No.001 会話
なんか父さんも関わっているみたいだな・・・
面倒くさいやつから逃れることができたところで、校門を出ると後ろから走ってくる音が聞こえてきた。
僕と宗光はまたあいつなのではと思って後ろを振り返ると、そこには珍しくあかねが走りながらこっちにやってきていた。
あかねが追いつくと宗光は開口1番、
「何だあかねか。驚かせるな」
と言った。なんだとは何よ。と、あかねはいつものように言うと、
「それで今日のあの黒服の先生の話ってどう思う?私達大丈夫だと思う?
ちなみに大廣くんはあの後色々言っていたけれど私と他の人達で黙らせておいてあげたから」
と、ニコニコしながら言いよった。やっぱ怖いな……宗光はビビりながらも、
「でも実際にスマホには宛名不明のメールが来ていたし、嘘なら高校に堂々といないでしょ。あんな目立つ服装で」
ちなみにメールの中身は、明後日までに先ほど各家庭に送ったダンボールに、自分で持っていくもの以外の荷物を入れること。4日後に6地区の中心の駅に9:00に集合すること。両親にはすでにこのことを伝えてあり、基本的に自分からは話さないこと。など必要最低限のことが書かれていた。
「明日から私達どうなるんだろうね……」
とあかねが言ったが、僕達は何も答えられないまま、歩きだすしかなかった。
「でもあの言動的に辞退はできないよな」
「たぶんね。まあでも急っていうか何で僕等っていうか……」
「何するんだろうな」
「まあ3人一緒だったことは良かったことで」
「それはそう」
そんな事を言いながらバス停に着いた。
「そういえばバス乗るのって結局一回だけか……」
「優木あんなにバス乗るの楽しみにしていたのにね」
「あっちでも乗れるだろ」
「あっちの冬は寒いのかな?」
「だろうなぁ。まぁ自分たちの知らないところへ行けるんだろ?」
それはそうだな。色々見られるだろ。あれ?バスの定期代どうしよ……1年分買ってしまったぞおい。8万円ぐらいはしたぞ?
家に帰ると、母と妹はもう帰っていた。母さんはとても心配そうな顔をしていて妹のしずかは不思議そうな顔をしていたが、僕は何も言えないのでそのまま普段どおりに過ごすしかない。
「話は聞いているわ。大変そうだね」
「まあそうだね……でも仕方ないとしか思えないよ」
そのまま明日を迎えられるかもしれないと思ったが、僕のお父さんが急に夜に帰ってきた。僕のお父さん、好井博己は世界連邦軍のまあまあ偉い階級にいる軍人さんらしい。普段は本部がある1地区にいて滅多に帰ってくることはないのだが、なぜか今日は連絡がないまま突然帰ってきた。
「優木、食事が終わったら話がある。私の部屋に来なさい」
と、お父さんはリビングに来るなりそう告げた。お父さんは軍人なだけあって、とても厳しい。成績は良くないといけないし、ゲームもこの家にはない。ともかく真面目な人で、怒らせると怖いところもある。
ただ、僕ら想いなところもあり、妹が病気になったときは1番に病院に突っ込んで行っていたし、よく僕とも遊びに行ってくれた。
……[コンコンコンコン]
「父さん入るよ?」
僕らがお父さんの部屋に入るときは、学校の職員室に入るときみたいなノックをしなければいけないという暗黙のルールがある。いつもどおりにノックをして部屋に入ると、父さんは悲しそうな顔をしながら僕を見ていた。こんなことはあまりないので僕が驚いた顔をしながら立っていると、まあ座りなさいと言って、客用の席に座らされた。
「優木、もうちょっとで世界連邦日本支部に行くのだろう?」
「何でそんな事知ってるの?」
と僕は聞きながら、あ、この人軍人さんだったなぁ。偉い階級らしいなぁ。とか思っていた。
「そりゃあ私は階級が一佐で、トップから四つ下なだけだからな。何でも下から情報は入ってくるんだよ。特に息子のことについてはね」
と、得意げに言った。ありがたいけど軽々しく行っていいのかね?
