1回目
ちよっとした気まぐれで書いて見ました。3話か4話で終わると思います。
…………はて?
ここは一体どこだろうか。
気が付いて辺りを見回してみれば、そこは真っ白な空間が続く部屋が広がっている。
…………どこだ、ここ。
「おお、ようやく目覚めたのか」
不意に声がした方を振り返ると、そこには何やら真っ白な服を着たおじさんが立っていた。
誰だあんた。
そしてここは何処なんだ?
「ふむ、どうやら自分に起きたことが分かっていない様子じゃな」
私に起きたこと?
「うむ、わしはお前の世界の言う所の神と呼ばれる者じゃ。ちなみに、お前さんは死んだぁ。今ここにいるお前さんは魂だけのお前じゃ」
私の目の前で自称神と名乗るお爺さん。普通ならいきなり現れて自称神と名乗られても信じたりはしないのだが、何故なのか…………私には目の前にいるおじさんが本物の神だと分かっていた。神の癖に何でそんなに頭のてっぺんが寂しいのかとか、何でおじさんなのかとか思う所はあるのだが、何故か私には目の前のおじさんが神だと分かっていた。
それは何故なんだろうか?
そう私は頭を悩ましていると、
「お前さんは死んだぁ。分かったか、お前さんは死んだぁのだ」
何故か私に死んだ事をしつこくごり押ししてくる神様。
微妙に『死んだぁ』の発音が少しムカつくんだけと。
「死んだぁ、お前さんは死んだぁ。分かったか、お前はさんは死んだぁのだ。お前さんは死んだぁ―――」
うるさいよ!?
死んだ、死んだって何回連呼するの!?
てか、『死んだぁ』って止めろ。発音が凄いムカつくから。
「お前さんはこうでもして死んだぁ事を認識してくれんと、ここに留まってくれんからな」
そう言いながら神様は急いで何処からか、物凄い分厚い本を取りだす。
「いいか、お前さんは死んだぁ、死んだぁのだ。分かっているか?」
だから『死んだぁ』は止めろ。
「ふむ、では進めるするか」
一人納得した神様は頷きながら分厚い本を捲っていく。
てか何を進めるの?
「転生の儀式じゃ」
転生?
なにそれ、私聞いてない。
「お前さんはちと急がんといかんのじゃ。説明は察してくれ」
いや、察してくれって何を察っするのだ。ちゃんと説明しろ。
「神の名の元に召された魂よ――」
神様の言葉と共に、何やら辺り一面が光に包まれる。
おい、待て、止めろ!
「ええい、わしの服を離さんか!? お前さんは死んだぁのだ、大人しく死んだぁしてるのだ!」
だから『死んだぁ』は止めろ。てか、私を置いて勝手に事を進めないで、説明を話すまではその服、絶対に離さん。
「は、離せ、こら、離さんか! お前さんは死んだぁのだ!」
嫌だ!
私はこの手を離さないぞ。ちゃんと死んだぁ事を話せ。と言うか転生ってなんだ。私は転生するのか?
「そうじゃ! お前さんは死んだぁから転生するのじゃ。じゃから異世界に行ってもらうのじゃ!!」
異世界ってなんだ!?
やっぱり意味が分からん、説明しろ。
「お前は死んだぁのだ! じゃからお前さんは転生してもらうだけなのじゃ! は、早くせんとまたお前さんは勝手に―――」
そんなこんなで神様に抱き付いていた私だったのだが、
「―――ま、またか! またなのか!?」
何故か私の体が透けていっていた。いや、魂が透けているのか?
「何なんじゃ、お前さんは一体!?」
神様は手に持つ分厚い本を地面に叩きつけながら私を睨んでくる。
それは私が聞きたい。
何なんだこれは?
私はどうなってるのだ?
「何故お前さんは死なんのだ!? おかしいじゃろ、一体どうなってるいるのじゃ! 何故お前は何度も生き返るのだ!! これで85回目じゃぞ、おかしいじゃろうが!」
もううんざりだと言いたげにする神様。その頭皮からも、もううんざりだと神が落ちていく。
ふむ。
それにしても、どうやら私は生き返るみたいだ。
よく分からないけど、私は助かったみたいだ。
よく分からんけど良かった良かった。
「良くはないわ!? お前さんのせいで天界は、輪廻の輪は滅茶苦茶なんじゃぞ! 何度も何度もあの世とこの世を行き来しおってからに! 地獄の閻魔も頭を悩ましておるわ!?」
どうやらあの世は大変なことになっているようだ。
神様曰く、どうやら私は死んだぁ筈? 死ぬ程の事に会っているにも関わらず、生きてるらしい。正直意味不明だ。もう少し詳しく話してほしい。
「いいか、お前さんは死んだぁ、死んだぁのだ!」
神様は私の透けていく体を掴み揺らしながら説明はしてくれてはいるが、如何せん………私には良く分からない。
だって、私は生き返るのだから!!
「頼む、どうか大人しく死んどいてくれんか。頼むから、後生じゃから」
もういい加減死んでとお願いしてくる神様。余程私に死んで欲しいみたいだ。
だが、私は生きる!
「後生じゃ、なんなら転生特典も付けるから死んだぁ事にしてくれんか、今ならこの本の中から一つだけお前さんにやるから」
その言いながら神様は私に本を突き出す。
詳しく聞こうではないか!?
「頼むから死んだぁ―――なに?」
詳しく聞きたい!
「ほ、本当か、本当に死んだぁ事にしてくれるのか!?」
いやいや、先ずはその本を見せてくれてからね?
「ほれ、この中から一つ好きなものを選ぶのじゃ!」
私は神様が手渡した分厚い本、『これから転生するあなたへの特典一覧』と書かれた本を受け取り、ページを捲っていく。
――って、おい。
これから転生するあなたへの特典って書かれてるんだが、これって転生する皆が必ず貰えるものじゃないのか? 私さっき特典も無しに転生させられそうになっていたんと思うんだけど…………まぁ、とりあえず読もうか。
「どうじゃ、決まったか、はよう選んで死なんか!」
うーん、本の中身には『肉体強化』『瞬間記憶能力』『空間把握能力』『知識UP』『マニュアル』等々の特典が書かれているが、正直微妙だ。てか、マニュアルとは何だ。
「なんだその顔は、気に入るものが見付からんなら次のページを捲ればいいじゃろうが」
次のページを捲っていくと『魔力大UP』『魔法の才能』『錬金術士』『鍛冶師』『召喚術士』『聖騎士』『鑑定士』『パンパンUP』等々の特典が書かれていた。
おおお!!
これ凄い、これ本当に貰えるの!?
魔法だよ、ファンタジーだよ!? てか、『パンパンUP』って何だ。
「決まったか! はよう選ぶのだ、もう時間が無いのじゃぞ!!」
そう叫ぶ神様の言う通り、私の体はかなり透明になっていた。
だけど大丈夫、私はもう決めたから!!
「そうか! では儀式を始めるぞ! ―――神の名の元に召されし魂よ、哀れな魂よ、今救いを求めんと―――」
神様の転生の儀式と共に、部屋一面が光輝いていく。
そして、神様は私に問う。
「さぁ、お前さんの特典を告げるのじゃ。どれでも一つだけ特典としてお前さんの魂に付与しょう」
そう問うてくる神様に私は『転生するあなたへの特典一覧』の本を返し、こう答えた。
私やっぱり生きるよ!
そう答えて私は生きる事を選び、消えたぁ。
ちなみに、生きると宣言した時の神様の顔は、死ぬまで忘れないと思う。何度も死んでるみたいだけど。




