短い学園生活②
スキマ埋め合わせシリーズ第二弾
「例えばさ、この消ゴムが向こうの机に乗ったとするじゃん?」
「いきなりね」
ヒグラシが鳴き始める時間。
イデア王立アルティス魔法学園の教室にたむろする五人の姿があった。我らが主人公、リュウ・ブライトは嬉しそうにティナに話しかけたものの、彼女には軽くあしらわれてしまった。
「そうすると、俺はイクトからジュースを奢って貰えんだよ」
「変化球でした」
まさかのジュースだった。それを黙って聞いているマリーとアルは苦笑していた。
しかし、リュウの挑戦は簡単なことではない。両手で抱え込めるような範囲の空間に、消ゴムというバウンドに長けた物体を乗せなければならないのだ。その場のリュウ以外の全員は、不可能だと笑う。
「じゃあ、チャンスは三回にしよっか」
「僕の意見を無視して決めないでくださいマリー」
「よっしゃ!」
リュウは消しゴムを上手投げで机に向かわせた。しかし狙い通り机に乗ったものの、そのままバウンドして床に落ちてしまった。
「もっとこう、スッとやりなさいよスッと」
「俺が囲いを作ろう」
「直ぐにその防御魔法を解いてくださいよアル」
渋々、イクトの言う通りアルは防御魔法を解いた。目標の机の四辺をすべて塞いでいたそれは、ゴミ箱にごみくずを投げ入れることの再現しか成り立たないからだった。
「おりゃ!」
「下手くそ!」
ティナは、二投目の残念さに文句を吐き捨てた。今度は下手投げに変えたものの、結果として通りすぎてしまったのだ。
「くっそおおぉぉぉ!」
「わー消しゴム溶けちゃう!」
昂った感情から炎を呼び出したリュウは、ティナの水によって落ち着きを取り戻す。
「ラストチャンスなんだから慎重にね。要は乗ってから跳ねなければいいのよ」
「……ああ、なるほど。おっしゃ!」
気合いを入れ直して投げた。“何故か”炎を纏ったその消しゴムは、天を穿つ流星のように机に向かう。魔力と炎とを宿した消しゴムは、見事机をぶち抜いた。
「……ぶち抜いた?」
「まあ、乗ってから跳ねてはいませんね」
「綺麗だったね!」
「俺の消しゴム」
「ねえ、あそこ私の机なんだけど。ねえ、どうしてくれんの、ねえ」
「ジュースゲットだぜ!」
「ふざけんな!」
次に流星となったのはリュウの方だった。




