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世界最強の元一般人――異世界ラノベの主人公に憧れた俺、最強でも現実は甘くなかった  作者: ITIRiN
第14章:

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第152話:裏の仕事

最後の休日をお母さんと過ごした次の日。


今回は食後のお茶を飲んでいた時とはいえ、二日連続でお母さんがうちのリビングに来たので「今度は何だよ」とか思っていると、流石にミナの料理下手をこのまま放置しておくわけにはいかないと思ったらしく、お迎えに来たらしい。


しかし、自称ハンバーグことただの肉の塊を作ってみせたミナちゃんは、好きな子が自分の為に頑張って作ってくれた料理を不味いとは世界がひっくり返っても言う気がないので、適当に話を合わせながら、褒められる部分はちゃんと褒めてあげるという形を俺が取ったせいか、自信満々に実家へと帰って行った。


まあ、だからと言って特に何かが変わるわけでもなく、いつも通りお茶を飲み終わった人から順番に自分の仕事へと向かって行ったので、俺もマイカと一緒に仕事部屋へと移動し、一時間ほど報告書と睨めっこしてから、とある場所へと一人で向かった。


* * *


「たくっ、遠すぎだろ。誰だよこんな国の端っこに作ったアホは」


なんて独り言を言いたくもなるほど城から今回の目的地まで歩かされた俺は、目の前にある見た目だけでいえば大きめの宿屋に見えなくもない建物に入ろうとしたところ、建物の影や近くの森の中に隠れていたらしいガラの悪い男共に囲まれてしまい、その内の一人が近所の優しいお兄さんみたいな感じで声をかけてきた。


「ヴァイスシュタインの国王様であられるお方が、こんな辺境のボロ宿屋へなんの御用です?」


「うーん、じゃあ家出。ってことで今晩ここに泊めてよ」


「家出……ですか。まあ陛下程のお立場にもなると色々と悩みもあるでしょうし、家出の一つや二つしたくなるのも分かりますけどねぇ。なにも貴方みたいなお金持ちがこんな所にこなくてもいいんじゃないですか?」


「えっ、もしかしてここってそんなに安いの? おっかしいなー、雇い主の俺が言うのもなんだけどうちの騎士団の給料って結構良いはずなんだけど。ってかここって本当に宿屋? 俺の知ってる限りではこの建物に入って行った客は全員一、二時間くらいで出てくるのばっかりだったんだけど。ってかみんなは童○? ああ、別に答えなくていいよ。普通に知りたくないし」


さて、ここからは童○の人はそのまま、そうじゃない人は童○の気持ちで聞いてほしいのだが。


もし自分が一週間後に戦場へ、しかも最前線に行くことが決まったとして、それまでは準備期間ということで出発日までは毎日行う軽い模擬戦以外は自由時間とされていた場合、お前なら何をする?


荷物や武器の準備を整える。

出来るだけ多くの時間を家族と過ごす。

万が一のことを考えて家族に向けた遺書を書く。

美味しいものを一杯食べる……などなど、人によって色々あるだろうけども……


普通に一回くらい女の子のおっ――揉んでみたくね?

フ――されてみたくね?

セッ――してみたくね?


っていうか、ぶっちゃけた話、家族だなんだよりも普通にこっちの方が魅力的じゃん?


はい、そこのお前!

今、己の欲望よりも家族の方が大事だとか思ったでしょ?


いやいやいや、なわけ。


もし自分が同じ状況に立たされたら99.99%の確率で己の欲望を優先するからね。


俺とか勝ち確なのを分かってて宣戦布告した張本人だけど、万が一死んだらとか、何百何千何万という数の命を預かっている者としての不安を少しでも紛らわせる為に、一週間毎日四人のうちの誰かと一緒に寝てたり、セッ――してたもん。


しかもセッ――って相手の温もりとか気配をダイレクトに感じられるから、一時的とはいえ凄く落ち着くし、マジで依存症になる人の気持ちが分からないでもなかったわ。


まあ流石にこれら二つは、相手の気持ちだったり何だったりが関係してくるのは勿論、できるだけ己の欲望を満たすためではなく、最初から最後まで愛し合う者同士の行為になるよう細心の注意を払ったつもりではある。


