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17.彼女との距離

 あの後、保健室に行った俺は血が止まるまでいろと言われ授業が終わるまで保健室に拘束されてしまったのだった。心配しているであろう黒川と、黒川が俺の指をくわえている現場をみた中村に口止めの連絡をした俺は少し休んでから、待ち合わせの場所へと向かった。調理実習のご飯を食べ損ねた俺は購買に寄ってから、部屋を覗くと、もう、先約はいたようで、綺麗な姿勢で座り、本を読んでいた黒川と目が合った。



「妻田君、怪我は大丈夫なの? それと、さっきはごめんなさい……咄嗟だったから抑えがきかなくて……」

「いや、気にしないでくれ。サキュバス的には血とかも魅力的なのか?」

「ええ、召喚者の血や体液もすごい魅力的にうつってしまうのよ……普通の時だったら、我慢はできるんだけど、この時間の前だったし、いきなりだったから……嫌だったわよね」

「いや、正直興奮した!! なんかすっごいエッチだったぞ」

「うわぁ、こういう時こそラブコメみたいにクサいセリフをいいなさいよ……」



 正直に言ったら引かれてしまった。心なしか、距離が遠くなった気がするんだが……でも、今後は気を付けないといけないだろう。というか、恋人でもないのにあんなシーンを見られたら変な噂が立ってしまう。他の人間が見てないといいのだが……まさか、黒川がサキュバスで俺の体液をみたら興奮するんだーと言えるはずもないしな。




「とりあえずご飯を食べましょう。そうしたら……」

「ああ、そうだな」



 俺と彼女の間に少し緊張感が走る。そりゃあそうだよな。恋人同士ならともかくさ、この前や先ほどのような衝動的な状況と違い、友人とは言え異性に抱き着くのはまだ、抵抗があるだろう。俺としては綺麗な女の子に抱き着かれるのは嬉しいけど、俺のせいでこうなっているので罪悪感のほうが強い。



「妻田君は、いつも購買なの?」

「ああ、基本はそうだなぁ。母さんは働いているから弁当つくるのはだるいっていいうし……」



 黒川が俺の持ってきた購買のパンを指さした。対して黒川はいつもはお弁当派だ。今日は調理実習があったから手ぶらの様だが可愛らしいお弁当箱を持参しているのをみたことがある。



「そんなんじゃ頭に栄養が回らないわよ。だから成績が……」

「黒川は俺の成績を知らないだろ!?」

「この前英語の補修受けてたじゃないの、いやだーってさわいでたの覚えてるわよ」

「なっ……見てたのかよ……じゃあ、栄養のあるお弁当を黒川が作ってくれよ。もちろんお金は払うからさ。今日黒川の作ってくれたご飯食べられなかったし……」



 俺の言葉に彼女はうーんと唸った。女友達の手作り弁当とかラブコメっぽいと思うのだがダメだろうか? 彼女は俺と購買のパンを何度か見比べてから口を開いた。



「仕方ないわね、あなたの栄養が足りなくなったら私も困るし、お弁当つくってあげるわよ。一人分でも二人分でも変わらないし……」

「え、マジでいいのかよ!! 半分冗談だったんだが」

「これのお礼よ。その……一か月お世話になるから……それに、友達にお弁当ってなんか友情が深まったって感じでよくないかしら?」

「まじかまじかまじかーーーーー!! 綺麗なクラスメイトからお弁当だと!! 俺にも春が来たー!! お弁当イベントきたーー!! すっげえ、ラブコメじゃん」

「はいはい、別にお弁当くらいで騒がないの。あと、綺麗なクラスメイトじゃないでしょ、綺麗な友達でしょ」

「綺麗っていうのは否定しないのかよ!!」


修正分終わり


 俺の反応に彼女はしょうがないなぁというように笑った。黒川は弁当くらいっていうけどさ。女の子からのお弁当って好感度爆上がりイベントなんだが。スマホで写真撮りまくろっと。


 

「じゃあ……その……抱き着かせてもらってもいいかしら? これでしばらくは抑えられるはずだから……」

「ああ……そのよろしくお願いします……」

「あなたまで緊張しないでよ……余計恥ずかしくなるでしょ」


 

 あきれたように言いながらも彼女が抱き着いてきた。予想以上の柔らかさといい匂いに俺は正気を失いそうになった。前回はとっさだったから状況をイマイチ把握できなかったけどさ、改めて考えるとやばいよな。冷静にならねば……

 これは猿山の裸猿山の裸……それにしても、なんと癒されるのだろう。俺だけではなく彼女の鼓動も激しくなっているのだろうか。少し体勢をずらすと「んんっ」と甘い声が聞こえた。ちょっとエッチすぎませんかね? 猿山の裸猿山の裸……これはあくまで儀式なのだ。決して恋人同士のハグではない。どれだけそうしていただろうか。無限にも感じられた時間も終わりを告げる。俺達はお互い何をいうわけでもなく、離れた。



