41.黒川のいない教室
今日は変な夢を見る事もなく朝は普通におきた。そして、学校へと向かう。五月雨とは話し合って今日のお昼は彼女も同席することになった。しかし、聖から連絡があまり返ってこないのも気になる。俺が教室で考え事をしていると中村に声をかけられた。
「おはよう、五月雨がちょっと濡れて帰ってきたんだけど知らない? 昨日雨とかふってなかったよね」
「いや、なんだろうな……そういう年頃なんじゃないか?」
「濡れて帰ってくる年頃ってどんな年ごろなのさ…」
俺の言葉に中村があきれるようにいった。サキュバス関連の話を広めるわけにもいかないのでこいつには深くもはなせないんだよなぁ。それよりだ。
「聖のやつ今日は休みなんだな」
「そうみたいだねぇ、昨日の放課後一緒に教室でていったけど変な事したんじゃないだろうね? セクハラは禁止だよ」
「お前の俺の低すぎる評価はなんなの?」
こいつとは一度本気で話し合う必要があるようだ。でも、確かに普段はもう来ているであろう聖が来ないのは少し気になった。
結局聖は今日は学校を休んでしまった。体調が気になったのでメッセージアプリで聞くとようやく返信があり、風邪を引いただけだから心配をしないで欲しいと返信がきたので安心する。もしかしたら少しかかった聖水の効果で体調が弱くなったりしたのだろうか。いや、あんな塩水にそんな効果はないだろう。
翌日も聖は学校を休んでいた。彼女が続けて学校を休むのは珍しい。彼女からは「お弁当を作ってあげられなくてごめんなさい、代わりに中村君の妹さんとお昼でも食べたらどうかしら」と連絡が来てそれ以来は既読にもならない。
さすがに心配になった俺は昼休みにも電話をしたのでが出てくれなかった。本当にただの風邪ならいいんだけどな……お見舞いに行こうかという連絡も既読がつかないのだ。心配だが打つ手がない。スマホもいじれないくらいやばいのだろうか? それに昨日今日と抱き着いていないが体調は大丈夫だろうか?
「翔先輩何を黄昏ているんですか? 窓をみて儚げな顔をするのはイケメンだけの権利ですよ」
「ああ、五月雨か……出会い頭に人を馬鹿にしちゃいけないって習わなかった?」
「私一年生何で難しい事はよくわからないですね」
「道徳の授業さぼりすぎじゃないか?」
俺がなんとなく習慣で聖とお弁当を食べていた特別教室でパンをかじっていると五月雨に声をかけられた。一瞬聖かと思ってしまった自分が憎い。
「黒川先輩は休んでるらしいですね。連絡がつかないんですか?」
「ああ、単なる風邪らしんだけどな……一応大きな病気ではないってきてそれっきりだよ」
「私のせいですかね……?」
「五月雨……?」
震えた声でそう言った五月雨の顏は今にも泣きそうだった。そして俺の胸に飛び込んでくる。俺はとっさのことに受け止める事しかできなかった。
「私が勘違いをして余計な事をしたから、黒川先輩は学校に来なくなってしまったんじゃないですか? 私が二人だけの秘密を暴いたから……」
「そんなことはないだろ、聖が学校に来ないのは五月雨とは関係はないよ」
「でも……せっかく、黒川先輩が誰かと一緒にいるようになったのに、私が余計な事をしたせいで中学の時みたいにまた他人と距離と取るようになったら……今思えばあの優しい黒川先輩が翔兄ちゃんを傷つけようするはず何てなかったのに……」
俺の胸の中で五月雨は辛そうに後悔の言葉を紡ぐ。彼女の言葉が俺の胸の中で響く。ああ、また俺のせいだ。俺がサキュバス召喚なんてしたせいで五月雨が苦しんでいるのだ。
こいつは元々優しい奴だ。今回の行動だって、俺の事を心配してこんなあほな事をやらかしたのだ。全く俺の周りにはいいやつが多すぎる。現実世界ではわからないけどさ、ラブコメではいい奴は報われるんだよな。だったら俺がやることは決まっている。いや、元々五月雨が何も言ってこなくてもやることは決まっていた。だけど、彼女の涙が俺を行動に移すための最後の後押しになってくれたのだ。
「心配するなよ、聖の事ならすぐ解決するさ。なあ、五月雨……俺を誰だと思っているんだ?」
「え? バカな幼馴染のお兄ちゃん」
「そこはもっと言い方あるだろ!! 俺はここに宣言する!! 今から俺は俺のラブコメを始めるぜ!! だから安心しろ、こういうヒロインがへこんだシーンはチャンスなんだよ!! ここで俺が華麗に問題を解決して、あいつは自分のトラウマを克服して無茶苦茶楽しい学園生活を送るんだ。心配するな。俺はラブコメで勉強し続けたからそういうのには詳しいんだよ!」
「いや、そういってくれるのは嬉しいけど、最後のを聞いたらすごい不安なんだけど……」
「だからさ……次に黒川が学校きたら一緒に飯を食おうぜ」
「うん、応援してる。私にできることがあったら言ってくださいね」
なにやら不安そうな顔をしていた五月雨だったが俺の言葉に力強くうなづいた。そして、俺は放課後までに色々と彼女と話すことを考えるのであった。
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