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たからもの

「いってぇぇぇ……」


「あっ、もう動かないで下さいよ!

 手当てが出来ないじゃないですか」



タクオはツカサを殴った後、

泣きながら全力ダッシュで帰宅してしまった。


もう閉店前なので、他のお客さんの姿もない。

消える寸前の夕陽が窓から差し込んで、2人を照らしていた。



「せっかくのイケメンが台無しですねぇ」


「悪いな、手間かけちまってよ」


「いいんです!

 ツカサさんとは一度、お話してみたかったので……」


「は? いつも話してるだろ」


「違いますよ、2人でです!

 私、みんとすを読んでツカサさんのファンで」


「え? あの本に俺が出てるのか……?」



ツカサはまさか自分が出てるとは思いもよらなかった様で、

驚いた表情を浮かべていた。



「そうですよ! ツカサさんは、勇者さまなんです。

 自分を守ってくれる勇者さまだなんて、憧れちゃうなぁ〜」


「俺が、誰かを守ってるのか……?」



ツカサには思い当たる節がなかった。

記憶を失っているのだから、当然だろうが……


殴られる前に2人から問われた、

覚えてないのか、という責め句が頭を過ぎる。



「あの本を読めれば、俺にも分かんのかな……」





さて。

神が仕事をしている時点で、もうお察しかもしれないが……

2人の姿を、食い入る様に見つめる影があった。


ユメコが久々に根暗を発動し、

窓の外から恨めしげな目付きで図書カフェを覗き込んでいる……


エビルはそんな様子を、ハラハラしながら見守っていた。

ヒジリはユメコの百面相にはもう慣れてしまったので、

いつも通りの穏やかな笑顔を浮かべている。



「……そうだよね、やっぱ陽キャは陽キャとお似合いだよね……」


「落ち着け、ユメコ!

 ……大丈夫だ!!!」


「エビル、根拠のない励ましは逆効果ですよ」


「見てよあれ、美男美女だよ?

 美男美女…… あれは映えるわ……」


「大丈夫だ、ユメコ。

 君には国がある!ステータスでは決して負けていない!!」


「自身の経験に基づいた励ましだとしても、

 逆玉の輿みたいな発想は教育に悪いのでやめて下さいね」


「そうよね、

 金ならあるぞって36歳が18歳に声をかけたら……

 犯罪じゃないの!!!!!」



ユメコは頭にきて、エビルに八つ当たりをした。

これは何を言っても逆効果だ……



「もう無理、もう無理だけど……

 コンテストが終わるまで、見守る事だけは許してねツカサ……」



異世界で覇道を恐れられるユメコが、

堂々とストーキング宣言をしている……



ヒミコの生まれ変わりがどうしてこうなったと、

2人は思わずにいられなかった。


しかし、そんなユメコに惹かれたというのもまた事実である。



弱いところはあるけれど、決して折れない柔軟な強さ。


清廉な善人ではないけれど、汚れていない真っ直ぐな心。


好きなものの為ならば、神をも落とす程の情熱と決意……



何故ヒミコが彼女に全てを託したか、

分かってしまうのだ。


今の2人にとって、

ユメコは何よりも大切な宝物だった。



「とりあえず、今日のところは帰ってお茶にしませんか?

 コーヒーの匂いを嗅いでいたら、飲みたくなってしまいました」


「そ、そうだな!

 今日は晩ご飯もユメコの好きなものを作ろう!

 ユメコ、食べたいものはあるか?」


「……ハンバーグ……」


「よし、ハンバーグだな!」



エビルは任せろと言わんばかりの反応をした。


食事を作るのは主にヒジリの担当だが、

今日はエビルも張り切って手伝いそうである。


キッチンが騒がしくなりそうだと、

ヒジリは深い溜め息をついた。

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