崖へ②
「そこの者、名前は何て言うのかしら?」
「カシムだ、こっちはリリアム」
「カシム………ああ〜、元々凶暴だったのに人間なんかに手懐けられちゃってるって噂の、あのカシムね」
族長は足を組み、髪の毛を弄りながらニヤニヤしている。
他の鳥人達も笑いを堪えている様だ。
「カシム、あなた魔王になりたいだなんて本当?あんなリスクしかないもの、バカしかなりたいなんて思わないわ」
「どう捉えてもらおうとも構わない。お前達はどうやったら仲間になってくれるんだ?」
あくまでも真正面からの態度に少し面を食らう。
「そうねぇ……、バカの仲間になんてなりたくないけど………どうしてもっていうなら鳥人流の力比べに勝てたのなら良いわよ。但し、あなたが負けたら一生私達のオモチャになってもらうけど、それでも良いかしら?」
明らかに分が悪い。
少女は待ったをかけようとしたが、カシムは承諾してしまった。
それを聞くや否や、先程の鳥人の男は勢い良く外に飛び出し叫んだ。
「みんなー!!聞いてくれー!!力比べが始まるぞー!!祭りだぁぁぁあ!!!!」
他の鳥人達から歓声が起こる。
店を営んでいる者はひと稼ぎしようと飲み物や食べ物の準備を、それ以外の者はまた別の者に触れ回った。
周りの雰囲気に圧倒され、目をパチクリする。
族長に何がどうなったいるのか聞こうとするが、いつの間にか族長はいなくなっていた。
「カシムとやら、力比べの準備をしているのでしばし待て」
護衛の一人から簡素な説明を受け、その場で待つ。
しかし、リリアムは外の様子が気になりウロウロしている。
行きたいけど、飛ぶ事が出来ないので物理的に行けない。
かといって、これから力比べをするカシムに頼むのもはばかられる。
結果的に外を見たり、カシムを見たり、忙しない状態になっていた。
そこでカシムは準備が整ったら教えてもらえる様に護衛に一声掛け、少女を抱いて飛び立った。
彼女は飛ぶ感覚にまだ慣れていないので服にしがみついている。
外から眺めると、元々賑やかだったのが更に騒がしくなっていた。
売り子も空を行き交っている。
カシム達のところにも来たので、肉串を注文し購入。
一口食べた瞬間、肉汁がジュワッと染み出し、口いっぱいに広がった。
少女から笑みが溢れる。
他にも甘味や魚等、沢山の飲食物が売り買いされていた。
誰もがはしゃいでいる。
鳥人の感覚では力比べはスポーツ競技の様なものなのだ。
滅多に開催されないので、始まった時のワクワクドキドキする感じがたまらないらしい。
賭けの対象としてもみられるので、一攫千金を狙った大人達も目をギラギラさせていた。
それからほどなくして、カシムは護衛に呼ばれた。




