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22.サプライズ

 翌日、中村がきていないため、一人教室でぼーっとしながらスマホをいじっていたら声をかけられた。



「おはよう、妻田君、昨日はごめんなさいね。ちょっと急いでいたものだから……」

「ああ、よかった聞こえてたんだな。気にしないでくれ」



 振り向くと黒川が少し気まずそうにしていた。そんなに気にしなくていいのにな。それ以降話は振ってこないので、話は終わりかと思っていると耳元でささやかれる。



「お昼時間をもらってもいいかしら……? また、いつものをお願いしたいのだけれど……あと今日は昨日言っていたあれを作ってきたから、購買では何も買わないでおいてね」

「え……?」



 そういう彼女は白い肌を少し赤くしており、何とも色っぽい。そして、こちらの反応をうかがうように見つめている。あれってあれだよな。俺は思わず生唾を飲み込み、歓喜に震える。だって……生まれて17年、はじめて母親以外の異性からのお弁当をもらえるのだ。しかも、二人っきりで、秘密を共有しながらである。まじでラブコメじゃーん!!



「まじか!! 無茶苦茶楽しみにしてるぞ!! 絶対購買はよらないから!!」

「ふふ、別にそこまで喜ぶようなことじゃないでしょうに」



 そう言って柔らかい笑顔を浮かべると彼女は自分の席に戻っていった。その反応に教室が一瞬ざわっとする。



「どうしたんだい、妻田!? どんどん仲良くなっていくじゃないか? あの黒川さんが男子に声をかけた上に笑うなんて……安心院なんて、延々と無表情に罵ってもらうために最近毎日AVを持ってきては没収されているんだよ。というか、僕を置いていかないで……僕何て女友達すらいないんだけど!!」

「いや……残念ながらそういう関係じゃないぞ。でも……女友達がいないお前には勝ったな」

「くっそ、僕に女装をさせてまで文化祭でリア充の妨害をしあった仲じゃないか、うらぎらないでくれよぉぉぉぉ」

「俺が先にリア充になったら許してくれよな」



 懐かしいな……あまりに恋人ができなかった俺達はせめて気分だけでもと、文化祭の後夜祭のカップル限定のダンスパーティーに、中村に彼女役として女装をしてもらったのだ。冷静になったら余計むなしくなったし死にたくなったのがなつかしい。

 でもさ、そうだよな、俺と黒川は友達とよべるくらいの仲にはなったきがするのだ。



「くっそ僕だって絶対妻田よりも先に彼女をつくってやるからな!!」

「ふははははは、女友達のゼロのお前に負けるはずがないだろう。俺に彼女ができたらおススメのAVを貸してやるからな」

「妻田、中村、朝っぱらからうるせえぞ!!」



教室でさわいでいたら猿山先生に怒られ、クラスのみんなに笑われてしまった。だけどその中には黒川もいて……目が合うとなぜかそらされてしまった。AVの話をしてたもんな。ごめんと心の中で謝るのであった。



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