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バレンタインと料理教室ー前編ー





 雪がチラつく灰色の空。普段よりも無駄に活気あるコンビニ。ソワソワする学生達。時折聞こえてくる、女子のキャッキャと言う黄色い声─── 


 今日は聖バレンタインデー。チョコレートをあげてキャッキャウフフする日本独自の文化


 普通なら

 マフラーに手袋。それらを身に着けても冷たい風は心を凍りつけてくる……



真「……南ぃ……この世の中は……無慈悲だよね」



 部室の机に突っ伏し、涙で木目を汚している真。南はそれを雑巾で拭うも、次から次へと溢れる涙は留まることを知らない。



真「なんで自分ばっかり……そんな風に思っちまう事……あるよな……」

南「そう思える時があるのは否定しません。現にあなたの汚い涙を拭かされている私の身にもなってほしいものです」

真「男子校……男子校なのにさ……皆、学校着いたらチョコレート……持ってたんだぜ?」

南「そりゃ、バス停や途中のコンビニ……渡せる環境はいくらでもあるでしょう」

真「南だってチョコほしいんだろ……?」



 ピクリと、涙の洪水に抗う手が震える。



南「ま、まさか。わ、わわ、私は別に……」

真「空がチョコを持って来たときは泣きわめきながら●した癖に……」

南「………………」




 そう。真が拗ねてる原因は単に、チョコをくれる相手がいない事だけではなかった。

 空には義理の姉。フラクがいる。

 そこフラクからもらったチョコレートを、手にやって来て、チョコ貰ってない側(負け犬)である真と南に見せびらかしたところ……




南「こいつは死ななくちゃいけないんだ!!」


  

挿絵(By みてみん)




真「そう言って俺の分も殴ってくれたよね……」



 絵面的に銃使ってね? とは言ってはいけない。



南「おかげで彼は保健室でグッスリですがね」

真「いいのいいの。でもまさか、空に裏切られるなんてなぁ……」

南「…………」



 そう、仲間の抜け駆け。

 これが2人のテンションを下げる要因でもあった。それは普段は冷静な南でさえも、動揺し、思わず幼馴染みで親友とも呼べる存在をうっかり殺してしまうくらいの精神ダメージを与えたのだ。



真「親の股下からオギャアと産まれ16年……チョコ……貰った事……無いでござる……」

南「最初の表現は気になりますが……ええ……だから余計に空がチョコを持って来たのは衝撃的でした……」

真「生まれた日は違えど、チョコと処●を手にするのは同じって約束もしたのによぉ……」

南「不思議ですね。そんな約束をした記憶が1ミリもない。そして何故今、下ネタ挟んだんです?」

真「●女とチョコって似てね?」

南「似てません」

真「つれねぇなぁ。『下半身でキッス』って歌うだろ」

南「国民的なバレンタインデーソングをよごさないでください……だからあなたは生涯、女の子からチョコを貰った事がないのですよ」

真「貰った事ねぇのは南も一緒だろぉ?

 あーーー、おなご、おなごの(チョコの)お恵みは無いのか!!」

南「誤解を生む言い方はやめなさい!」




 しかし塞翁が馬と言う言葉があるように、物事、何が起きるかわからない。

 ぎゃあぎゃあわめく2人。生徒会の1人が依頼目的でやって来たのは、真の暴走がヒートしてきた時だった。



真「ぁぁあああああ、おなごのチョコぉおおお……無いならミルクでもエエからお恵みをおおおおおおぉぉおおぉぉぉ…………」

南「完全に後半の方が危ないですからね?!

 というか危険な発言、やめなさい!!

 私までチョコ欲しさに泣きたくなってくるでしょうが!!」


生徒「あのぉ……」



 オドオドした様子の男子生徒が入ってくる。

 その腕には生徒会の腕章。

 女とチョコレートと女と女に飢えている2人は目をギラつかせた。



     真&南「ぁあっ?」


    「ヒッッ……!!!」





 ……………


 ………


 …。




 挨拶にガン切れしてしまったが勿論、きちんとした対応を心がけた。


 せっかくの依頼者(だが男だ)。


 出来るだけオンボロの椅子に座らせ、出涸らしのお茶でおもてなし。

 駄楽部にどんな依頼で来たのか。



真「でぇ? 生徒会の野郎が何の用で来たんだよ」



 ご覧の通り、至極丁寧な対応を…………



南「申し訳ありません。彼今、ただごとじゃないだけなので」

生徒「は、はぁ……」



 これ以上暴走させないように首を絞めながら南が受け持つ。



南「で? 今日はどのような依頼でしょうか?」

生徒「あ、すいません……えっと……隣の女子高に届けたいものがあってですね」



 話を要約するとこうだ。


 生徒会の誰かで女子高に届け物をするべきだったのだが、最近は学校のイベントで町のお偉いさんやPTAへの挨拶等に人員を割かれ、女子高に派遣するメンバーが不足してしまっているという。


 そこで駄楽部に代理で届け物を頼みたいと……



 最初は「hmhmφ(..)」と話を聞いていたが、徐々に2人の顔に光が宿る。

 代理でとはいえ、女子高に行ける。


 バレンタインデー。おなごの居ない我が校

 →イエス、灰色の1日


 バレンタインデー。女子高への派遣。

 →チョコのチャンスあるかも?



生徒「それでお願いしても………」


真&南「「勿論でええええええええええす!!!!」」



 それはもう、大きな、大きな声で返したとさ





 

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