「ありがとう、あなたのおかげで助かったわ。その……召喚してくれたのがあなたでよかった思う」

「いやいや、気にしないでくれよ。でも、これで俺は別の女の子だったらって思うけどな」

「……あなたがモテない理由がよくわかったわ」

「いきなり辛辣!!」



 俺の言葉に黒川は唇を尖らせてにらみつけてくる。ああ、言葉が足りないせいがムチャクチャ誤解されたきがする。すげえ、露骨に好感度が下がったな。



「まあ、どうせ、私みたいな真面目で可愛げもない女となんて一緒にいてもつまらないでしょうけど……」

「いや、そんなわけないだろ。黒川は魅力的だよ。真面目っていう何に対しても真剣って言う事だし、今回の件だって俺の身の安全を第一にかんがえてくれてるくらい優しいじゃん。それに可愛げないって事はないだろ。普段クールなのに可愛いもの好きって一面も最高だし、こうして二人で話していると冗談も言うし結構笑うよな。ふだんのギャップもあってさ。無茶苦茶可愛いと思うぞ」

「ふーん、なんだかんだみてるのね。というかさすがに面と向かって褒められると恥ずかしいのだけれど……」



 俺の言葉に彼女は顔を真っ赤にして、目を逸らす。今のはラブコメではなく俺の言葉だ。こうして話すことによって俺はたくさんの黒川を知って、俺が感じたことを伝えたいと思ったのだ。俺が友達になりたいと言った時の嬉しそうな彼女の顔が思い出される。多分彼女はサキュバスの血を引いているという事で周りとの距離を作ることにしたのだろう。だけど本当は孤独でいたいなんて思ってはいなくて……だから彼女の友人である俺だけでもちゃんと見ていると伝えたかったのだ。



「黒川ってさ、いつも男子と距離とってるじゃん。だからさ、男が苦手なのかなって思って……それなのにさ、いきなりこんな風に抱き合うとか困るだろ。これが他の……それこそエッチなゲームとかに出てくるようなサキュバスみたいな子だったら、こんな風になっても抵抗がなかったんだろうなって思ってさ」

「そう……本当に優しいのね、でも、不思議とあなたとなら嫌じゃないから安心して」

「まさか、俺に惚れたとか?」

「ふふ、面白い冗談ね」



 くっそ、鼻で笑われた……俺がかるくへこんでいると彼女はちょっと恥ずかしそう顔を逸らしながら言った。



「惚れたとかはわからないけれど、サキュバスの儀式が終わってもあなたとはずっと仲良くしていたいとは思っているわ」

「ああ、もちろん俺もだよ。そろそろ行くか」



 いきなりそんな事を言われて俺はうまい返しが思いつかずだたうなずく。いきなりこっちがはずかしくなるような事を言うなよ……でも、彼女のなかで俺が大切な存在になっていくようですごい嬉しかったのだ。だからつい、照れ隠しもあって、言い方がぶっきらぼうになってしまう。



「あれー、翔先輩。なんでこんなところに? 黒川先輩も一緒ですね。なにをやっていたんですか?」

「おお、五月雨か……ちょっとな……」



 教室を出たところで五月雨とその友人の少女と鉢合わせた。そういえば時々友人と空き教室でご飯を食べているとか言ってたな。しかし、どう説明すべきだろうか? 俺が悩んでいると黒川が助け舟を出してくれる。


「こんにちは中村さん、この前仕事を手伝ってもらったからそのお礼に、少し勉強を教えてあげていたのよ」

「あの……翔先輩が勉強ですか?」


 

 黒川の言葉を聞いた五月雨が俺に近付いてきて耳打ちをする。



「翔先輩……いくら好感度を稼ぎたいからって、興味がない事を聞いてもダメですよ。全然勉強できないじゃないですか」

「あのな……俺もお前と同じ高校なんだが!! というか成績は中の上だぞ!! ラブコメの主人公はえてして平均的な成績かやばいくらい低いからな!!」

「あなたそんな理由で成績を決めているの?」



 やっべえ、黒川にごみを見られるような目で見つめられてしまった。とはいえそろそろ授業なので話を切り上げて教室へと向かう事にする。



「中村さんとあなたは本当に仲良しなのね」

「ああ、幼馴染だからな」

「私にはそう言う人がいないから羨ましいわ」

「じゃあ、俺がなろうか? 存在しない記憶を作ろうぜ。幼馴染とのイベントもラブコメの王道だからな」

「それは妄想っていうのよ……」



 俺と黒川は話に夢中で気づいていなかったのだ。五月雨の友人が俺達と一切会話をしなかったことに、そしてずっと不審な目でみていたことに。



「どうしたの、双葉?」

「五月雨ちゃん、やっぱり、あの女の人だよ、保健室で妻田先輩と抱き合っていたのは……見間違いなんかじゃない」



 この二人の会話に気づいていればもっと早く手を打つことはできたのだ。

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