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第三十一章

彼がそのことをカイラに訊いたのは、すぐではなかった。


その夜でもなければ、翌朝でもない。翌朝のカイラは、あの稀な、内側から満ちた静けさをまとって家の中を歩いていた。そんな時に、あまりに直接な問いを差し込めば、せっかく得たあの落ち着きを壊すだけだと分かっていた。


訊いたのは、もう少しあとだった。


二日ほど経った夕方に近い時間。外の光は少しずつ灰色へ傾き始めていて、家の中は妙に静かだった。リラは窓辺に座り、針仕事をしていたが、実際には縫っているというより、布を手に持っている時間のほうが長かった。アヤノは卓で記録を整理していたが、頁をめくるたびに、必要より少し長く指を止めていた。カイラは火床の前に立ち、肉を返しながら、まるでそれが世界の不出来すべての責任を負っているかのような顔をしていた。


彼は近づき、柱へ肩を預けたまま、前置きなしに言った。


「このあいだ、俺は強すぎなかったか」


カイラはすぐには振り向かなかった。


ただ肉を一度返し、もう一度返し、それからようやく肩越しに彼を見た。


「あの夜のこと?」


「そうだ」


カイラは鼻を鳴らした。


苛立ちではない。


むしろ、少し呆れたみたいだった。


「それ、ずっと頭に入れてたの?」


「聞いてるだけだ」


そこで彼女はようやく火床から離れ、指先を腰のあたりの布で軽く拭いながら、彼の正面に来た。


「私はね」と彼女は言った。「時々欲しいものが違う。もっとやわらかい時もある。もっときつい時もある。ただ抱かれていたい時もある。迷いなく取られたい時もある。でも、いつだって、相手はあんたがいい」


彼は黙っていた。


カイラは一歩近づいた。


「形が問題なんじゃない」と彼女は続けた。今度は少しだけ声が低かった。「あんたがどう触るか、どう押すか、どこまで支配するか、それそのものが問題なんじゃない。誰がやるかが問題なの。もし私が嫌だったら、最初に殴って、そのあとで文句を言う」


そこで窓辺のリラが、布から目を上げずに小さく笑った。


アヤノも、書物の上でわずかに口元を動かした。笑いと呼ぶほどでもないが、近いものだった。


カイラはすぐそちらへ顔を向けた。


「はいはい、面白いでしょ。でも本当だから」


「別に否定してないよ」と彼は言った。


「ならいい」


カイラは彼の胸を指先で軽く押した。


「だから、あれを“壊した”みたいに考えるのはやめて。私はあれをちゃんと欲しがってた。かなりはっきりと。かなり自分の意思で。それに、あれから私は前より少し、世界そのものに腹を立てる回数が減った」


「ずいぶん有用な副作用だな」


「期待しないで。全部はやめないから」


その時、外では風が吹いていた。窓の細い隙間からわずかに冷気が入ってきて、そのせいで部屋の中のぬくもり――火床、リラの手の中の布、アヤノの頁をめくる乾いた音、肉とパンの匂い――がいっそう濃く感じられた。彼はカイラを見ながら、こういう時の彼女の率直さは、たぶんどんな思慮深さよりも人を救うのだろうと思った。


エドランが彼とあの種の話をするに至ったのも、やはりヴェイルと似た道筋を通ってだった。


最初は何気ない一言。


次に、少しの苛立ち。


そのあと、誰かの変化へ向ける、長すぎる視線。


そしてようやく、真正面からの問い。


二人は内庭を見下ろす開廊に立っていた。もう遅い時刻で、下ではたまに人が石畳を横切るだけだ。皆、足音まで控えめにしているように見えた。風がエドランの外套の裾を揺らし、壁の灯火をかすかに脈打たせ、湿った石の匂いを運んでくる。話は最初、ごくいつも通りだった。ある家筋はもう新しい秩序に組み込まれた。別の家筋はまだ渋っている。三つ目は武力ではなく婚姻の圧で動かせる。そういう、統治の話だ。


それからエドランが黙った。


そして、あまりにも長く、下の暗い庭を見ていた。


「お前も分かってるだろう」と彼はやがて言った。「ヴェイルが変わったのは、学校や職務のせいじゃない」


「分かってる」


エドランは短く笑った。


「よかった。では、あまりにも見え透いた入り方をしなくて済む」


彼は顔を向けた。


「もう、隠してもいないな」


エドランも彼を見返した。


「そうだ」と彼は言った。「妬ましい。はっきりそう思ってる。分かるんだ。あいつから、あの内側の乾きが少し抜けたのが。細かいところが柔らかくなってるのが。そして、その理由も見えてる」


そこには、もはや照れも自嘲もなかった。


ただ、自分でも持っていないものを他人が手に入れたのを見た人間の、真っ直ぐな苛立ちだけがあった。


「お前も、あの時の話が欲しいのか」と彼は訊いた。


エドランは視線をまた庭へ戻した。


「そう思っている自分が、すでに気に入らん」


「でも欲しい」


「欲しい」


その一言は、彼が普段許すよりずっと露骨だった。


「私は絶対の権力をどう持つかは知っている」とエドランは言った。「女をどう囲うかも知っている。何を与えれば静かになり、何を用意すれば忠実になり、どう扱えば感謝し、従い、時には情まで向けてくるかも知っている。所有のやり方なら分かる。だが、権力の中で、ただ抱える相手ではなく、そこに並ぶ相手をどう持つのかが分からん」