「うん。なんか長岡さんという人が来た」
「そうか……黒矢が担当か……」
「知っているの?」
「まあね。長岡さんはいい人だよ。安心していいし信用もできる。ところで、優木はどういう事をするのかという事は聞いているかい?」
と聞かれた。そんな事言われても何するかなんて聞かれてないしなぁ。
「まだ何も言われていないよ。どのようなことをするの?」
と聞くと、少し難しい顔をした。
「あまり私からは言うことが出来ないが、宇宙に行ってもらうことになるだろう」
「そうなの?ていうか宇宙にやっぱ行くんだ……」
「すまないね。大人たちの力が足りないから君たちみたいな若者まで駆り出されて」
「そうだよ。何で高校生活の最初からこんなことに……」
「すまんな……」
と言うか宇宙ってそんな気軽にほいほい行けるんだ。
そして部屋から出るときに父さんが、ポツリと、絶対に諦めるなよ、と言うのが聞こえた。
次の日、僕は1日中家に引きこもって、片付けとか持っていくものをどうやって選別しようかを考えていた。部屋片付けとけばよかったが、そんな事を考えてももう遅いよな。
「服は着ていく服以外はダンボールに入れるとして、プラモデルはどうしよう?全部は持っていけないだろうし。でもあっちでも作れるように道具は必ず持っていくとしてまだ作ってないプラモいっぱいあるんだよなぁ……こんなん持っていったら箱に入らないし・・・ちょっとだけならいけるかな?」
「そんなもの置いていけばいいのに」
「うおっ!!」
そんな事をブツブツ言っているとしずかが部屋に入ってきた。
「まさかお兄ちゃんが家から出ていくことになるとはねぇ〜」
「……悪いか?」
「だって……生活力が皆無ではないけど、部屋は模型とか置いているところ以外は滅茶苦茶やもんな……」
それは言うなや妹よ……
僕の妹のしずかは僕より1歳下だ。しずかは中学校の時の僕よりもずっと頭がいいし、運動も得意で、よくしずかにお世話になることも多い。そして滅茶苦茶可愛い。勝てるのはパワー系か長距離と水泳ぐらいなんだよなぁ……
普通に高3のカリキュラムまで終えてるし。ちなみにちょっとブラコン。
「にしてもそんなよくわからんところへ行って大丈夫なんかな?何するか聞いてないの?お母さんは心配してるしお父さんは急に帰ってきて気難しい顔しているしちょっと異常やで……特にお父さんは」
「ウ〜ン……まあ大丈夫じゃないかな」
しずかはいつも察しが良くて自分の心情とかもよく言い当てられることがあるが、機密事項だから教えてあげたいけど教えられないし、聞いたら全力で阻止するだろうしなぁ
「まあ、あかねお姉ちゃんや宗光兄ちゃんも一緒だしなんとかなるでしょ?頑張ってね!!」
「お兄ちゃんを信じてくれよ……何で兄よりもあかねと宗光のほうが信じられてんねん……」
「そんなことはないよ〜、お兄ちゃんは特別枠」
「おおぅ……」
なんかいつも頼りにしているのにめちゃくちゃ悪いな……そういう罪悪感に見舞われたが、何も言えないからな。
「まあ私も片付け手伝うよ。兄さんが行ったあとも管理しといてあげるから気兼ねなく置いていってね!」
やっぱり悪いな……そしてその後は引越し業者に渡す荷物と自分で持っていく荷物に分けたりしながらその日を過ごすことになった。それにしてもまじで何するんだろう?ただ心の奥底にはちょっと楽しみにしている自分もいるなぁとは思うところであった。
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まだまだですが頑張って行きたいと思います!!
来週は月曜から金曜まで頑張って毎日投稿したいと思います。(気まぐれになるかも……)