2回目
……はて?
ここは一体どこだろうか。
気が付いて辺りを見回してみれば、そこは真っ白な空間が続く部屋が広がっている。
……どこだ、ここ。
「…………ようやく目覚めたか」
不意に声がした方を振り返ると、そこには何やら真っ白な服を着た、何やら疲れはてたようなお爺さんが立っていた。
誰だあんた。
そしてここは何処なんだ?
「ふむ、どうやら自分に起きたことが分かっていない様子じゃな、相変わらず……」
私に起きたこと?
「………わしはお前の世界の言う所の神と呼ばれる者じゃ。ちなみに、お前さんは死んだぁ。今ここにいるお前さんは魂だけのお前じゃ」
私の目の前で自称神と名乗るおじさん。普通ならいきなり現れて自称神と名乗られても信じたりはしないのだが、何故なのか…………私には目の前にいるおじさんが本物の神だと分かっていた。神の癖に何でそんなに頭のてっぺんが寂しいのかとか、何でおじさんなのかとか思う所はあるのだが、何故か私には目の前のおじさんが神だと分かっていた。
それは何故なんだろうか?
そう私は頭を悩ましていると、
「お前さんは死んだぁ。分かったか、お前さんは死んだぁのだ」
何故か私に死んだ事をしつこくごり押ししてくる神様。
微妙に『死んだぁ』の発音が少しムカつくし、何かデジャブ的な何かを感じる。はて?
「死んだぁ、お前さんは死んだぁ。分かったか、お前はさんは死んだぁのだ。お前さんは死んだぁ―――」
うるさいよ!?
死んだ、死んだって何回連呼するの!?
てか、『死んだぁ』って止めろ。発音が凄いムカつくし、デジャブが頭を過るから。
「お前さんはこうでもして死んだぁ事を認識してくれんと、ここに留まってくれんからな!」
そう言いながら神様は急いで何処からか、物凄い分厚い本を取りだす。
「いいか、お前さんは死んだぁ、死んだぁのだ。分かっているか? 本当に死んだぁのだ!」
だから『死んだぁ』は止めろ。デジャブが凄いよ。
「ふむ、では進めるとするか」
一人納得した神様は頷きながら分厚い本を捲っていく。
てか何を進めるの?
「転生の儀式じゃ」
転生?
なにそれ、私聞いてない。
「お前さんはちと急がんといけんのじゃ。説明は察してくれ、本当に察してくれ」
いや、察してくれって何を察っするのだ。ちゃんと説明しろ。
「神の名の元に召された魂よ――」
神様の言葉と共に、何やら辺り一面が光に包まれる。
おい、待て、止めろ!
「ええい、何度も何度もわしの服を掴みおってからに、離さんか!? お前さんは死んだぁのだ、大人しく死んだぁしてるのだ!」
だから『死んだぁ』は止めろ。デジャブが凄いよ。てか、私を置いて勝手に事を進めないで、説明を話すまではその服、絶対に離さん。
「は、離せ、こら、離さんか! お前さんは死んだぁのだ!」
嫌だ!
私はこの手を離さないぞ。ちゃんと死んだぁ事を話せ。と言うか転生ってなんだ。私は転生するのか?
「そうじゃ! お前は死んだぁから転生するのだ。じゃから異世界に行ってもらうぞ!」
異世界ってなんだ!?
やっぱり意味が分からん、説明しろ。
「お前は死んだぁのだ! じゃからお前さんは転生してもらうだけなのじゃ! は、早くせんとまたお前は勝手に―――」
そんなこんなで神様に抱き付いていた私だったのだが、
「―――ま、またか! またなのか!? またわしは繰り返すのか!? ループし続けるのか!?」
何故か私の体が透けていっていた。いや、魂が透けているのか?
「何なんじゃ、お前さんは本当に一体何なんじゃ!!」
神様は手に持つ分厚い本を地面に叩きつけながら私を睨んでくる。
それは私が聞きたい。
何なんだこれは?
私はどうなってるのだ?
「何故お前さんは死なんのじゃ!? おかしいじゃろ、一体どうなってるいるのじゃ! 何故お前は何度も生き返るのだ!! これで10029回目じゃぞ、おかしいじゃろうが!」
もううんざりだと言いたげにする神様。その頭皮からも、もううんざりだと神が落ちていく。
ふむ。
それにしても、どうやら私は生き返るみたいだ。
よく分からないけど、私は助かったみたいだ。
よく分からんけど良かった良かった。
デジャブは何故か凄い感じるけど。
「良くはないわ!? お前さんのせいで天界は、輪廻の輪は滅茶苦茶なんじゃぞ! 何度も何度もあの世とこの世を行き来しおってからに! 地獄の閻魔も頭を悩まして寝込んでおるわ!?」
どうやらあの世は大変なことになっているようだ。
神様曰く、どうやら私は死んだぁ筈? 死ぬ程の事に会っているにも関わらず、生きてるらしい。正直意味不明だ。もう少し詳しく話してほしい。
「いいか、お前さんは死んだぁ、死んだぁのだ! いい加減お願いじゃから死んだぁ事にしてくれ、お願いじゃあ」
神様は私の透けていく体を掴み揺らしながら説明はしてくれてはいるが、如何せん………私には良く分からない。
だって、私は生き返るのだから!!
