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300年ダンジョンを生き抜いた最強魔女は現代で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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1/6

1 300年眠らされてました

連載始めました。

本日は5話、明日からは21時10分更新です。

300年眠っていたらしい──


鼻に長く嗅いでいた土の湿ったような香りが蘇ってくる。

そう黒竜はあっさり300年時を止めておいたと言うのだけど.......うそ...よね?


私は......どうしていたのだっけ?

一生懸命置かれた立場を思い出そうとする。


たしか──


私はダンジョンの最下層300階に単独で降りた。

そこにはダンジョンのボス、黒竜がいて、最後の戦いで私が勝ったんだったわ。

でも、黒竜にトドメをさす代わりに、私は願いを告げた。


ここがダンジョンの最後なら、私には戻れる場所もない。

私には戻る理由もない。


だがここに来るまでに、同胞たちにはその帰る理由も場所もあったのに、帰れなくなってしまった。


生きたかった命を生きられなかった人たちがいるのに、自らの命を断つことはできない。

だから、代わりに私を終わらせてくれないか?



黒竜は返事をしなかった。

そのかわり、返事の代わりに細い目がガッと開いた。

その瞬間、私の意識は遠のいて、


「ああ、これで私も終わることができたのだ」


そう思っていたのに......どうして??



◆◆◆



「ええと、黒竜。どうやら私、死なせてもらったはずなのに生きているみたいなのだけど.....どうしてかしら?その人たちは?」


私は、死んだと思っていたのに、突然黒竜に起こされた。

思わず目をこすりながら黒竜に聞く。


「単純にここに潜った来訪者だ」


人を突然起こしたくせに、いやそもそも終わりにしてくれたお願いしたはずなのに、黒竜は全く悪びれない。


「ここに?わざわざ?」


私は、改めて床に転がっている5人の男を見つめ直す。


久しぶりに見る「人間」だ。

みんな囚人の服と違うものを着ている。


背中には多くの荷物を持ち歩いて......


私が眠っている間に、ダンジョンは魔女狩りの処刑場から、人がピクニックをする場所に変更したのだろうか?


魔物が徘徊するこの場所は、地上に魔物が出て行かないように、普段は封鎖されていたはずだ。


「わざわざ潜る理由があったのかしら?」


5人全員が致命傷を負わずに倒れている。

潜った理由も倒れた理由もわからない。


「なんで倒れたの?」


私は、普通と違う状況に首をかしげた。


「あまりに久々の人だったからな。思わず竜の姿のまま話しかけてしまった」


すでに人型になった黒竜が、困ったように倒れた5人を見下ろしている。


「ああ、ダメだよ。黒龍の咆哮は、普通の人の脳天を打ち抜くもの。生きてるのかなあ?」


以前戦った時には、完全に防御魔法を展開して、無音シールドをつけていたのだ。それをしても耳に残る音なのに...


私は、一人の男の目を開き、生存確認をする。


「あっ、一応生きてる。どうやら、防御魔法をかけて助かったみたい。でも、展開が弱過ぎるのよね。どうせかけるならがっつり防御したら良かったのに。でも、鼓膜はみんな破れてるっぽい」


みんなの状況を確認して私は手をふりかざした。


「ヒールオール」


全員に淡い光がパチパチと光り、見た目の傷が癒えていく。

きっと鼓膜も回復したはずだ。、


「私を殺しに来た人たちかな?」


助けてみたものの、助けない方が良かっただろうか?

私の心に黒い影が過ぎる。


「それはあるまい。お前の時を止めてすでに300年は経った。私の体ももう老いたというのに、人の子が生きられるわけがない」


さらっと黒竜が話す言葉に、へっ?と顔が固まる。


「ねえ?300?300って言った?嘘じゃないのよね?」


そりゃ、黒竜ほどの魔力なら時も止めることはできるだろうけど。


「300なんて、子供が成人になるぐらいの歳だろう。私なんて、お前が来るよりよっぽど前に生きてるんだからな。」


「黒竜と人を一緒にしたらダメよ!ええっ!じゃあ、この人たち、未来の人なの?」


思わず、床に寝転がっている5人を指差す。


「違うな。お前が過去の人だ。詳しい状況は彼らが起きて聞いてみようと思ったんだが、起きやしない。5人も集まって貧弱な!よっぽどお前の方が強かった」


黒竜はあきれたように腕を組みながら「困ったもんだ」とため息をついた。


私は思わず黙り込む。


胸の奥に、ここに来た過去の記憶と、周りの犠牲が浮かんできた。



そうか......


