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吸血鬼の初まり〜???年〜

「すまないが……俺にはよくわからない。世界平和?それが俺にどう関係するんだ?」


「んー、そうね、関係はないわ。でも、キミに居場所を与えることはできる。それに、キミにもっと大きな力をあげるわ」


「力?」


「そう。もしキミに今よりも力があったら、ドナシアンを救えたかもしれないって言ったよね?」


 相変わらずの笑顔で、アナは話を続ける。


「それだけじゃない。誰もキミを傷つけないし、議会にだって抵抗することができる。そんな力を、キミにあげる。だから、カルディアを手伝ってほしいの」


 その提案は、ヴラドにとって悪いものではなかった。今以上の力を手にすることができれば、あの腐った議会など潰すことができるかもしれない。今のままでは物量的にヴラドが競り負ける。確実に潰せるのなら、この身がどうなろうが関係ない。


 しかし……ドナシアンはそれを望むだろうか?


「俺は……」


 ヴラドは俯いた。自分の欲と、ドナのための復讐。彼のためだと思っていても、それはきっと自分よがりの復讐だ。


「ドナシアンのことを考えてるの?そうね、彼はそんなこと望まないわね。でも、ドナシアンはもう死んでしまったの」


「死人に口無しってヤツだね!!」


 チェスが得意げに言った。


「少しは空気を読めよ、チェス」


 ラドスラフが呆れ顔で嗜める。チェスは首を傾げるだけで、どんな顔をしているのかはわからない。


「死んだからと言って、ないがしろにしていいわけではない」


 ヴラドの言葉に、他の三人は頷く。あくまでヴラドの意見を尊重しようとしているようだ。アナはニコリと微笑んで言った。


「いいよ!あたしたちはいつまでもキミを待ってる。何と言っても悠久の時を生きる吸血鬼だからね!キミの気持ちの整理ができるまで、強制はしない」


 その話はこれ以上続かなかった。三人とも何事もなかったかのように、ヴラドを迎え入れ、テーブルを囲んでお茶まで出してもてなした。アナのことを吸血鬼らしくないと思っていたヴラドだが、他の二人もそうだった。


「……あの、俺、こういうのはちょっと……」


 目の前に出されたものに、ヴラドは戸惑った。人間がこういうものを好んで口にすることは知っているが、一度も口にしたことはない。


「食べたことないの?これ、砂糖たっぷりでおいしのよ」


「ボクはもう少し砂糖がかかってる方が好きだなー」


 チェスが残念そうな声音で言う。小麦を練って砂糖をまぶして焼いたその焼き菓子を、ヴラドはなんと言うかわからないが、同行した議会の任務で人間の貴族たちが食べていたものに似ている。


「それで?お前はこれからどうする?議会に戻るんだろう?」


 ラドスラフが聞いてきた。ヴラドは答える。


「ああ。ドナは俺があそこでなじめるように手を尽くしてくれていた。まずそれに答えるのが筋だと思う。アンタたちのことも、まだ信用できないからな」


「議会はお前を受け入れてはくれないと思うぞ。その、なんだかって議会のヤツの兵を皆殺しにしたんだろう?」


 あの村で起きたことは、アナがほとんど見ていたそうだ。だからラドスラフもチェスも知っているようだった。ヴラドからすれば、見ていたのなら助けろよと思うところだ。


「まあ、そこまで強い相手じゃない。ただ単に歳食っただけの吸血鬼たちだ」


 ドナを殺した相手だ。死んで当然だと思った。気が付いたときには辺り一面血の海だった。一人を覗いて。それを伝えると、三人が手を止めた。


「一人生きてるってことだよね?」


 アナが確認するようにヴラドを見た。ヴラドは頷く。議会から飛び出してきたため、あの兵士がどうなったかはわからない。


「まずいわ。あの兵はあたしを見ている」


「どういうことだ?」


 ヴラドは怪訝な顔をする。それに、アナが険しい表情で答えた。


「キミはカルディアを捕らえるために、あの村へいったのよね?」


「ああ」


「あたしは、その情報をわざと流したの。最近、あたしたちのことを嗅ぎ回っている連中がいることに気付いていたからね。議会とは別で動いているということもわかっていたわ」


 議会はカルディアについて触れないようにしている、ということは、カルディアが独立するときに何かしらの契約があったのだろう。ヴラドたちの世代は、そのことを知らないから、議会がカルディアを恐れていると思っている。


「あたしが流した情報を信じて、あの村に来るやつが誰なのか見極めるために、あたしはあそこにいたの。でも、来たのはキミとドナシアンだった。しかも、キミたちは狙われているようだった」


 だからアナは、とっさに姿を現してヴラドに忠告した。攻撃を受けたヴラドが、そこにいた兵たちを倒すのを見て、その場を立ち去ったそうだ。ということは……


「ヴラドがカルディアと面識があると思われている、ということだな?」


 ラドスラフは難しい顔をして言った。確かに、あらかじめ兵が隠れていたことから、アナがヴラドの名を呼んだことも聞かれている可能性が高い。リオネルを問いつめるために生かして連れ帰った兵が、まさか仇となるとは思っていなかった。


「……議会にもどるよ」


 ヴラドはそれだけ言うと、一目散に小屋から出た。後ろでアナが何か言っているが、ヴラドの耳には届かない。










 日暮れ前。ヴラドが城に戻ると、兵士が数人待ち構えていた。みな一様に険しい表情を浮かべ、ヴラドに向かって毒を吐く。


「この裏切り者!!」


「議会に忠誠を誓っておいて、裏でカルディアと繋がっていたなんて!!」


「シルヴェストリの恥さらしが!!」


 やはり、そう言うことになっているようだ。ヴラドは抵抗するつもりはなかったため、おとなしく捕まった。その気になればいつでも逃げられる。

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