第73話:国の収入源
第73話:国の収入源
何故か俺の知らないところで、勝手に国王&建国宣言の日程が決められていたので、仕方なく会議室で段取りなどを決めた後。
俺は机にべた~っと寝そべりながら、ぽつりと呟いた。
「……金が欲しい」
「いやいやいや、今でもソウジ君は十分お金持ちでしょ。私、この間ティアに盗賊狩りでどのくらい稼いだのか聞いたけど、そこらの貴族の全財産より稼いでたよね?」
「個人の金じゃなくて、国の金だよ。いずれは国民から税金を取るにしても、それだけじゃ国の運営はやっていけないだろ。それに今は、俺が殺した王族貴族共の資産を国の金として使ってるけど、普段の食費と……誰かのドレス代三着分と、それと国民に返金する分で結構飛ぶんだよ。まだ余裕があると言えばあるけど……」
国の運営についてなんてド素人の俺でも、国民の税金だけでやっていくのが厳しいことくらいは分かっている。
だからこそ、何か別の収入源を確保したい――そう考えながら言ったのだが。
しばらく考え込んでいたらしいミナが、俺の顔を見ながら口を開いた。
「そういえば……この宮殿で使っている水や電気って、毎月使用料を払っているんですか?」
「いや、払ってないけど」
「え゛っ。私はあんまり日本の公共料金について詳しくないけど……それ、かなりまずいんじゃないの?」
よく“公共料金”なんて言葉を知ってるな。
まあ、どこかのサイトを見て覚えたんだろうけど。
「だってここは異世界だぜ。仮に未払いが国にバレてたとしても、請求のしようがないし、そもそもルナの力で無理やりこっちの世界に日本のインフラを繋いでるんだから、それを止めることも出来ない。つまり今後も俺達は、電気、ガス、水道がタダで使い放題ってわけだな」
「うわっ、それもう犯罪じゃん。一国の王様になろうとしてる人が、そんなこと言っちゃっていいの?」
「知ってるかマイカ。日本にはな、『バレなきゃ犯罪じゃないんですよ』っていう名言があるんだよ。それに、いきなりこの城から電気、ガス、水道の三つが無くなったら、かなり不便になるぞ。……もっとも、別にお前らからしたら今までの生活に戻るだけだし、大した問題じゃないか」
そう言うと、マイカは最初こそ微妙そうな顔をしていたものの、徐々に焦った表情になり……最後には、
「よくよく考えたら、地球から見たらここは異世界なんだし、日本の法律なんて関係ないよね!」
「別に無理して、マイカの考える“国王としての在り方”を変える必要はないんだぞ。今回の件に関しては、全面的に俺が悪いしな」
「ごめんなさい! 私が全面的に悪かったですから、この宮殿内のインフラ関係はこのままでお願いします!」
その謝罪を聞きながら、俺は心の中で“共犯がまた一人増えたな”なんて考えていると――
何やらいいことを思いついたと言わんばかりの顔をしたミナが、口を開いた。
「この前まで、貴族の方々が多く住んでいた高級住宅街は、今どうなっているんですか?」
「あそこなら、今は完全にゴーストタウン状態だぞ。一応、建物全部に結界は張ってあるから、無法者の溜まり場にはなってないけどな」
ちなみに高級住宅街と言っても、近くに高級レストランがあるわけでもなく、一定の空きスペース――つまり自然があるだけ。
だから本当に、今は誰も近づいていないらしい。
「でしたら、そこにある家を全て排除して、新しく温水プールと銭湯を作るのはどうでしょうか」
「まあ確かに、住宅一戸一戸がデカいから、全部無くせばかなりの敷地面積は確保できるだろうけど……理由は?」
「先ほどのソウジ様の説明ですと、電気、ガス、水道は全て無料で使えるとのことでしたので、こちら側は主に従業員の給料を出すだけで済みます。結果、かなりの黒字が見込めます」
なるほど。
建物自体は俺が作ればタダ。清掃も魔法でどうとでもなる。
金が掛かるとすれば……プール用の塩素くらいか。
……お姫様、考えることがエグいな。
