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世界最強の元一般人――異世界ラノベの主人公に憧れた俺、最強でも現実は甘くなかった  作者: ITIRiN
第7章:王の顔、そして一人の男

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第77話:知らないところで

玄関に転移した俺達は靴を脱ぎ、そのままベッドで色々と楽しんだ後、リアの服はまだこっちに持ってきていないので、お風呂に入りながら洗濯機を回し、今は一緒に朝ご飯……というか、もう時間的にはお昼だが、それを食べていると――


「そういえばご主人様とティア様は二週間程こちらで暮らしていたようですが、意外と片付いていますね。もしあれでしたら、私がお掃除させていただこうかとも思ったのですが」


「まあティアが毎日掃除してたからな。勝手にタンスの中に私物を混ぜてたりもするけど」


というのも、この間セリアを連れ込んだ時にいくつか服や下着を持ってきたのだが、それを空いてるはずのタンスの中に仕舞おうとしたら、既にティアの衣類が入っていたのだ。


「お掃除だけでなく、二週間毎日ご主人様のためにご用意されていたお料理も凄くバランスが取れたものでしたし、ティア様が本物のメイドと言われても遜色ないほどのレベルですね」


「あれでも一応役職はメイドだぞ。あいつがメイドの仕事をしてるところなんて一回も見たことないけど……。つかティアにメイドは似合わないから、無理してそれをやってほしいとも思わんけど」


「そう仰られるわりには、結構ティア様が家事をしておられる姿を気に入っておられるように感じたのですが」


……相変わらず鋭いな、リアは。


「別にリアが家事をしている姿が魅力的に感じないとかじゃないけど、なんつうかリアはTheメイド感があるんだよ。んで、それに対してティアは高貴さとかが有りながらも普段は俺と馬鹿やってるから、ギャップがあるせいか惹かれる何かがあるんだけど……絶対に本人には言うなよ。こんなこと思ってるのがバレたら揶揄われるに決まってるからな」


「ふふっ、意外とそんなことないかもしれませんよ。なにせあの方も一人の女性ですし」


「どうせティアは俺のことを子供か弟ぐらいにしか思ってないだろうからな。あいつ普通に毎日俺と一緒のベッドで寝てたし……あっ、やべ」


気付いた時には既に遅く、リアは笑顔を浮かべながら、


「お食事が済みましたら、少し二人でお話しいたしましょうか」


「……はい」


* * *


その後行われたリアによる説教は、ミナのようなヤキモチからくるものではなく、今回はティアが相手だったから許すが、今後はハニートラップなどの可能性もあるのだから気を付けろ――というものであった。


そんなありがた~いお話が終わった後、リアが食器類をこっちで洗ってから帰るというので、俺も一緒にキッチンへ移動し、


「ほら、洗い終わった食器は俺が拭くからこっちによこせ」


「いえ、ご主人様にそのようなことをさせるわけにはいきませんので」


そう言いながら洗剤を流し終えた皿を水切りラックへと移そうとしたので、それをひったくり、この前までティアが使っていた食器用のタオルで拭きながら、


「最近の日本は男女平等だの、家事は夫婦で分担するのが当たり前だのと五月蠅いんだから、気にすんなって」


「ですが私はご主人様のメイドですし、そもそもメイドというものは主の身の回りのお世話をさせていただくのにも、ちゃんと理由がありまして―――」


また皿を水切りラックへと移そうとしたので、それを再びひったくりながら、


「メイドは主の世話をすることによって少しでも負担を減らし、本業に集中してもらうってのが理由なんだろ? でも残念ながら、そんなのがこの国で通用してたのは1950年以前までであって、それ以降は女性の社会進出が始まり始めたから、2019年の現代日本でその理論は一切通用しないぞ。つかそんな古臭いことを男が言ってたら、こっちの事情を一切知らないくせにあーだこーだと文句を言い出す自称正義の味方の皆様に叩かれそうだし」


「こちらの世界でのことはよく分かりませんが、私達の世界でのメイドと主の関係についてそこまで知っているのでしたら、私から無理やり仕事を奪わないでほしいのですが」


「でもそっちの世界には、片腕をなくした主に向かってテーブルを拭けだのなんだのと命令してくるメイドもいるぞ」


どうやらあの時の様子もティアが送った動画の中にあったらしく、リアは微妙そうな顔をしながら、


「あの方を私達と一緒にしてほしくない……と言うとあれですが、頭の固いメイドがあの様子を見たら本気で怒られますよ。……私のお母様は『こんな夫婦関係も憧れるな~』と羨ましがっていましたが」


