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世界最強の元一般人――異世界ラノベの主人公に憧れた俺、最強でも現実は甘くなかった  作者: ITIRiN
第13章:最強の“弱さ”と居場所

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第154話:希望を与えた者の責任

「それで、保護ってのはどの位の頻度で、主にどんな人達を保護してたんだ? 少なくともティアが言うには、うちで雇ってる七人にプラスして結構な数が誘拐されてきてたみたいなんだが」


「あのな、いくら戦力や情報力はこっちの方が上とはいえ、助けた後のことを考えるとどうしても時間が掛かるんだよ。つかこれでも病院の婆に運営費を毎月一定金額出す代わりに被害者の治療を任せるっていう契約を結んだり、孤児院の用心棒と、あんまり多くはないとはいえ毎月金をやる代わりに子供を引き取ってもらうよう交渉したりして、最初に比べれば助けられた人数はかなり増えたんだからな」


最初から被害者全員を助けるなんて無理なことは分かっているし、チート持ちの俺ですら助けること自体は簡単でも、その後のことを考えると絶対に不可能なので、特に文句を言う気はなかったのだが、二代目の言っていることとマイカ達の置かれていた状況が明らかに噛み合わなかったため、若干キレ気味に


「ああ゛っ? じゃあなんで孤児院のメンバーだった五人が誘拐されてんだよ。お前ら本当に仕事してたのか?」


「……あの時は丁度数日前から気になる情報が俺の耳に入ってきてて……その~、何と言うか」


「用心棒の人員をその気になる情報とやらに割いてたせいで隙を突かれたってか?」


「割いたっていうか、用心棒の人員を一時的に見習い的な奴らで総入れ替えしたら――――ッ⁉」


全部聞かずともこいつの言いたいことが分かった俺は、一切の気配を消して二代目の背後に転移し、目の前にある強化済みのテーブルに向かって思いっきり頭を蹴り飛ばすと前のめりに倒れたので、そのまま自分の右足で踏みつけながら


「お前さあ、いったい自分が何したか分かってんの?」


「グッ……ゥンン゛!」


「誰が抵抗しろっつったよ? 勝手に起き上がろうとしてんじゃねえっ、よ‼」


最初からこの男が降参なんてしていなかったどころか、あのくらいの殺気なら全然余裕だったのは分かっていたので、今回はそれの倍以上を出してみたのだが、どうやらまだまだ余裕そうなのでもう気絶したらしたで無理やり起こせばいいやと調節することを放棄した俺は、顔面の骨をグチャグチャにする勢いで踏みつけると今度は大人しくなった……けど同時に耳が聞こえなくなってしまったので、仕方なくティアがいつも使っている人の心を読む魔法を発動させ


「初代が何を思って人助けをするようになったとか目的がどうとかは知らねえけどよ、テメェがした約束なら何が何でも自分達で守り通すのが筋ってもんだろうが!」


『それくらい分かってる。だからあの子達が攫われたって院長から聞いた時、俺が直接宮殿に乗り込んで五人を連れ戻そうとしたら――――』


「無傷で連れ戻せればそれでいいって問題じゃねえだろうが! テメェに協力することに決めた孤児院の院長さんや職員の人達は、子供達を守り切れる自信がないから、それで少しでもみんなが安心して生活できるならって気持ちがあったからこそ協力することにしたんじゃねえのかよ‼」


『ふん。この世の中結果さえ良ければそれでいいし、もし何か失敗したとしても、その失敗を埋めるほどのことをやってみせれば±0どころか、上手くいけば上手くいくほどプラスが大きくなるんだから何の問題もないだろ? それにあの計画が成功していれば、一生分のマイナスを埋めるだけのプラスが手に入る予定だったんだ。少しくらいの犠牲どうってことねえだろうが』


「確かにお前の考えは一理あるし、状況によっては俺も同じことを思うかもしれない。でも今回の失態に関しては別だ! 昨日まであった安心感という当たり前が一回でも崩れた時点で±どうこうじゃなくて無になってんだよ‼ それをプラスにする自信があっただ? 笑わせんじゃねえぞ‼ どこの世界に信頼していた用心棒が全く役に立たなかったどころか、自分の大切な子供達を誘拐されただけでなく、無理やり犯されてたかもしれないってのに『こっちの不手際でちょっとあれだったけど無傷で助けてきてやったからこれからも信用してね』って言われて信用する奴がいんだ、おい‼ んな奴いるわけねえだろうが‼」


『吸血姫の婆が初めて気に入った男っていうからどんなもんかと思えば、とんでもねえ化け物じゃねえか。対面した瞬間に絶望的な力の差を感じさせてきた兄貴とあの婆の方が100倍マシだったぜ。誰が初見でこんな百面相みたいな奴の真意を見抜けるってんだ、ふざけやがって』


