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23.お弁当

 退屈な授業も終わり、お昼になったので俺は黒川が教室を出てしばらくしてから、待ち合わせ場所へと向かった。そこは最初に黒川がサキュバス召喚の事を俺に教えてくれた特別教室だ。



「入るぞ」

「ええ、ありがとう。いつもこんなところまでわざわざすまないわね」

「気にするなよ、黒川の頼みを俺が断るわけないだろ」



 俺を出迎える黒川にほほ笑んで返答をする。どうだろうかこの回答は。ラブコメでヒロインに申し訳なさそうに頼まれた時に、全然気にしてないよっていう風に相手を安心させつつ、この人優しいなって思わせる好感度が上がるセリフナンバーのワンだぜ。



「ラブコメでありがちな回答ね。そういうのはちゃんと相手との関係性を考えないと不審がられるわよ、あとその作ったような笑顔はやめたほうがいいと思う、本当に胡散臭いもの」

「辛辣ー!!」

「でも……私とあなたの関係性なら問題ないと思うわ。パーフェクトコミュニケーションね」

「シャニマスみたいなノリで来た!? よし、楽しく話せたな。斬新なツンデレかよ!?」



 そういうと彼女は柔らかい笑みを浮かべる。彼女が皆には見せない笑顔を俺に見せてくれることが素直に嬉しい。というか、黒川と話していて気づいたが結構冗談とか言うんだよな。実は人と話すのが好きなのかもしれない。だったら、彼女が人を避けるようになった理由が何かあるのだろう。おそらくサキュバス関連で……もしも、彼女が俺に話してくれる気になった俺はその時絶対逃げないで聞こう思う。



「どうしたの? いきなり真面目な顔をして……そんなにお弁当が欲しかったのかしら? その……口に合うかはわからないけどどうぞ」


 

 そう言って彼女は少し恥ずかしそうはにかみながらお弁当箱を開ける。』そこには卵焼きやから揚げなどがきれいに並んべられている。これたぶん冷凍じゃないぞ……手作りなんだろうな。目線で早く食べてと訴えてきたのでから揚げを一つ拝借する。



「うまっ!!」



 俺は彼女からもらったお弁当に口をつける。ソースと肉の旨味が口の中にひろがり俺は思わず感嘆の言葉をもらした。彼女はというと、俺の様子をみてどや顔をしている。まあ、でもこれはどや顔をしてもいいレベルだよな。



「よかったわ、ラブコメの様にメシマズでもなく、驚くほど美味しいわけでもなく、普通に美味しい味だと思うけど満足かしら?」

「教育実習の事根に持ってるのか? いや、悪かったって……」

「ふふ、冗談よ。こんなので良ければ、いつでも作ってあげるわ。デザートもあるけど食べるかしら?」



 そういうと彼女はいくつかのプチシュークリームを取り出した。マジかよ、至れり尽くせりじゃん。俺は気づくべきだったのだ。彼女が一瞬意地の悪いえみをうかべていたのを……



「もちろん、もらうぞ。んんんん!!」



 このプチシュークリームなんなんだよ、むっちゃ辛いんだけど。え、俺が食べたのチョコだよな? なんなんなのこれ。



「ああ、言い忘れたけど、ハバネロが入ってるやつもあるから気をつけてね。あなたはメシマズヒロインが好きなんでしょう?」

「フラグ回収しなくていいから!! 飲み物飲み物ぉぉぉぉぉ!!」 

「ごめんなさい、エナジードリンクしかないわ」

「なんでこの状況でエナジードリンクをなんだよ!! お前は悪魔か!!」

「いいえ、サキュバスよ」

「しってるわぼけぇぇ」



 俺はかろうじ辛いチョコを飲み込む。彼女は俺の慌てる姿をみてクスクスと笑っていた。本当にいい性格をしてやがる。そして俺達は雑談を楽しむ。『まるで普通の友人の様に、サキュバスとその召喚主ではなく、ただの友人の様に……』

 お互いお弁当を食べ終わり、雑談をひと段落したタイミングで再びプチシュークリームをいただこうとするとさっと取り上げられてしまった。俺が抗議の視線を送ると彼女は少し恥ずかしそうに言った。



「これが欲しければ私のお願いを聞いてほしいんだけれど」

「俺にできる事ならなんでもするが……」

「またラブコメみたいなこと……いえ、この場合はエッチな同人誌の導入みたいね」



 くっそ、鼻で笑われた……というか、黒川はエッチな同人誌を読むんだな。ここでつっ込んだら、プチシュークリームを回収されそうになったので、黙っていると、彼女はちょっと恥ずかしそうにでも、緊張した面持ちで言ったのだ。



「じゃあ……もし、あなたが暇だったらいいんだけれど私と放課後一緒に遊んでくれないかしら?」

「え? 放課後デートってやつか?」

「まあ、男女が一緒に遊ぶのをデートと言うならそうね。友達同士でも遊ぶのはデートってよぶのかしらね?」

「マジか……」



 彼女の意外な提案に俺は間の抜けた顔で聞き返すことしかできないのだった。だって、こんなかわいい子の方からデートに誘ってくれるんだぜ。信じられないだろ。この時ばかりはラブコメみたいな事などいう余裕もなく俺はアホみたいにうなづくことしかできなかった。まあ、友達同士と遊ぶのだと釘をさされてしまったが、デートという響きだけでテンションがやばい。


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