44.笑顔を持ってきた。
ドンドンドンと連続でノックをするが、一向に返事はない。スマホへの連絡も一向に返信はない。これだけ騒いでいるのだ。さすがに寝ているというわけではないだろう。だとしたら、お母さんの言うように俺と会うのを避けているだろう。
「五月雨にはさ、俺の方から事情を話したから安心しろって。あいつも納得してくれたんぞ。聖はさ、君は誰よりも優しいから、もしかしたら俺に迷惑をかけてしまったって悩んでるのかもしれない。でも、俺は気にしてないし、それに悩んでるんだったらだったら俺に何か話して欲しい。だって、俺達は友達だろ!?」
しばらく待つが返事はない。ただの屍のようだ。いや、屍だったら困るんだが。さてどうしたものかな……聖のお母さんには格好つけたものだが、正直名案なんてない。第一の問題として彼女が俺をどう思っているかがわからない。順守権を使って扉を開けさせるのもありだが、それは最終手段だろう。
「俺はさ……短い時間だけど聖と友達をやっていて楽しかったんだ。一緒に放課後帰ったり、デートしたりしてさ。マジで青春ラブコメみたいで……俺はサキュバスと召喚者ってだけでなくて本当の友人だとおもっていたけど一方通行だったのか? 聖にとって俺はその程度の存在だったのかよ!?」
俺は自分の気持ちをおもいきいりぶつける。だけどなんの反応もない。ちょっと悲しいな。そりゃあさ、聖がサキュバスの血を引いているってことで悩んでいるのは知ってる。またそれで悩んだのかもしれない。正直悩むのは仕方ないと思う。だけど、だからこそ友人として相談くらいはほしかったというのは我儘だろうか? それに、俺にこのまま帰るなんて選択肢はなかった。だって、そんなのラブコメじゃないだろ? 本当に迷惑だったらビンタくらいされてやるよ。俺は決意を新たに一つの手段を試みる。
「きゃっ」
俺が魔印を触ると扉のすぐそばから色っぽい悲鳴が聞こえた。ああ、よかった。聖に俺の言葉をちゃんと届いていたのだ。俺は反応が返ってきたことが嬉しくてつい何度も魔印を触るとそのたびにエロい悲鳴が聞こえてちょっとエッチな気分になってしまった。
ドンドンドン!!!
やっべえ、マジで怒ってる!! ちょっと調子に乗りすぎたようだ。ドアの向こうから抗議とばかりにノックの音が聞こえてきた。だけど、彼女は俺の言葉を聞いてくれている。それならこれからやることだってきっと効果があるはずだ。もしも、なかったら土下座でもして許してもらおう。
俺はベランダへと回って聖の部屋の閉め切られたカーテンに守られている窓ガラスを眺めて、意を決して手の中にあるゴルフクラブを握りしめる。これは聖のお父さんのものだそうだ。俺はグリップを握りしめて深呼吸をする。そして、最後に魔印を触って、彼女がドアをドンドンと叩いたのを確認して俺はゴルフクラブで窓ガラスをぶち破った。
予想よりももろく、細かく割れたガラスは夕日が反射してとても綺麗だった。
「きゃあああああ、何をしてるのよ、あなたは!!」
俺は彼女の悲鳴を聞きながら、窓枠に残ったガラスで指を切らないように気を付けながら鍵をあけて侵入する。信じられないという顔をした彼女に対して、俺は決め顔でこういった。
「何ってきまってるだろ、笑顔をもってきたんだよ。ラブコメってのはさ、最後に笑顔で終わるものなんだぜ」
そう、俺は聖が最後は笑っていられるラブコメを作りにきたんだ。
バンプのラフメイカーむっちゃ好きなんですよね。
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