その言葉は、いくらかの努力を伴って出てきた。


「並ぶ相手」という発想そのものが、彼にはまだ異物なのだと分かるほどに。


「誰か一人、他より特別な女はいるのか」と彼は訊いた。


エドランはすぐには答えなかった。


その沈黙だけで、十分に答えになっていた。


しばらくして、ようやく言った。


「いる」


「なら、その女から始めろ」


エドランは少し眉を寄せた。


「ずいぶん簡単に言うな」


「簡単じゃない。ただ、そこしかない」


彼は言った。


「いちばん扱いやすい女でもない。いちばん美しい女でもない。いちばん従順な女でもない。お前が、いなくなったら最初に欠けたと感じる女からだ」


エドランは黙って聞いていた。


「始める、とは何を指す」


彼は少し考えた。


前には、ほとんど空に近い庭が広がっていた。下の暗い石、まばらな灯り、遠い回廊を横切る衛士の影。そういう景色のほうが、かえって話をまっすぐにすることがある。


「権力から始めないことだ」と彼は言った。「捨てろという意味じゃない。そんなのはお前には不自然だし、馬鹿げてる。だが、権力以外に、そこに何があるかを見ろ。あの女が何を感じるか。どこで本当に生きて反応して、どこで役目しかやっていないか。どうすれば、あいつが“形に合わせる側”ではなく、自分でも返してくるか」


エドランは長く黙っていた。


「それは」と彼は言った。「国を動かすより難しいように聞こえる」


「たぶん、その通りなんだろう」


エドランは今度は、少しだけましな笑い方をした。


「ひどく滑稽な気分だ。家を折り、金で人を縫いとめ、脅しで一族を従わせ、国家の形まで作り替えておいて、そのあとで、一人の女とどう話せば“形”ではなく隣にいてくれるのか分からない」


「ようやく人間の領分に来たってことだ」


「胸の悪い場所だな」


「いつもそうでもない」


エドランは彼を見た。


「いちばん屈辱的なのは分かるか」


「何が」


「女についての知識のほうが、昔の世界の物理やら化学やら政治やらより、はるかに役に立ってることだ」


そこで彼自身も、少し笑った。


「それは確かだ」


実際、妙におかしかった。


火薬の知識ではない。


化学でもない。


前の世界の政治の仕組みでもない。


女をどう感じるか、近さをどう扱うか、そういう知識のほうが、この世界ではよほど実用的で、しかも深く効いた。物の理は大して持ち込めない。化学も、ここではまだ遠すぎる。政治は、もちろん役に立つが、歪んだかたちでしか通らない。


けれど、女は秩序の一部である前に、生きた反応を返す存在でもあること。守るだけではなく、欲しがるし、応えるし、主体にもなれること。所有以外に、相互性があること。


そういう理解だけは、驚くほどまっすぐ効いていた。


そのあと彼は、一人で回廊を戻りながら、別のことを考えていた。


昔、女は多かった。


だが、同時に多かったことはない。


今のように。


家そのものとして。


一つの世界として。


向こうでは、一人、また一人、時に重なり、時に混ざり、時に複数の流れを同時に抱えることはあっても、それでも結局は一つの世界として運んでいたわけではなかった。


だが、今は違う。


リラ。


カイラ。


アヤノ。


そのうえ、もうすぐ子が来る。


いや、いずれは子どもたちかもしれない。


それに、普通の生活もある。権力。教育。魔法。危険。街。国家の変化。


その全部を、ただの用事の一覧としてではなく、生きた関係の束として持たねばならない。


彼は歩きながら、回廊の外の闇を見ていた。アーチの向こうに、内庭の木々が黒く立っている。どこかから煙の匂いが来る。別のところからはパンの匂いがする。不思議と、その組み合わせ――冷えた石、煙、パン、夜――が、この考えをいっそうはっきりさせた。


どうやって、何人もの女へ注意を割れば、皆に足りるのか。


形式ではなく。


「今日はこっち、明日はあっち」ではなく。


生きた人間相手に、帳面みたいな分配で済むわけがない。


たぶん、ここで効くのは機械的な何かではない。


あまりに雑だ。


あまりに死んでいる。


むしろ、新しく感じられるようになるしかない。今、誰に何が足りていないのか。どこでは触れるだけで足りるのか。どこでは話さねばならないのか。どこでは身体ごと強く答えるべきか。逆に、ただそばにいればいいのか。間に合うかたちで、間に合う応答をするにはどうすればいいのか。


前の世界で、そういう男を一人だけ知っていた。


本当に、四人の女のそばに同時にいられる男だった。


金でもなく、見た目でもない。


ただ、内側に何か別の器官があるみたいに、いまどこが空いているか、どこが不安か、どこで行くべきか、どこで引くべきか、どこで荒く取るべきか、どこで聞くべきか、どこでただ現れれば足りるのか、それを感じていた。


その頃の自分は、まだその男から学べると思っていた。


見ていれば、そのうち分かると思っていた。


訊けば、きっとまだ間に合うと思っていた。


結局、間に合わなかった。


だから今、それをここで、まったく最初から自分で覚えるしかない。そもそも複数の女と生きた близость を持つこと自体が、最初は不可能みたいに見える世界で。


家へ入ると、まだ皆、完全には寝ていなかった。


リラは寝台に座り、髪をほどいていた。もう少し眠そうで、手の動きも少し散っている。カイラは長椅子に横向きに寝そべり、何も気にしていないふりをしていた。だが、目はちゃんと生きていた。アヤノはいつものように本を持っていた。けれど、もうとっくに頁は止まっている。


彼は戸口のところで止まり、そのまま三人を見た。


昔の自分には到底なかった、三つの中心。


すでに子を宿している女。


自分だけの分を、権力と欲望のかたちで欲しがる女。


一度はほとんど壊れかけ、いまは乾いて強く、彼が言葉にしないものまで見ている女。


見ていれば見るほど、昔の経験はここでは完成した答えをくれないのだと分かった。


方向だけはくれる。


だが、その先は、自分で感じ直すしかない。


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