「プールを作るなら、私、浮き輪とかビーチボールで遊んでみたいな~。あ~、でもまずは新しい水着が欲しいかな。この世界にも水着はあるけど、ソウジ君の世界の物の方が可愛いの多いし、何より素材が断然良さそうだし」
「それでしたら、この世界には存在しない浮き輪やビーチボールはもちろん、ソウジ様の世界で売られている水着のデザインを、こちらの世界のデザイナーに売ることもできます。さらに、水着の材料などを私達経由で仕入れて服屋に高値で売れば、裕福層向けの水着販売も同時に行えます」
「……つまり、デザインは似ていても、片方はこっちの世界の材料で作った安い水着、もう片方は地球の材料で作った高級水着が売れるってわけか。しかも温水プールだから、売り上げに波はあっても一年中商売が出来る。冬は銭湯の売り上げを多く確保できる可能性もある、と」
それに水着って、毎年新しいデザインが出るから、一定数の売り上げは保証される。
「はい。さらに温水プールと銭湯を繋げることで、プールから上がった方々を自然にそちらへ誘導できます。もちろんプール側にも無料のシャワーは設置しますが、料金設定などでお得なプランを作れば、自然と流れてくれるかと」
「じゃあさ、じゃあさ。プールサイドに飲食店も出せるようにして、毎月一定金額を出店料として国に支払う仕組みにしない? 多分……というか、間違いなくプールなんて物を作れるのはソウジ君だけなんだから、お店を出す側としても悪くない話だと思うんだけど」
「敷地面積は余るほどあるし、プールと銭湯を一つずつ作るだけなら余裕だな。というか、それでもまだ空きスペースが出ると思うぞ」
従業員の雇用も増えるし、飲食店案は俺としてもかなりありがたい。
「でしたら、近くに少し小さめのプールと銭湯も作ってしまいませんか?」
「……そっちは料金設定を高めにして、実質金持ち用にするってことか?」
「そうした方が、貴族の方々が集中してしまい、一般の方が使えなくなる状況を防げますので」
珍しい施設が出来れば、人が集まる。
人が集まれば、金がモノを言う世界になる――間違いない。
「そうなると、二つの施設で差別化が必要だな。内装・外装とか、サービス内容で差を付ける感じか?」
「完全貸し切り制にしてしまうのはどうでしょう。こちらは最新のキッチン設備を完備して、利用者が自分で料理人を連れてくる形にすれば、文句も出にくいかと」
「……あとは適当に、銭湯の湯に回復魔法でも混ぜておけば、勝手に金持ち共が集まってくるだろ」
「でもそれって、毎日お湯を変えることにならない? その度に魔法を混ぜるのは大変じゃない?」
確かに俺の技術力じゃ無理だし、ティアに頼むにしても、毎日血を吸われてたら貧血で倒れる。
「じゃあ、俺が一度使った温泉の湯を“綺麗だった時間”まで戻すシステムでも作って、掃除魔法と一緒に設定しておくか。……自分達が使う時は、絶対に全部水を抜いて掃除してから入るけどな」
「……利用者にバレなければ大丈夫でしょうけど、ソウジ様って、たまに国王らしいというか……結構グレーゾーンな発想しますよね」
「ここが異世界とはいえ、地球のデザインを商品として売ろうとするお姫様に言われたくはないな。言っとくけど、これ完全に盗作だからな」
「とか言いつつ、『この世界なら地球の法律なんて関係ないし、ぼろ儲けだぜ!』とか思ってるんでしょ?」
ギクッ。
「……いや待て! さっきマイカも『日本の法律なんて関係ない』って言ってただろ! つまりお前も共犯だ!」
「だったら水着のデザイン云々を言い出したのはミナでしょ! 共犯どころか主犯じゃん!」
マイカと目を合わせ、お互い一度だけ頷く。
「「王族って、本当に考えることが汚いな(汚いね)」」
「なんで私だけ悪者なんですか⁉ お二人だって、さっきまで結構ノリノリだったじゃないですか‼」
……元が庶民同士だからか、ミナ達とはまた違った空気があって悪くない。
まあ誰が一番、なんて話じゃないけど。
――いや、俺が無意識に考えないようにしてるだけか。




