崖へ④
「た、たまたま先に着いたからって調子に乗らないでくれる?今回は手を抜いてあげてただけなんだから」
腕を組み、威嚇する様に言い放つ。
その後もブツブツ言いながら葉っぱを取っている。
真剣勝負の筈なのになんで手を抜くんだろうとカシムは疑問に思った。
しかし、考えてもわからないものは気にしない事にした。
今はこの競争に勝利して仲間を増やすのが先決である。
軽く水分補給と休憩を挟んだところで、審判が再び前に出てきた。
「第二回戦、ルールは飛行若しくは浮遊によって滞空時間を競ってもらいます」
審判が言うには、第一回戦で会得した時間を一時間滞空する毎に一秒減らす事が出来る。
どちらかが地面に落下したら、残っている方が三十秒マイナス。
ただし、道具や乗り物は使用不可で自分の能力のみ有効である。
つまり、第一回戦での会得時間が一分だと仮定して、五時間滞空で勝利した場合、会得時間は二十五秒となる。
時間数が少ない方が勝率が高くなる為、ここは是非ともおさえたいところだ。
実際のところ、二人の時間数はそこまで離れているわけでも無いので、十分巻き返しが出来る範囲内だ。
「私、一日以上は滞空する事が出来るの。悪魔族如きにそんな事が出来るのかしら」
「そうか」
族長の挑発に一切乗らない様子を見て、審判はヒヤヒヤしながら笛を吹く準備をする。
「そ、それでは、位置について……!よーい………!」
ピィィィィィィイイイイイ!!!
二人とも同時に飛び上がる。
族長は翼で、カシムは魔法で宙に浮くのを維持している。
最初は歓声を上げて見ていた鳥人達は五分ほどすると別のところへ移動し始めた。
気付けばリリアムと審判のみが競争の行く末を見守っている状況である。
リリアムは審判に近付いて話しかけた。
「あの、どうして皆さん何処かへ行ってしまったんですか?」
「ああ、君は知らないのか。第二回戦は地味だからね。結果さえ知れれば良いやという人が殆どなんだよ」
「審判さんも決着がつくまで見てるんですか?」
「僕はもう少ししたら交代が来るからその後は見ないな。こればっかりは見てても退屈だしね」
成る程と思い、審判の交代が来たタイミングで少女も移動を始める。
しかし、崖まできたが、飛行系魔法は使えない為どうしたもんかと考え込む事になってしまった。
さっきの審判に街に連れて行って貰えば良かったと少しだけ悔やむ。
チラリと競争中の二人を見る。
何やら喋っているが、自分のところまでは聞こえない。
とりあえず身体強化を使って気合いで街に辿り着こうと思い立ったその時、背後に気配を感じた。
もしもの事を考え攻撃準備をして振り返ると、そこには族長の元まで案内してくれた鳥人がニコニコしながら話しかけてきた。
「君、あそこで競争してる男の連れだったよね?下に美味しいものがあるからくれば?………あ、そうか!人間だから飛べないのか!!不便だねー」
などと言いながら、リリアムの返答も聞かずに抱き上げて飛び上がる。
咄嗟の事でまた悲鳴をあげてしまったのは言うまでもない。