吸血姫の婆ってのが誰のことを言っているのかは知らないが、とりあえず人に対してとても失礼な言葉を最後に気絶した二代目の頭から自分の右足をどけた俺は、耳が戻るのを待ってから病院に設置しておいた固定電話に繋ぎ


「あ、私ソウジ・ヴァイスシュタインですけども……じゃあちょっと代わってもらってもいいですか?」


「今そっちに誰か病人とかっているのか?」


「いねえなら今から救急患者を一人連れて行くから準備して待っててくれ」


「容体? んー、顔面複雑骨折と大量出血。あと気絶」


「そんなにヤバいならリアに頼め? 頼めない事情があるから病院に連れてくって言ってんだろうが」


「頼みを聞いてやる代わりにその患者を新人研修に使う? 勝手にしろ」


「んじゃあ今から10秒以内に直接転移するからよろしく」


そう言うと電話の相手である婆ちゃんは緊張感の欠片もないいつも通りの声で『はいはい』と返してきたので一旦通話を終了し、二代目が着ている高そうな服の襟を掴んだと同時に病院の出入り口近くに転移した。


* * *


「こんにちわー。ってことで救急患者の治療をお願いします」


今の二代目の容体だけを見れば重症どころか完全に死にかけの状態なのだが、隣にティアがいない時点で少しだけ強制的に止めに入る設定を弄ったとはいえ模擬戦時に使っている結界を張っていたので、実は今すぐに治療を施さなければ死ぬとかはない。


ということでお土産を持ってきた親戚の人みたいなノリでそう言いながら二代目を引きずって歩いていくと、診察室近くに立っていた婆ちゃんと三人の新人の子達が見えたため、気を利かせた俺はワザとそれを彼女達の足元に投げ飛ばし


「んじゃ、あとはよろしく~」


「「「――――――ッ⁉」」」


「なにグズグズしてんのさ‼ ビビってる暇があったらサッサと治療室に運んで、まずは容体の確認と止血をする‼」


「「「………………」」」


そんなに怯えた表情でこっちを見なくてもよくない?


「私達医者が死にかけの患者を治療する=誰かが目の前にいる人を殺そうとしたなんてのは戦場じゃ当たり前で、その両方を助けるのが私達の仕事なんだから、それが嫌なら今すぐ辞めんさい‼ そうじゃないなら何時までもソウちゃんの顔なんて見てないで動く‼」


「「「………はっ、はい‼」」」


まだ顔が強張っていたり動揺していたりするものの、一人ひとり医者としての信念があるのか、声を震わせながらも大きい声でそう返事をし、三人はぎこちないながらも二代目を治療室へと運んで行った。


そしてその様子に満足したらしい婆ちゃんは、さっきの子達に向けていたものより更に厳しい視線を俺に向けながら腕を組み


「それで、どうやったらソウちゃんが血塗れのレオンを引きずってうちにくることになるのさ? 事の次第によってはいくら雇われの身とはいえ今後の付き合い方を考え直させてもらうよ」


「ちょっとどっちが上かヤクザ流で教えてやっただけだ」


「………………」


「チッ、一度は孤児院の人達に希望を持たせたのに、それを個人の感情一つでどん底まで叩き落としたってのがどうしても気に食わなかったんだよ。でもさっき言ったことも嘘じゃないからな」


「確かにあの件は私も納得いってないし、ソウちゃんからしてみれば尚更怒りたくなるのも分かるけど……あれはやりすぎだ。いくらレオンが並大抵の吸血鬼とは比べ物にならないくらい強いとはいえ、あそこまでボコボコにされちゃあ喋れないのは勿論のこと、魔法で心を読もうとしても途切れ途切れで何を言ってるか分からなかったはずだよ……と言いたいところだけど、どうやら回復魔法同様、何も考えずにやったら出来ちゃったみたいだね。まったく……よく言えば固定観念がない、悪く言えば無知だからこそ出来る力技とはいえ面白い方法を見つけたものだよ」


褒められているのか呆れられているのかちょっと微妙なところだが、そんなことよりもこっちとしてはヴァイスシュタイン家との契約について考え直す云々の話の方が重要なので、それについて聞こうとした瞬間、治療室の扉が開き、中からさっきの三人のうちの一人が出てきて


「先生。一応事前に指示されていたところまでは終わりましたけど、この後はどうすればいいですか?」


「うん。それじゃあここからは私がやるからアンタ達三人はそのまま見学」


「でしたら既に他の二人が魔道具などの準備を進めていますのですぐに始められるかと」


最初はあんなに動揺してたってのに婆ちゃんが雇っただけあって覚悟さえ決まってしまえばそれなりにってことか。


なんて呑気に感心していたら婆ちゃんが治療室の中へと消えていってしまったので、仕方なく近くにあったソファーに座り、大学用のPCで卒研の中間発表に向けてGW期間中にちょくちょく進めていたレジメの続きをやることにした。

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