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【完結】死にたかった最強魔女は、300年後の世界で愛され魔女となっています  作者: かんあずき


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6 自動人形が最強です

「ブラックコウモリよ?ええと、あのダンジョンに大量にいたはずなのだけど」


私は、これ以上演技を続けることが難しくなり思わずきいてしまう。


ブラックコウモリは、集団で人の喉元を狙ってくる。


魔石500個というのも、まとめて火炎魔法を使って焼き尽くさなければならなかったからで、一匹、一匹殺したわけではない。


ただ、弱い敵ながらもやられたら命取りになる魔物でもある。


見つけたら最後──


根絶やしにするまでやっつけないとどこまでも追ってくる。


だから、とことん根絶やしにするまで燃やし尽くした。


ん?根絶やしにしないと......って、やったわよね。


まさか...



「300年前にはいたのかい?」




レグスタインが、驚いたように聞いてくる。


こっちが驚いているのだけど...


「そ、そうね。かなりの数がいたわ。でも、ダンジョンに放り込まれた時には魔女も多かったの。だから、彼女たちがやっつけてくれたのかもしれないわ」


実際には、やっつける間に力がない子たちは叫びながら逃げまどった。

ブラックコウモリは逃げると追う習性があるのだ。


ここで何人か喉元を食いちぎられて命を落とした。


ブラックコウモリに食いちぎられたものは時々、ヴァンパイアという魔族に変貌することがある。


私は、もう苦しんで死にゆくしかない最後の彼女たちの息の根を止めて、骨も残らないように焼き尽くした。




仲間を殺し、ブラックコウモリの大半をやっつけたのは唯一生き残ってしまった私。




残ったものたちは、それを当然として見つめるもの。


それを化け物を見るかのようにただ目で抗議するもの。




その彼女たちの目を思い出す。


その私を畏怖の目で見ていた彼女たちすら、みんないなくなった。



「根絶やしにしたから......絶滅危惧種になったのね。」




気づけば、私はまた涙を流していたらしい。



「な、泣かないで!怖かったよね。思い出させてごめん。とりあえず、それ一個で家が買えちゃうから、掃除に使うのは禁止ね。」


グレンが、慌てて涙を拭うタオルを差し出す。


だが、視線の先は気になっていると言わんばかりにそのブラックコウモリの魔石を見つめている。



「まだ、本当にいくつかあるから。」



私はハンカチで涙を拭う。


そして周りが騒ぐ前に、魔石を床に投げつけた。


その魔石の魔力を使って、自身がこっそり放った呪文を放つ。


瞬時に埃まみれだった家中の家具が瞬時に光り輝く新品に生まれ変わる。


床はワックス仕立てのピカピカの板間に……


嘔吐物はチリ一つ残さず消去


そこに敷かれた、雑巾のような真っ黒な敷物は、本当は緑の落ち着いた色だったのですと言わんばかりに、そのオリエンタルな上品な柄まできっちり浮かび上がった。




シーツは、お日様の香りがしそうな真っ白ふんわりに変貌し、ぼんやり浮かび上がる灯りのカバーは美しい透明なカバーに変わり、部屋中に灯りを広げた。



「ああああああぁぁぁ!魔石が!」




グレンがその場で崩れ落ちる。



そして、瞬時にきれいになった室内と、失われたブラックコウモリの魔石に興奮と絶望が入り混じる声が、思わず残り4人からも上がる。


唖然としている5人の顔は見られなかった。




私は、くるりと背を向けて言い放つ。


「黒竜が、部屋をきれいにするために使いなさいと言ったのよ。仕方ないわ。さすが......黒竜。きっと花嫁の父のように新しい家具を新調しろということだったのだわ」


私はそう改めて断言した。


あまりに全てが変わりすぎた300年。


少し静かに横になって頭の整理をする時間が必要だった。





だったのに...




