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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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113/242

第113話『砂漠のオアシスと、スパイスの伝説』

塩の都セーリオで“涙の職人”と出会ったレンたちは、再び旅を続ける。

向かうは、赤い砂と青空が広がるバハル砂漠。

そこにある小さなオアシス都市ジャミーラは、古より“香りの都”と呼ばれていた。

「……なんだこの暑さは」


 リリィが麦わら帽子を手で押さえながら呻いた。


「靴の底が焼けてる気がするんだけど!」


 キャラバン隊に同行し、レンたちはようやくオアシスにたどり着いた。

 その都市は小さな湖とわずかな緑に囲まれ、乾いた大地に浮かぶ奇跡のように見えた。


「ここがジャミーラか……香りの都って聞いてたけど、ほんとに街中がスパイスの匂いに満ちてるな」


 ヴァレッタが感心したように周囲を見渡す。


 ジャミーラでは、年に一度のスパイス祭が間近に迫っていた。

 各国の香辛料商人が集い、料理人たちが“究極のスパイス料理”を競い合う。


「面白そうじゃん、それ。出場してみようよ、レン!」


 そう声をかけてきたのは、祭の運営をしている青年――ジャフール。


「ただし、ルールがある。料理に使えるのは、祭の前日に開かれる“スパイス試練”をくぐり抜けた者のみが得られる“伝説の香辛料”だけだ」


「なんでそんな面倒なことを?」


「……それが“バハルの掟”さ」


 試練の舞台は、町外れにある古代の香辛料神殿。

 炎のような岩壁と砂嵐に囲まれた遺跡で、レンたちは香りの迷宮に挑むことになる。


「……うっ、鼻が……! くしゃみ出そう……!」


 神殿内部には、視界を曇らせるスパイスの霧。

 クローブ、クミン、ターメリック、シナモン――ありとあらゆる香辛料の粉末が空中を漂っている。


「目と鼻が死ぬ……けど、これは……匂いでルートを見つける仕掛けだな」


 レンは鼻を研ぎ澄ませ、わずかな香りの違いを頼りに正解の通路を進んでいく。


 迷宮を抜けた先、神殿の最奥には、黄金色に輝く一粒の香辛料が鎮座していた。


「これが……“太陽のスパイス”!」


 ほんの一振りで、香りが料理全体に溶け込み、魔法のように味が変化する――そう伝わる幻のスパイスだった。


 そして、スパイス祭当日。


 レンが用意したのは、バハル砂漠の食材と太陽のスパイスを活かした――


**『スパイス焼きナスとラム肉のタジン風ピザ』**


 ・ターメリックでマリネしたナス

 ・クミンとガーリックの効いたラムのミンチ

 ・太陽のスパイスを混ぜたトマトソース

 ・仕上げにパクチーとレモンゼスト


 パリッと焼き上げた薄い生地に、濃厚な香りと爽やかな後味が重なる一枚。


「こ、これは……まるでピザが踊っているようだ……!」


「体の芯が熱くなるのに、後味がすっと引いていく!」


 審査員たちはこぞって驚き、ジャミーラ市長が深く頷いた。


「……この料理、まさに“砂漠の風”。文句なしの優勝だ!」


「すごいよ、レン! スパイスでピザをここまで進化させるなんて!」


 リリィが目を輝かせて叫ぶ。


 ジャミーラの夜空には、スパイスの香りとともに祝祭の音楽が響いていた。

スパイスとは、“香りの魔法”。

ひと振りで料理も心も、未知の領域へ。

次回は、さらに風変わりな地へと足を運びます……!

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