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【最強チート×重愛ハーレム】 最強チートも王女もメイドも美少女ハーレムもあるのに、異世界生活がハードモードすぎる――負けても迷っても、美少女たちは俺の隣を離れない  作者: ITIRiN
第16章:王の仮面と、間違った俺を褒めるユリー

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第196話:零/ZERO

「それでは早速、ソウジ様が出した答えを聞きましょうか」


「その前に一個だけ。ついさっき――


『今更そうやって素直に甘えてきたところで、もう今の私は完全に先生モードに入っているので何もしてあげません』


って言ってたのはどこの誰でしたっけ? 自分の記憶が正しければ、それを言った人と今俺のことをぎゅ~してくれてる人は同一人物だと思うんですけど」


事実、ミナの精神年齢は、自身の立ち位置が王女ということもあり、実年齢よりもかなり上である。


しかし最近は普通の女の子として過ごす時間が多いせいか、本人の意思とは関係なく、それが自然と逆転していることは珍しいことでもなんでもない。


そこに今回の一件である。


きっとリアをはじめとする周りの人達は皆、この一週間彼女にのし掛かっていたプレッシャーや精神的負担に気付きはしていたものの、誰一人としてその苦しみを100%理解することはできなかったであろう。


それに加えて、きっとこの小さな体では抑えきれない程、今すぐ自分がやりたいことや、今すぐ自分がしてあげたいことがあるはずだ。


少なくとも俺が同じ立場だったのならば、確実にそうなっている。


そんな背景があったからこそ今日のミナは、この短時間の間で王女様になったり、可愛い女の子になったり、ちょっとエッチで独占欲の強い女の子になったりしていたのだろう。


ここまで彼女のことを理解しているにも関わらず、まだ意地悪をするのはどうかと自分でも思うが、やはりやられた分はやり返さなければ気が済まないということでああ言ってみたものの……。


流石は本物のマリノ王国第一王女。


一度意識をそれに切り替えた以上、もうおふざけの時間はおしまいということらしい。


その証拠に、俺の膝の上から近くにあった椅子へと移動したミナからは、一切の感情の動きが見られないし、感じられない。


「では改めまして。まずは何故ソウジ様がレオンさんに対してあそこまでの怒りを覚え、死ぬギリギリまで痛めつけたのか。そんなあなたらしからぬ行為を行った理由を聞きましょうか」


「単純にアイツのことが面白くなかったから」


ついでに、レオンの奴のせいで久々のミナとの時間を邪魔されているこの状況も面白くない。


「もう一度聞きます。何故ソウジ様はレオンさんに対して、らしくもない対応を取られたのでしょうか?」


「……ただこの世界で普通に生活してるだけでも、勝手に俺に対する周囲の期待が上がり続けるし、何か少しでも行動を起こせばそれは更に膨れ上がる。こっちの気持ちなんてお構いなしに」


「………………」


ここで普段のミナならば、これ以上は言わせまいとどうにかして俺の発言を遮ってくるし、優しく抱きしめてくれると同時に頭を撫でながら、


『ソウジ様は本当によく頑張っています。だからもう今日は、そんなに苦しそうな表情を浮かべながら無理に頑張ろうとしなくていいですよ。また明日から二人で一緒に頑張っていきましょう』


と言ってくれるであろう。


しかし今日のミナに、そんな過保護な気配は皆無。


正真正銘、何もかもが王族教育中のそれである。


「今も尚、そんな生き地獄に閉じ込められているという事実から目を逸らし続けることで、何とか平常心を保っているっていうのに」


「………………」


「規模は違えど俺と同じ立場にあったはずのアイツは、何の迷いもなく自分の気持ちを優先した。その事実がどうしても許せなかったから……です」


「………………」


* * *


side:ミナ


私が出した宿題に対するソウジ様のこの回答。


それ自体には嘘偽りのない本心みたいですし、なんの問題もないのですが。


先程の質疑応答の時もそうですが、こっちも0点。


0点なんですけれども、それは評価対象の精神年齢が一定の基準を上回っていればの話であって――


「いいですか、ソウジ様?」


先程までの王族教育モードに若干の甘やかしモードを交えた状態でそう声を掛けた瞬間、不安げだったソウジ様の表情が一転、明らかな安堵のそれへと変化した。


とてもこの一週間、ずっと周囲の人間を誤魔化し続けてみせた方と同一人物とは思えませんね。


「今回あなたが国民の皆様を相手に通してみせた、国家公認の成人向け店舗の正式運営というあまりにも無謀な提案。これをソウジ様一人で行ってみせたことは、確かに凄いことです」


きっとこの世界で生まれ育った多くの人は、今の私の発言を聞いたらこう思うことでしょう。


“凄いなんてレベルではない”


