14【サイド視点】男たちの大反省会
少しストックが貯まったので今日は二回更新します
「キリフ、すまなかった。俺が甘かった」
レグスタインは、キリフに勢いよくガバッと頭を下げた。
その背中は、俺、どうしようとばかりに悲壮感に満ちている。
キリフは大袈裟に息を吐き、肩をすくめる。
「だから言っただろう。どうするつもりだ?デボラを本当に守り切れるか?」
その言葉に、グレンとヘンケルの肩がビクッと飛び跳ねた。
「デボラ、いい子だから善意100%なんだよね」
バインも、腕を組みうーんと唸る。
「ああ、彼女にとっては当たり前のことだからな」
そう言ってグレンが遠い目をする。
目の前には、彼女がキラキラとした目と慣れた手つきで素材を付け直し、彼女的にはちょっとお直しした弓と矢、そして服一式があった。
どうやっても目立つよな...という輝きが放たれている。
「結局、弓の本体はミスリルで、弦がユニコーンのタテガミ、矢尻はアダマンタイトで、羽はグリフォンの翼......コレ、買ってきた原型を微塵にも留めてないよな」
キリフが、恐る恐る弓と矢に触れる。
吸い込まれるほど透明に光る弓に、持ったキリフの魔力が瞬時に流れ、キュイーーーンと澄んだ音が室内に響いた。
「うわぁ......すご......」
5人は目を離せない。
「服も......なぁ」
ヘンケルが、元の服だった布の残骸を名残惜しそうにみる。
「いや、あれは、レグとキリフが悪いよ。なんであんなヘソが出たり、太ももが丸見えになるような服にするんだよ」
グレンが呆れたように言う。
結局、服はデボラによって解体され、型紙として使われただけだった。
「違うんだって!なぜか今の女性用冒険者の服って、意味なく露出が多いんだよ。俺たちだってちゃんと体を隠せる服はないかと探したよ。」
「ヘソ出てたら腹を冷やすし、危ないだろ。短パンだったら、虫に刺されやすいし、場所によっては寒いしさ。
無意味に胸を強調させるようなのも良くないしさ。でも、冒険者の女性服で売ってるのがそんな服ばかりなんだよ」
レグスタインとキリフは誓って俺たちの趣味ではないと弁解する。
デボラも、その露出の多い服を恥ずかしそうに見て絶句していた。
「私、300年前の古い人間だから、露出は恥ずかしくって。素敵なんでしょうけど、スタイルが悪くてごめんなさい。でも、型紙として使わせていただきますから」
そういいながら、空間バッグから取り出した伝説の魔物、ヒュドラの革をよいしょと浮かばせ、何枚も服の形に合わせてカットする。
「ふふ、洗い替えができて嬉しいです。マジックスパイダーの糸で、部屋で縫ってきますね。」
そう言い残し、自室にカレンと篭ってしまった。
(ヒュドラの革って洗えるのかよ?)
彼女の笑顔を前に、そんなツッコミ誰も入れられない。
「ヒュドラの蛇革なんて、強過ぎだろ!矢だって、剣だって貫通しねえよ!どう言って誤魔化すんだよ」
ヘンケルは、頭を抱えた。
「ヒュドラ......それこそ、見たこともないが伝説によると複数の頭があって、一気に首を切らないと再生するとか言うよな。デボラ、一人でどうやったんだ?」
「俺たちが当たってたら、それぞれのヒュドラの頭に食べられて終了だったな」
バインとキリフが唸る。
「もう、普通になんか聞かれたらヘビ革ですって言おう。間違いじゃないだろ?」
レグスタインが苦笑する。
「ちょっと蛇の柄が大きすぎる気もするが、黒竜の寝床に食糧として置かれていたってことで」
「仕方ないな。じゃあ、ユニコーンとグリフォンとミスリルは?」
「ミスリルは、ダンジョンの300階に鉱脈があったと押し通す。ユニコーンの毛は黒竜のベッド、グリフォンは鷹の羽だ。いいな!そう言い切るんだ!」
レグスタインの笑顔がだんだん引き攣り、背後に冷たい空気が漂う。
それ以上言うなと言う雰囲気だ。
「あっ、そうだ!これだけは伝えておきたいんだけど...」
グレンが口を開く。
デボラが魔女狩りで失われた仲間たちの故郷を巡り、遺品を返したいと言っていたことを告げる。
「そうか.....俺たちのパーティーに女性が入っただけで、かなりみんなに注目されている。変な噂が出る前に、過去の遺跡を早く回った方がいいかもしれないな。そこでなんだが......」
レグスタインは、4人の顔をぐるっと見た。
「みんな、ダンジョン踏破が終わったら、それぞれの活動をする予定だっただろう。俺は、その遺品を届けに行くのを手伝いたい。みんなはどうする?」
4人は、同時に「へっ?」と声を漏らした。
「そんなもの、一緒に決まってるだろう」
「レグ!抜け駆け禁止って言ったのはお前だろ」
「彼女の空間バッグに入ってでも付いていくからな」
「俺たちのパーティーに、デボラが入るのに、行かないと言う選択肢はあるのか?」
4人は一斉に騒ぎ出すので、レグスタインも苦笑いした。
「じゃあ決まりだな。明日、ギルドに彼女を登録して、彼女がしっかり食事を食べられるようになったら出発しよう」
「ギルドか......ところで...俺たちはSランクだよな」
ヘンケルが、ふと呟き、だんだん顔色が悪くなる。
「身分証明は通過するとして......ギルドのステータス確認どうするんだよ?」
グレンも、動きが止まる。
ギルドでは依頼をこなしたり、ダンジョンに潜った後はステータス確認が必須だった。
ギルドは枢機院などとは違う国と分離した独立組織。
国民の大多数が利用している組織で、山菜のようなものを売る一般人から、ダンジョンボスの素材を売るような冒険者と多種多様の巨大マーケットだ。
ギルドに登録すれば、世界中のギルドを使って素材の売買や魔道具の売買が出来る。
その代わり、安全を守るためにステータスに応じたランク分けがされ、ランクに応じた依頼しか受けられないし、買うこともできない。
ステータス確認はギルドの秩序を守るための大切な儀式だった。
「ステータス確認は、水晶に手をかざした瞬間、数値化されてしまうし誤魔化せないよな」
「もしかして最初から詰みじゃね?」
ステータスを確認する魔道具はギルドにしかなく、厳重に金庫に保管されている。
事前に小細工したり、買収も不可能な鉄壁システムなのだ。
「デボラのステータス、考えるだけで恐ろしいんだが」
「俺たちですらSなんだぞ。」
5人はいっせいに叫ぶ。
「どうするんだよーっ!」
その声を自室で聞いたデボラは首を傾げながらカレンに尋ねた。
「なんか、みんな叫んでません?」
本日は21時10分投稿もありです。




