作戦①
ーー月が煌々と部屋を照らしている。
少年王は湯浴みを終え、自室のベッドへと寝転んだ。
天井を見つめながら、今日の出来事を振り返っていた。
朝は勉強、昼過ぎから謁見が5件、夕方から夜にかけて明日の打ち合わせ。
そういえば、自分に楯突いてきた少女がいた。
あんな事、初めて言われた。
その時はムカついたが、考えてみたらその通りだと思った。
段々と瞼が重くなってくる。
明日は自分の考えをゲルガに伝えてみようか。
この国の現状を自分の目で確かめたいと。
目が閉じられ眠りについたのも束の間、突然窓が開け放たれ、風が入り込む。
「なんだ!?」
唐突な風と音に驚き、ガバッと起き上がる。
見ると、窓際には何者かがちょこんと座っていた。
月明かりが逆光になり、姿がよく見えない。
「こんばんは、王様」
少女の透き通った声が耳に入った。
光に照らされ、長い髪が煌めいている。
まるで妖精の様だ。
それにしても、この声聞き覚えがある。
確か、昼間の………。
「ちょっと王様に聞きたい事があるんだけど、よろしいかしら?」
少女は窓際からベッドの方へふわりと近付く。
その姿は何故かとても神秘的に見えた。
まだ幼いというのに微かな色気を感じる。
少年は僅かに後退りをする。
こういう時は不審者として兵を呼ばなければならないと頭ではわかっているのに身体が言う事を聞かない。
少女がベッドに腰掛ける。
「そういえば、自己紹介は必要かしら?私はリリアムって言います。王様は?」
ずいっと顔を近づかれ、息を呑む。
年下なのに何故かドキドキする。
思わず顔を晒した。
「僕はソーシウスだ。聞きたい事とはなんだ?」
少女はニコリと笑い、ソーシウスの手を掴みベッドから降ろす。
思いもやらない行動に困惑する。
それを知ってか知らずか、リリアムは踊りは好き?と問いかける。
だが、問いかけたものの、王の返事も聞かずに胸元で両手を繋ぎ、ユラユラと一緒に揺れ始める。
小さく鼻歌も聞こえてきた。
「リ、リリアム……」
今までパーティ等で色んな女の子と踊ってきた。
正直、五月蝿いし、下手くそだしであまり良い思い出はない。
しかし、目の前の少女はどうだろう。
理知的であり、ミステリアスでもあり、少女らしい可愛らしさもある。
ふと、目が合った。
少女は目を細めて静かに笑った。