整理したくても、見るもの体験するものが異世界で、私の頭も心もフル活動だ。


「うわぁ、ベッド。姫様になったみたい」


元々魔女狩りに遭う前から、目をつけられないように住居は固定せず、森の木々に体を隠しながら眠る日々だった。


家も家族もいない。


魔女の集落で、魔女として育てられただけだ。


親は、魔力が高い、しかも女児ということで、当時の皇帝たちから目をつけられることを恐れたのか?



私は森に置きざりにされた捨て子だった。



泣きながら生きるために、無意識に魔力を放出し続けた結果、運良く魔女に拾われたのだった。


それ以後、浮かびながら寝ることを習得したから、ベッドで横になった経験すらない。




「どうしよう、全身このベッドに乗っかっていいのかしら?」


私は布団を何度も上げ下げして戸惑う。


「大丈夫です。そのままお休みください」



私のベッドにシーツを敷いた自動人形(オートマタ)が、まるで困ったものを見るかのような目で私を見た。



「あなた、本当に人形なのよね?」



300年後のこの世界は、魔石を原動力として、それぞれの用途に合わせた自動人形(オートマタ)が売られているらしい。


この人形は主人たちが長く家を空けていたので止まっていたそうだ。


「見たことがない魔石だわ」


「それは人造魔石だよ。小さなクズ魔石を集めて砂にして固める職人がいるんだ。それを人形にセットするんだよ」




グレンが説明してくれる歪ではないきれいにカットされた魔石は、宝石のように輝いている。


それを、グレンが人形に魔石をセットすると再び動き始めたので驚いたのだが、普通にしていたら人間にしか見えない。




「はい。カレンと申します。デボラ様の身の回りのお世話をするように申しつかりました」


見た目も動きもかなり人に近い。

触って初めて、人の柔らかさとか筋肉のつき方とかとは違うという感じだ。


「お世話......大体のことは自分でできると思うの。ただ私は汚れてるし、カレンが人形であってもこんなきれいなシーツを汚すのは心が痛むわ」




黒竜が、きれいに時を止めてくれたようだ。

見た目は、そんなにおんぼろではないが、300年は体を洗っていない。


(みんなに気づかれないように床から5ミリほど浮遊して寝た方がいいのではないかしら?)




「それでしたら、これからお風呂に入る手配をさせていただきます」


「人形なのよね?そんなことまで300年後はしてくれるの?みんな自分で体を洗わないの?」


思わず、顔を赤くして胸の前で腕を交差する。


女の人形とはいえ、私は人形にすっぽんぽんにされるのか?




「私は家事メイドの自動人形です。一般的な家事や入浴のお世話をさせていただくのは、私の仕事です」


「他にはどんな自動人形がいるの?」


「そうですねぇ、護衛用の人形に家を守らせるものもいますし、料理を専属にするものもいます。私のように、身の回りのお世話をする人形もいますし、洗濯のみするものもおります」


家事も分業なんだ。


今まで魔女として、自分を守り、自分で食べ物をとってきて料理を作り、体を森の水で洗い、雨風凌げる場所で生きてきた。



もちろん、服も灰を使ったり、煮洗いした。



「この時代、全部人形がするのね」


思わずつぶやく私の声を拾い、自動人形は首を横に振った。



「いえ、自分でする人が大半です。この国は貧富の差が激しいのです。私たち人形を手元に持ち、さらに動かすだけの魔石を使える財力のあるものは、この国に多くはありません」


「そうなの??」


私は、自動人形からいろいろな情報をもらっていく。



そういえば、魔力のある人は貴重と言っていた。


彼らは、魔力があるだけではなく、300年ぶりに最下層まで来られる人たちなのだ。


近年では力を持ったグループに違いない。




「デボラ様、お風呂、入りましょう。久しぶりにお仕事させていただきます」


自動人形は無表情に、私の服に手をかける。




「んああああ!わあああああっ!ひやああああぁ!」




手慣れた手つきで、私はあっという間に身ぐるみ剥がされ、初めての温かな湯船に放り込まれた。


「熱い!茹でられちゃう!」


泡が茶色に変貌する中、自動人形と私の仁義なき戦いが、幕を開けた。











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