「みんながいなくなったんだね」


わたしが一人になって......


私一人取り残された。


そして更に300年が経った。


その事実に、思わず目から涙がほろりと溢れる。


「へへっ、300年も経ったんだもん。きっとみんな生まれ変わって幸せだよね。私だけ一人になっちゃった。」


指で拭う手は、あの日、あの時のまま──


私は成長もしていない。

衰えてもない。


でも、あの時の最後と同じ。

私の周りにかつての仲間はいない。



「そうか、死なせてくれってあなたに伝えたつもりだったのに、時を止めて私を助けてくれたのね」



黒竜の咆哮を受けた5人はまだ起きない。


目覚めたら、私を見て何を思うだろう?

最初に向けるのは、怒り?

罵声?

それとも、刃だろうか?



「この5人はとても弱い。なんとか話し合いで私に命乞いをしようともしてきたが。

逆に、単身で、ここまで来て、私にトドメを刺すところまでいったのに、殺してくれとお前は嘆願した。

人というのは面白いものだ」


黒竜は、ふっと5人の寝顔を満足そうに見つめた。


「黒竜は、彼らをどうするつもりなの?」


「ふん、本当なら、お前が私を倒し、このダンジョンは消えゆく運命だ。だが、お前は地上に帰れぬ身で死を願った。

だから、次にお前を連れて帰ってくれる人が来るまで、私は自身の消滅を先延ばしにしただけだ。

こいつらは弱いが300年経ってやっとやってきたんだ。これでダンジョンは終わりにしてお前と共に地上に戻すのみだ」


黒竜は、静かに目を閉じた。

光も入らない最下層300階。

ずっと私一人のために、300年の時を止めて、次の人が来るまで待ってくれたのだ。


「私はお前が来る前から私は生きている。私もずいぶん歳を取った。別に不老不死ではないしな。これで私の役目も終わりだ」


「私は......ごめんなさい。時まで止めてくれたけど、もう誰もいないもの。私もここで終わっていい。黒竜と終わっていい」


私は叫ぶように黒竜を見つめた。


人の姿に変えた黒竜。

私の時を止められる力をもつ存在。


それでも、老いに抗えないのだろうか?


「人の世界は、同じことの繰り返しのように思えるが命が短い分、考えも環境も変わる。

お前は、私をやっつけた唯一の人間だ。魔女だと追うものがいても、お前なら街を焼き払うことも、姿を消して生きることもできるだろう」


「そんなの.......また同じことだ。嫌だ。もう逃げない。もう魔法なんて人間の世界で使わない」


「ならば、人として生きてみたらいい。ほら、やつらも起きるぞ。」


黒竜が指を指すと、床に寝転がっていた5人の手足がぴくぴくと動き始めた。


「どいつに面倒を見させようか?」


黒竜は面白そうに、肩を揺らして笑いながら一人一人の額をデコピンして歩く。


「こいつはどうだ?魔力が強い。魔法使いか?」


うっ....う....


魔法使いと言われた男の薄目がゆっくり開かれる。

その視線は私と確実に交差した。

お互い様子を探るように視線を外せない。


「こ...く...竜......は?」


「ここにいるが?」


その外さない視線を遮るように、ぬっと人型になった黒竜が、魔法使いの男と自分のと間に顔を突き出す。



ひゅっ....


男の喉元から声にならない声が聞こえて息が止まる。



あっ、気絶しかけた!



再び意識を失いそうになる男をみて、慌てて


「大丈夫よ。こら、黒竜!せっかく目覚めたのに何するのよ」


私は思わず声を張り上げる。


「ここからあなたたちが出るには、あなたたちと黒竜の話し合いにかかっているのよ。気絶する場合じゃないでしょ!」


そんな私の声を聞き、さらに化け物か幽霊を見るかのように目を見開く。


怒りでも、刃でもない。

300年ぶりに私を出迎えたのは──


「恐怖かぁ、これは想定外」


思わず、私の口からつぶやきが漏れて、男はさらに目を丸くするのだった。




「それで、あなたたちは何をするためにここまで?」


私は久しぶりの人に私も驚きを隠せないが、口をぱくぱくさせるのみだ。


代わりに黒竜が苦笑いをして答えた。


「数時間前のことだ」











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