表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/75

フラグを越えていけ

本を読んで己の失恋を知る事になるとは思わなかった。



俺はベッドの上でゴロゴロしながら、

ツカサが降って来た天井を見上げていた。


一瞬だけ異世界に飛ばされて、

ハテシナを守れた時の事を思い出す。



まさかあんな序盤で、

俺のフラグが折れていたとはな……


パラメーター不足だったのは俺の方なんだ。

すまないハテシナ。



「まぁ、そりゃそうだよな……」



俺は勇者になれない。


ツカサが登場するまで、盾を構えてハテシナを守る……

あれが俺でもハテシナの為に出来る、精一杯だった。



「俺は通りすがりの、村人Aってところか……」



ハテシナユメコは主人公だ。

きっと皆がハテシナを好きになる……


その中で俺は、ただのモブだ。



「攻略対象にはなれねぇよ……」



聞きたかった本の感想も、

挿絵は良かったけど、ありきたりと書かれていた。


そりゃそうだ、俺はモブなんだから……

モブが書いた物語なら、ありきたりで当然なんだよな。



「あぁもう無理。詰んだ……」



何もかも諦めて眠ろうとした俺を、

携帯の着信音が呼び戻した。


誰かと思ったら、ハテシナレイだ。

あいつからかけてくるなんて、

珍しいな……



「みんとす、読んだ?」


「あぁ、読んだ……

 そんで俺もツカサをぶん殴った」


「ほらね、読めば分かったでしょ」


「お前、レイだったんだな……」


「今更そう呼ばれるの、

 なんだか違和感があるんだけど」


「いいじゃないか、別に」



あの物語の登場人物と話していると考えたら、

不思議な感覚に陥った。


こいつは前世であんな思いをしても、

ずっとハテシナを夢に見続けたのか……


やっぱり攻略対象は違うな。

俺は根暗オタクなので、自嘲気味に笑う事しか出来ない。



「……お前が生まれ変わってくれて、本当に良かったわ」



これは嫌味でもなく、心からの祝福だった。


あの物語を読んで、お前に不幸を望む奴なんていないだろう。

俺もレイには幸せになって欲しいと、純粋に思えた。



「その言葉、ユメちゃんの口から聞きたいんだけど」


「悪かったな、俺が相手でよ!

 ハテシナと会えてないのか?」


「それがさ、記憶が戻った途端に逃げられた……」


「え…… あいつ、もう逃げないとか本に書いてなかったか」


「ほんとそれ。

 もの凄い速さで逃げられた。

 行き先とか、心当たりない?」


「う〜ん、あいつが行きそうな場所って図書カフェくらいしか……

 あとはやっぱ、ツカサのとこじゃないか?」


「だよね。ツカサの周りを張ってみるか……」



完全に獲物を狙う狩人の声だ。

俺はやっぱりこいつが怖い。


しかしこいつ、ツカサの事が気にならないのかな……



「お前さ、あの本を読んでもツカサに負けたって思わないの?」


「は? なんで?」


「だって、あいつらさ……

 運命で結ばれてたんだろ」



運命の恋人……

そんな響き、誰だって憧れるだろう。

他のやつなんて、望みがないって思わないか?



「まぁ、どうやら僕は神のお気に召さなかったみたいだけど。

 運命に背く恋ってさ、運命の恋と同じ位に良い響きだと思わない?」



確かに……!!!

運命の相手との恋はロマンチックだが、

引き裂かれる運命だった相手と結ばれる展開もまた熱い。


なんだコイツ、さすがは攻略対象の発想だ……



「……だからタクオも、

 少しは根性見せたら?」


「はぁ?! 俺?!」


「ずっと好きだったんでしょ、物語を書く位に」



そうだ……


子どもの頃から、俺はずっとハテシナを見てきた。

その年月だけは、他の誰にも負けてないつもりだ。


……だからって、

既にフラグが折れてる俺に出来る事なんてあるのか?



「なんでそんな事、俺に言うんだよ……」


「別に他意はないけど。

 ……ただ僕は、諦めようとして押し込めて、こじらせたから。

 そうなったら、死ななきゃ治らないから忠告だよ」


「ははっ! 死んで治ったのかよ、馬鹿じゃなくて良かったな」


「まぁ、18年も罰を受けたからね。

 ……僕は、もう二度と逃げるつもりはない」


「ハテシナには逃げられたけどな」


「うるさいな。

 捕まえて、今度こそさらってやる」



すでに相手は大国の女王と化してるのに、さらっちゃダメだろ。

なんだか悲劇フラグが立ちそうな設定じゃないか……


でもきっと、こいつはそんなフラグを覆していくんだろうな。


悟り顔をして投げ出そうとした自分が、

情けなくなってくる。



「……俺も、ちょっと頑張るわ」



もしかしたら、折れたフラグだって直るかもしれない。


諦めるのは、物語が全て終わってからでいいよな……



結果は何も変わらないかもしれない。

けど、何もしなかったら絶対に変わりはしないんだ。



まずはちゃんと、最後までやりきろう……!!!



「まぁ、負ける気がしないけどね」


「うるせー!!

 そういうところが相変わらず腹立つな!!」



だけど俺は内心で、レイに感謝した。


前にこいつから言われた通り、

俺も少しは身体を鍛えてみようかな……



家に帰ってからウダウダと寝転がっていた俺は、

気合を入れて勢い良く身体を起こす。



そして疲れ果てて眠るまで、筋トレを続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