男の子の真実
最初は行き付けのショッピングセンターでお洋服を買って、その後髪を切って、最後に銭湯に行った。
その子はパパとお風呂に入った。
「ねぇ、ママあの子って」
「あの子はね、とても苦しい思いをしてきたの。だから秋花、優しくして上げて欲しい。」
「もちろん!優しくできるよ!!」
「ありがとう秋花……」
とても苦しい思いをしてきたのか……
お風呂から出たあとわたしたちはファミレスに行った。
「好きなもの頼んでいいからね」
髪を切ったその子は男の子だと分かった。
「これ……がいいです」
「うん、わかった。秋花は?」
「わたしも同じの!」
「わかった。」
ご飯を食べ始めてから、男の子は涙を流した
「どうした!?口に合わなかったかい!?」
パパは凄く心配してた。
「違うんです……こういうの……食べたことなくて……嬉しくて……」
「そうかそうか。ならこれからはたくさん食べさせてあげる。だから好きなだけ食べなさい」
パパのその言葉に男の子はもっと泣き出した。
ご飯を食べたあとわたしたちは病院に来ていた。
「パパどうして病院?」
「色々と調べなきゃいけないことがあってね。」
そう言って男の子と部屋の中へ入っていった。
「ママ」
「パパはねどうしてもあの男の子を助けたいのよ。」
「あの子に何があったの?」
「それは、パパから聞いてみて」
「……うん。」
しばらくしてパパだけが戻ってきた。
「パパ男の子は?」
「眠っているよ。」
「どうして?」
「調べなきゃいけないことがあるから。」
「そっか。ねぇ、パパあの子はどういう子なの?」
「そうだね、秋花にも分かるようにお話しないと。」
****
自分は、佐々木健一。
秋花の父親で児童相談所で仕事をしている。
その中で自分は虐待を受けている子の担当だ。
三ヵ月前から怪しいと近所から連絡がありその子の家に向かった。
家は結構大きい方だった。
インターフォンは鳴らしても鳴らなかったためドアをノックした。するとあの男の子が出てきた。
「……誰ですか…」
長く伸ばされたボサボサの髪、今にも骨が折れてしまいそうな細い体、そしてボロボロになった服。すぐに育児放棄だと分かった。
「悪い人じゃないよ。パパかママはいるかな?」
「パパなら……兄を連れてどこかに行きました……」
「ママは?」
「もうずっと帰ってきません……」
「ずっと1人なの?」
「……」
その子は頷いた。
「お名前は?」
首を横に振った。
「何歳?」
また、首を横に振った。
門の方に戻り表札を見た。
「……"朝倉"か……」
「おじさんも……お金取りに来たの……?」
「違うよ。君を助けに来たんだ。」
他のメンバーに家の中を見てもらった。
その間自分は男の子に色々聞いていた。
「じゃあ君は1度も名前で呼ばれたことがないんだ。」
「……うん。」
「ちなみにお兄さんの名前は?分かるかい?」
「"りゅう"っていってた」
話しててその子は自分の苗字すら知らなかったらしい。
「ありがとう。少しの間おじさんの家にこない?」
「え?」
「君くらいの娘がいるんだけどね、君みたいに大人しい子に育って欲しかったよ……」
「……」
「佐々木さん、この家ほとんど何も残ってません。」
「なに?」
「通帳やら印鑑やら大事なものは全部ないです。あるのはゴミくらい。」
「そうか、分かった。あとは上の奴らに任せよう。」
こうして、男の子は家へと連れて帰ることになった。