がそんなことを言うわけ―――⁉」


さっき大人しくそこにいろと言ったばかりだというのに、俺の願いは聞いてもらえなかったようで。わざわざこっちまで出向いてくれていただけでなく、何かからピンを抜く音まで聞かせてくれてしまった。


その瞬間、最悪の事態を考えた俺はマイカを孤児院の中に転移させた。同時に、小さなパイナップルみたいな物が屋上に向かって投げ込まれてきたのを確認し……。


これをどこか適当な場所に転移させるわけにもいかないし、小さい結界でも作って閉じ込めればいいか。まさかリアル結○師になる日がくるとは思わなかったけど。


実は少しやってみたかったということもあり、右手の形を真似して狙いを定め、さあこれから――という瞬間。


全身真っ黒な龍が、それを丸呑みにしてしまった。


そして、その飼い主? らしき人物がゆっくりと、しかもご丁寧にスカートをふわりとさせながら地面に着地して、


「人のご主人様にそんな物騒な物投げないでほしいのだけど。……貴方、死にたいの?」


「なんだよそのカッコいい魔法は。……つか、手榴弾を丸呑みしたけど大丈夫なのか?」


「これは私の闇属性魔法で……まあ簡単に言えばブラックホールみたいなものね。一時的に相手の視力を奪うことから、今みたいに攻撃を吸収して完全に無効化することまで、さじ加減は自由自在。それに加えてこの子は自立行動も姿を変えることもできるのよ。さっきのは私の完璧な遠隔操作だけどね」


ふ~ん。じゃあポチが俺達の周りをグルグルしてるところを見るに、今は自立行動中ってところか。


「ポチ、お手……。おお~、お前頭いいな! じゃあ次は――痛っ⁉ おい、なんで今蹴った?」


「人のオリジナル魔法に変な名前をつけないでくれないかしら。自慢じゃないけどこの魔法は凄く難しい……というかアベルともやり合える程の高位魔法なんだから、ポチとかふざけた名前を付けないでちょうだい」


「おいおい、全世界のポチさんに謝れよ。失礼だろうが……。なあ、ドニーさんもそう思うだろ?」


セリアによって襲撃が失敗した瞬間に国外に向かって走っていたので、俺達の目の前に強制転移させてやった。ポチに睨まれて腰を抜かし、脅えているところに、わざとさっき特定した際に調べた名前を言ってやる。


するとただ震えているだけのクズ……ではなくて、ドニーさんという素晴らしい名前に何故かセリアが反応し、


「ドニー………、あ~、思い出した。貴方ミナの面接で落とされた元騎士団の人でしょ?」


「なるほど、だからマイカ達のことが気にわなかったのか。……お前、本当に元騎士団の人間か? 確かに俺達が怖いのは分かるが、元騎士団の人間ならもう少し堂々としたらどうなんだ? いかにも隙をついてやったぜ、みたいな顔をしながらこの孤児院を包囲してる奴らみたいにさ」


そう言いながら俺は、さっきから気付いていたがわざと無視していた怪しい九人を監視カメラを通してモニターに表示させる。するとセリアが、


「あらあら、これまたミナにクビにされた人達が勢揃いしちゃって、今日は何かのお祭りかしら? 確かに今日はひな祭りというお祭りだけど、ぼんぼりに灯りをつけに来たにしても手榴弾はちょっと過剰過ぎるんじゃない?」


「えっ⁉ 九人全員手榴弾持ってんのか? ………うわっ、マジじゃん。ポチ~、あいつら全員、手榴弾ごと食べれたりできない?」


「だからそのダサい名前止めてって言ったでしょうが。あとソウジのお願いは聞けないこともないけど、もう一生戻って来れないわよ」


「う~ん、それはそれで困るな。お前らにはまだまだ聞きたいことが沢山あるし、というかこの後、尋問室というとっておきの部屋を用意したのにそれが無駄になっちまう。……いいこと考えた!」


そう思った瞬間、俺はセリアに念話でそれを伝えながらポチに触れた。魔力の組み合わせについてはよく分からないので感覚だけで氷属性の魔力を流し込み、体の色が黒と透明に近い水色の二色になっただけでなく、いかにも氷の龍ですみたいな姿になったポチを見た瞬間――ようやく屑ドニーさんが、


