驚愕②
まさか、黒幕の正体がゲルガじゃないなんて………。
水槽に浮かんでいる男であればまだ対処する方法があった。
大した魔力もないし、最悪力技でなんとか出来た。
だが、目の前の男から滲み出る感じは。
………魔族だ。
力も強ければ、自分の欲望に忠実だ。
少しでも本気を出されれば、この国ごと破壊されるであろう。
カシムは魔族であるが、少し変わっている。
欲望に忠実ではあるが、まだ理性的だ。
多分、人間の自分と一緒にいたせいであろう。
だが、こいつは違う。
欲望の為なら手段を選ばない。
自分さえ良ければ、それで良いのだ。
この男の気が変わる前に、対処せねば。
(でも一体どうしたら……)
二人のやり取りを見ながら思案する。
念話でカシムを呼ぶしかない。
リリアムは助けを求めようと念話をしようとする。
が、上手く魔力を飛ばせない。
焦りで冷や汗が出る。
少女のやろうとしていることに気付き、男がゆっくりと近付く。
ふと顔を上げると、男が覗き込む様にこちらを見ていた。
「念話は出来ないわよ。アタシのお楽しみが減っちゃうじゃない」
こちらの魂胆がバレてしまったか?
男にじっと見つめられ、硬直した。
すると男は、少女の顔を見て、ハッと気が付いた表情をする。
「あら?あなた。よくよく見たらカシムちゃんとこのお嬢ちゃんじゃない」
………っ!
カシムを知っているのか!
考えてみたら、魔王候補の一人である彼が有名なのは明白である。
だから、自分の事も知っているのだろう。
「ん〜、あなたと遊ぶのは少し面倒ねぇ。邪魔だから眠ってなさい」
「あ………」
額を指で突かれたと思ったら、抗え難い睡魔がリリアムを襲う。
ここで眠るわけにはいかないのに……!
そのまま深い眠りに落ちていく。
ソーシウスはその様子も見つめる事しか出来なかった。
今も手と足が震えて動けない。
助けてくれるものもここにはいない。
せめて、せめて目の前にいる少女だけでも助けなければ!
少年は男を視認しつつ、深呼吸をする。
落ち着け、落ち着け。
少女一人守れなくて、何が王だ!
自分を鼓舞する。
男が少女に興味を無くし、再び少年の方を向いた瞬間。
ソーシウスは目眩しをする為、辺りが白くなる程の光を放つ。
「何?!眩し……!」
相手が怯んでいるのを確認して、急いで少女を抱き、部屋から飛び出した。
とにかく、この場から逃げなければ。
身体強化魔法を自分に付与し、全速力で走り始めた。




