決着①
呪い。
この世界では禁忌として扱われている。
使用する事も解呪する事も非常に難しく、一度かかったら最後、二度と元の生活には戻れないという。
そんな呪いを使いたいと少女は笑顔を浮かべながらカシムに伝えた。
元々呪いと魔法は似ていそうで全く別物である。
しかし、魔法に特化している者なら出来るかもしれないと思ったのだ。
だが、彼は呪いとはどういうものなのか知らない。
リリアムから説明を受けたがあまりピンと来なかった。
とりあえず、彼女のいう呪いになるかはわからないが、伝えられた通りにしてみる事にした。
「お前、名はなんという?」
「は?前にも言ったじゃない。チネハよ」
そうか……と言い、名前を媒介に魔力を手元に集め、チネハの方へかざす。
少しすると男の周囲はドロドロとした薄暗い紫の影に覆われた。
「な、何よこれ!!何してるのよっ!?」
堪らず声を上げる。
その影はまるで生きているかのように蠢く。
そしてそれは男の体内に吸収され消えた。
成功していようがいまいが視覚効果はバッチリである。
あとは、何をしたかは自信ありげに伝えてあげるだけ。
「……カシムはね、あなたに呪いをかけたのよ、とびきり凄い呪いをね」
「呪い?!そんなことカシムちゃんに出来るわけないじゃない!!」
「名前……それさえわかればカシムは出来ちゃうのよ。嘘だと思うなら試してみればいいじゃない」
少女はニヤッと笑う。
悪意しか感じない。
その姿にチネハはゾッとする。
これはもしかしたらひょっとして本当に呪いがかかったのでは……?
「い、一体どんな呪いをかけたのよ!」
冷や汗が出る。
聞きたくないけど、聞きたい呪いの効果。
男は酷く動揺している。
それを見て、クスッと笑う。
今すごく悪役になった気分。
「呪いの効果はね………」
チネハはごくりと唾を飲み込む。
「あなたは死ぬまで善行しか出来なくなる。破れば寿命が縮まり、様々な幻覚が見えて、発狂しながら死ぬでしょうね」
勿論、ハッタリなのかもしれない。
呪いになってるのか、付与魔法に過ぎないのかはその時になってみないとわからないのだから。
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(じょ……冗談じゃないわ!)
チネハは少女から告げられた呪いについて心で悪態をつく。
呪いなんて、そんな事出来るわけがない。
長年生きてる自分だって呪いについては殆ど知らない。
それをあんな少女にわかるはずがない。
しかし呪いと思われるものをかけたのはカシムだ。
今回の戦いでわかった。
同等だと思っていたが、自分より何枚も上手である為、否定も出来ない。
何より呪いの効果が善行しないと発狂して死ぬだなんて意味がわからない。
試してみる?
いや、もし本当だったら効果が発動するだろう。
そうしたら自分は………でも……。
考えが逡巡し、やがてチネハは諦めたようにがっくりと項垂れた。