「おっ、お前ら今すぐ逃げろ‼」


「俺達が逃がすわけないでしょうが。行け、大紅蓮氷輪○!」


「あら、その名前は結構カッコいいわね。でも今回の作戦は自立行動じゃなくて私の操作なんだから、私の名前を呼んでほしかったわ」


安心しろ。二度と大紅蓮氷輪○なんて言わないから。ここは異世界とはいえ何があるか分からないからな。


などと元ネタを知らないであろうセリアを横目に、空中に浮いているモニターで九人の様子を見てみると、俺が伝えた作戦通り、全員の足元と手榴弾を持っている側の手を順番に凍らせていっていた。


「初めてやるわりには随分と上手いじゃねえか。後でなんかご褒美をやるよ。お菓子でいいか?」


「じゃあ今すぐ抱っこしてほしいわ」


セリアはそう言いながら体を俺の方に向け、両手を広げてきたのでそのまま抱っこしてやり、


「んじゃあ今からこいつらを尋問室に送るから、後はよろしく~」


「貴方が現場にいる以上、わざわざ騎士団を出動させる必要はないとはいえ、警備部の子が一人しかいないというのもどうなのかしら?」


「………一応見つからないように気配を消して隠れていたのですが、流石はソウジ様の元に駆け付けただけはありますわね」


ユリーが俺の護衛の為か警備室からここに転移してきていたのは最初から知っていたが、セリアも気付いてたのか。……いや、俺が気付いていたんだから当たり前か。つかその登場の仕方カッコよ。


「さっきから気になってたんだが、セリアはまだしもなんでユリーまでこっちに来たんだ?」


「なんでって、そりゃーこの子達三人はソウジの護衛も仕事のうちに入ってるからに決まってるじゃない。まあ最初はミナが貴方の外出時には必ず三人のうちの誰か一人を護衛としてこっそり後を追うようにしようとしてたみたいだけど、下手に毎回魔法を使って撒かれると何かあった時に面倒だから止めたみたいね」


「この前の爆発事件の時も現場に行く際に魔力を探知されないように細工してから転移なされたようですし、その時の反省もあるようですわよ」


なんだそのジト目は。そんな、『ご自分の立場を本当に理解されていますの? もし理解されていながらそれを無視しているのでしたら呆れますわ』みたいな目は。


「言っておくけど俺に普通の貴族らしさを求めるだけ無駄だから諦めろ」


「それがソウジ・シラサキという人間だものね~」


「こらっ‼ 私のお説教が終わらないうちに何セリアとイチャイチャしてるの‼ 今すぐそこに正座しなさい‼」


「この国の重要人物は何故こんなにも変わった人達が揃ってしまったのか不思議でなりませんわ」


ユリーも十分変わってるぞ。


* * *


あれから俺はマイカに怒られたり、ユリーに呆れられたりした後、孤児院の子供達と遊んだりしてから帰ると夜ご飯の準備が出来ていた。


「あら? もしかして私達の帰りが遅かったせいでまだ夜ご飯の準備が出来てない感じかしら?」


「えっ⁉ す、すいませんソウジ様、今すぐ先生達のお手伝いをしてきますのでもう少しお待ちください!」


一番最初にテーブルの上の状況を把握したはずのセリアは何故か余裕そうな顔をしているのに比べ、エレナは凄く真面目なので本当に申し訳なさそうに頭を下げてきた。なので俺は頭を撫でてやりながら、


「これは手巻き寿司って言って自分で作る料理だから、もう準備は殆ど終わってるはずだぞ。ってことでエレナも洗面所で手を洗ってきな」


そう言ってやると、エレナは安心したらしく笑顔で洗面所へと向かった。


「あの子って本当に真面目よね。他の子達は先に手を洗いに行ったのに、エレナだけはエメ達に遅くなったことを謝りに行くって聞かなかったし。まあそのことを完全に忘れちゃったみたいだけど」


「ご主人様を助けに行っただけのはずですのに、随分と遅いお帰りでしたね…セリア」


「あ~、私もまだ手を洗ってないんだったわ。ほらソウジ、早く洗面所に行くわよ」


「お前は俺から降りて自分の足で行くという考えはないのか? ったく」


何だかんだ言いながらも実はセリアを抱っこすることをかなり気に入っているので、そのまま洗面所へと向かった。


……この国は、やっぱり変わり者ばかりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