「そろそろ流した皿は、そっちじゃなくてこっちに寄越せよ」


「はあ……。では、こちらのお家ではご主人様にも家事を手伝っていただきますが、お城の方ではご遠慮ください。というか私達の仕事をこれ以上奪われると、やることがなくなってしまいますので本当にお止めください」


そういえばこの間エメさんから貰った報告書に、お嬢様達が新しい生活に慣れてきたのもあり仕事のスピードが上がり始めているため、少しずつメイドの仕事を増やしていただけると助かる……って書いてあったな。


まああの家は最新家電や魔法を使った自動清掃システムを取り入れているから、七人もいれば余裕か……。ん~、でも俺が自動にしたところは全部、掃除をするのが大変なところなんだよな。


となると、リアには食事を作る時以外は俺とミナの専属メイドの仕事に専念してもらって……これでもまだ六人か。あと一人くらい役職移動でもさせるか?


「―――様、ご――様、ご主人様、………ソウジ様!」


「うえ⁉ ……あっはい、なに?」


「もう洗い物は全て済みましたが、ご主人様はいつまで同じお皿を拭いていらっしゃるのでしょうか」


そう言われてリアの手元を見た後に自分の手元を見てみると、確かに最後の一枚らしき皿を延々と拭いていた。


「あ~、んじゃ帰るか」


「なにか考え事でもなされていたのですか?」


「ん~、まあちょっとな。ほら、バスケット持つぞ」


二人分とはいえ、バスケットの中にはさっきまで使っていた食器類が入っているので、リアからそれを受け取ろうとすると、リアは俺の目を見ながら真剣な顔で、


「そういえば少し前までは、暇な時は居間・会議室・和室のどこかでゲームをしていましたのに、最近はあまりそういった姿をお見掛けしないのですが、なにをなされているのですか。というか、どこにいらっしゃるのでしょうか?」


「人を暇人みたいに言うな。仕事がない時間はしょっちゅうティアに訓練所でボコられてて忙しいんだぞ。しかも模擬戦時はコートを着せてもらえないどころか、防御魔法をかけているチョッキまで脱がされるからシャツ一枚だし。お陰で何回骨を……なんでもない」


あっぶねえ。模擬戦中のティアの攻撃を直で受けた時は、普通に骨が折れてるなんてバレたらどんな反応が返ってくるか分からねえからな。


まあこれはティアが俺に対する虐めや嫌がらせでやっているわけではなく、


『お主の場合、なんの努力もせずに強すぎる力を手に入れてしもうせいで、死の恐怖や攻撃を受けた時の痛みを自分の体で味わうことが極端に少ないじゃろうから、わらわと模擬戦をする時はお互い殺す気でやって、それを無理やりお主の体に叩き込むぞ』


とか言っていた。


その為、骨折するのなんて日常茶飯事だし、最初は痛すぎて視界が白くなり、そのまま動けなくなることも多々あった。

しかし模擬戦中のティアは一切の甘えを許してくれないため、動かなければ黙って半殺しにされるだけなので、無理やりにでも動かなければいけない。


………よくよく考えたらこれって虐待じゃね? 流石吸血鬼、種族名の最後に“鬼”がついてるだけあるな。


「ご主人様とティア様のお二人で模擬戦をしているのは既に聞いておりますが、何故か内容は教えてくださらないんですよねえ。一体どのようなことをなさっているのですか?」


「だから俺がティアにボコられて終わり。それより、訓練場にいる時以外は何をしてるか気にならないのか?」


「いえ、ご主人様が書庫にこもられて一人お勉強なさっているのは既に存じておりますので。……メイドと主の関係もそこで覚えになったのでは?」


この間クロエが怒って会議室を出て行った時のマイカの言葉からみるに、多分あいつにも書庫の件に関してバレているし、勿論ティアにもバレている。


書庫に関しては本の数が数なため地下室にあるのだが、なんで既に三人に俺の行動がバレてんだよ。逆にお前らが一日どこで何をしてるかなんて知らねえぞ。


「そうだよ、本で読んで覚えたんだよ! だから早く帰るぞ」


ティアとの模擬戦の内容を聞かれても面倒なので、俺はワザと逆切れ気味にそう言いながらリアが手に持っているバスケットをひったくり、その代わりに自分の手を握らせた。

そして――何もなかったような顔をして、あっちの家へと転移した。

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