……あるだけで、一人になった時に訪れるあの罪悪感や自分に対する嫌悪感は、もう二度と味わいたくないと思わされた程のものでもあった。


………あの子達には全部バレていたっぽいけど。


「んでさ、相手との関係はどうであれそういった行為をする相手がいる奴は、同意さえ取れてしまえばスグにでもやろうと思えばできるけど、そうじゃない奴らもいるわけじゃん。でもそんな奴らを主なターゲットにしている店が自国にあったとしたら……どうよ? ちゃんとルールを守ること前提だけど、金さえ払えばセッ――できるんだぜ。普通に行きたくね?」


「ここまでの陛下のお話を聞かせていただいての感想としまして……確かに貴方の仰る通りだと私は思いますし、それは何も騎士団の方々だけではなくこの国の国民にも当てはまることですので、そんなお店がもしあったのならばかなり儲かるでしょうね」


「んでしょ。しかもその店のターゲットは男だけじゃなく女もっていう経営方針だったとしたら……も~うぼろ儲けだと思わない?」


「言いたいことは分かりますが、それはちょっと難しいんじゃないですか? 国によっては正式に娼館を営業させている場所もありますが、どこも庶民が軽々と手を出せるような所ではないようですし、そんな死ぬことに賭けて今後の生活費をそこに注ぎ込むような人は中々いないと思いますけどね」


「ところがなんと、俺の目の前にある娼館はどうやら少なくとも二つのプランを用意してるみたいでな。一つは娼館の中にある個室で二人っきりになり色々するプラン。そしてもう一つは街中で従業員がキャッチをし、営業が成功し次第、人目のつきにくい建物の影などに移動し……というプラン。しかもなんとこちらのプランは最初に言ったものより格段に安い値段設定となっているときたもんだ。……これでもまだ金額が云々という理由で否定するのか?」


こちらが目の前にある建物はホテルなどではなく娼館だとハッキリ言ったことに加え、自分達の商売方法までもがバレているともなれば、俺のことを囲っている怖いお兄さん方が黙っているわけもなく、それぞれ隠し持っている武器等を出そうとした瞬間。


それを察したらしい……えーと、そういえばさっきからずっと喋ってたけどコイツの名前ってなんだ? ってか何て呼べばいいんだろ。


………面倒くさいから組長でいいや。


ということで気を取り直して。


その組長が周りにいる子分共とは明らかに違う重みのある独特のオーラを出した途端、それがコイツの怒った時の特徴なのか、武器を取り出そうとしていた動きがピタリと止まったどころか、全員一斉に姿勢をピシッと正しだした。


そしてその組長さんはというと更に独特のオーラを強めていき、気付けば本物のヤクザみたいな風格を纏った一人の男が出来上がっていた。いや、本物のヤクザとか会ったことねえから、どんなのかとか知らねえけど。


とか何とか思っていたら、雰囲気だけではなく、完全にそっち系の人みたいな声で


「今のは、アンタに対するコイツらの不手際をちゃんと教育できていなかった俺の責任だ。だからもしアンタが不敬罪だの何だのって言うなら、俺の首一つで今回は勘弁してくれ」


「俺の性格を知ってて本性を出してきたんだろうけど、ここまで堂々としてるってことは少なくともお前には信用されていると考えていいのか? それともこっちが何か不審な動きを見せた瞬間、娼館の中で息を潜めて待機している暗殺部隊みたいな奴らが制圧しに掛かるから余裕だし~って感じか?」


「今まで色んな方法で国内外に向けてアンタの恐ろしさを思い知らせただけでなく、その張本人とこうやって対峙して尚そんな幸せな発想ができるのは、自分と実力差がありすぎるか経験不足のせいでちゃんと理解できていない奴だけだ。………こんな現在進行形で外で元気よく遊んでるただのガキみたいな雰囲気しか感じられない男が近くにいて、ビビらずにいられるかってんだ」


えっ、今の俺ってそんな雰囲気を纏ってんの?


実はここの人達とは仲良くしたいっていう理由もあってずっと普段通りのテンションで喋ってたんだけど、なんか未知の男みたいな認識をしてくれてるみたいだし、このまま黙っとこ。

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