“今日という日は、間違いなく歴史に残る一日であった”


と。


しかしここで、ソウジ様が成し遂げてみせたことの凄さを一から十まで全て教えてしまえば、今以上に間違った道へと進んでしまうことは確実。


だからこそ私は、ここであなたのことを褒めて差し上げたりはしません。


「凄いことですが、そうやって何か凄いことをし続けなくとも、私達は既にソウジ様の良いところも、凄いところも沢山知っています。このお城に住んでいる方々は皆、あなたのどんな小さな成長も、大きな成長も、例外なく見逃すことはありません」


「………………」


「ですからソウジ様が、無理に何かを成し遂げ続けようと頑張る必要はないんですよ」


「………………」


* * *


side:―――


ソウジとミナ。


この二人が部屋へと入っていってから、そろそろ一時間ほどが経つだろうか。


その間ずっと扉の横で背を壁へと預け、腕を組みながら目を瞑り続けていたユリーは、何かを察したのかスッと目を開き、静かに姿勢を正した。


直後、彼女の隣にある扉が開かれ、そこからエナジードリンクの缶に刺さっているストローを咥えた状態のソウジが現れた。


そして彼は目線だけを左へと動かし、


「人のイチャイチャを盗み見とは、いい趣味だな」


「王女とはいえ、やはりミナさんも年下の女の子ですのね」


自分が睨みつけるかのような目で見られているにも関わらず、どこ吹く風といった様子でそう言葉を返すユリー。


そのまま続けて、


「本当は誰よりも、ソウジ様が他人に甘えたかったでしょうに」


「………………」


「ミナさんからは、今回の一件に関して絶対に褒めて差し上げないという強い意志を感じました。ですが同時に、何か他の件で沢山褒めていただけることを、本能的に察していたでしょうに」


「………………」


「あなたは自らの選択でそれを捨て、この一週間で傷付いた心を、ぽっかりと空いてしまった心の穴を埋めてほしいというミナさんのお気持ちを優先された」


「………………」


「ご自分はまだ、期待していたものを何一つ手に入れられていないというのに」


「………………」


「今回の一件、彼女同様、確かに凄いことだとは認めます。誰よりもソウジ様の頑張りを間近で見て、直接肌で感じ、唯一最初から最後まであなたの表も裏も関係なく協力させていただいた“わたくし”が言うのです。どうぞ自信をお持ちください」


「………………」


「ですが、それを手放しで褒めて差し上げるのは間違っているというこのお考え。私も同感です。それをしてしまえば、誤った認識をしたソウジ様がまた同じようなことをしようと、間違った方向への努力をされることは明白ですからね」


「………………」


ここまでユリーの言葉に対して何一つ納得はいっていないものの、それが正しいということはちゃんと頭では理解しているらしく、ずっとだんまりを決め込んでいるソウジ。


そんな目の前の男に自身の一切を悟らせることなく、ユリーはつま先立ちになり、正面から優しく抱きついた。


誇張なしに今のソウジに勝てる人間はかなり限られているし、それは自他共に認める事実である。


だからであろう。


たった今自分の身に起こったことを脳が処理しきれず、驚きのあまり手に持っていたエナジードリンクの缶を床へと落としてしまった。


しかし、そのことに対して誰かの反応が返ってくることはない。


この場にいる二人に聞こえているのは、お互いの呼吸音と、床にこぼれた炭酸の泡が弾ける音のみ。


「でも私だけは、その間違った頑張りを褒めて差し上げます。もちろん今日だけではなく、これからもずっとです。たとえ世界中がソウジ様の頑張りを否定したとしても、私だけは絶対に肯定して差し上げます」


先程までの発言とは真逆なそれと、光が消えつつも相変わらず美しい二つの瞳。


「俺の知らないところで、お母さんにでも何か言われたか?」


普通はここで何かしらの反応や行動を起こしそうなものだが、どうせ誰かに何かを言われたのであろうと考えたソウジは、ただただ冷静にそう返す。


それと同じタイミングで、完全に輝きを失った両目に新しく宿された、怪しくも綺麗に煌めく何か。


ユリーが正面から抱きしめている以上、ソウジが彼女の目の変化に気付くことはできない。


その状況を理解しているからであろう。


ユリーはソウジの首に回していた自身の両腕を解き、そのまま互いの体を離す流れで、それぞれが己の考えのもと目と目を合わせる。


「―――――ッ⁉」


「別に。ただ“わたし”は今回の件を通して、二人っきりの時だけはユリー・シャーロットを辞めようって。これからはソウジ君の全てを肯定してあげる女の子になろうと思っただけだよ」

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