「頼む、どうか大人しく死んどいてくれんか。頼むから、後生じゃから、わしはもう限界じゃあ……」
もういい加減死んでとお願いしてくる神様。余程私に死んで欲しいみたいだ。て言うか先に神様が死にそうだ。頭の辺りが。
だが、私は生きる!
「後生じゃ、転生特典も付けるから死んだぁ事にしてくれんか、今ならこの本の中から一つ………いや、二つお前さんにやるから」
その言いながら神様は、弱々しく私に本を突き出す。
詳しく聞こうではないか!?
「そうか! でははよう死んだぁしてくれんか!」
いやいや、先ずはその本を見せてくれてからね?
「ほれ、この中から二つ好きなものを選ぶのじゃ!」
私は神様が手渡した分厚い本、『これから転生するあなたへの特典一覧』と書かれた本を受け取り、ページを捲っていく。
――って、おい。
これから転生するあなたへの特典って書かれてるんだが、これって転生する皆が必ず貰えるものじゃないのか? 私さっき特典も無しに転生させられそうになっていたんと思うんだけど…………まぁ、とりあえず読もうか。デジャブが凄いし。
「どうじゃ、決まったか、はよう選んで死なんか!」
うーん、本の中身には『肉体強化』『瞬間記憶能力』『空間把握能力』『知識UP』『記憶保持』『マニュアル』等々の特典が書かれているが、正直微妙だ。てか、マニュアルとは何だ。
「気に入るものが見付からんなら、はよ次のページを捲らんか!」
次のページを捲っていくと『魔力大UP』『魔法の才能』『錬金術士』『鍛冶師』『召喚術士』『聖騎士』『鑑定士』『アイテムボックス』『パンパンUP』等々の特典が書かれていた。
おおお!!
これ凄い、これ本当に貰えるの!?
魔法だよ、ファンタジーだよ!? てか、『パンパンUP』って何だ。
「決まったか! はよう選ぶのだ、もう時間が本当に無いのじゃぞ!! 今度こそは、今度こそ………いや、しかしまた繰り返しが……」
そう叫び呟く神様の言う通り、私の体はかなり透明になっていた。
だけど大丈夫、私はもう決めたから!!
「そうか! では儀式を始めるぞ! ―――神の名の元に召されし魂よ、哀れな魂よ、今救いを求めんと―――」
神様の転生の儀式と共に、部屋一面が光輝いていく。
そして、神様は私に問う。
「さぁ、お前さんの特典を告げるのじゃ。どれでも一つ……ではなく、二つだけ特典としてお前さんの魂に付与しょう」
そう問うてくる神様に私は『転生するあなたへの特典一覧』の本を返し、こう答えた。
記憶保持と、アイテムボックスで!!
「知ってた!! わし知ってた、どうせまたなのじゃろう!? 生きる事を選んだのじゃろう!! またこうやってわしは繰り返しと言うループの狭間に永遠に―――なんじゃとっ!?」
記憶保持と、アイテムボックスで!!
「ほ、本気か? い、いや、わしはまさか夢でも………見ている、のか……?」
記憶保持とアイテムボックスと答えて、私は死んだぁ事を選んだのだが………どうも神様がおかしい。夢だとか何だとか呟きながら自分の頭を叩いている。大丈夫なのだろうか?
そして、何故か私のデジャブが止まった。一体何だったのだろうか。
「い、痛い、夢じゃあない。ほ、本当に死んだぁ事にしてくれるのか? わしは解放されるのか?」
神様の言ってる事はよく分からないけど、記憶保持とアイテムボックスでお願いします!!
「ま、任せるのじゃああああああああああ!! これでわしはやっと解放されるぅううううう!! わ、わしの本気を見せてやるぅうううう!!」
そう叫んだ神様は、手にした『これから転生するあなたへの特典一覧』の本から二つの光を取り出し、勢いよく私にぶつけた………もっと優しくしてほしいのだが……。
私にぶつかった二つの光は、すっぽりと私の体……ここでは魂に収まった。
そして、私は―――
「な、何故じゃ!! 何故お前さんはまたとして生き返ろうとしておるのじゃ!! おかしいじゃろうが、わしはお前さんに特典をやった筈じゃろうがぁ!! しかも二つもじゃぞ!!」
静かに消えて行こうとしていた。
どうやら時間切れだったようだ。
私はどうやら生き返るらしい。
「ま、待て、待つのじゃ!? このままだと大変なことになるぞ!?」
え、大変なこと?
10000回死ぬ事より大変なことってあるの?
「天界の規定で、転生者意外に特典をやってはいかんのじゃ! これを破れば厳しい天罰が与えられるのじゃぞ!?」
さもそれは恐ろしい事だと言う風に語る神様。
流石に私も天罰はご遠慮したいところなんではあるのだが………
「主にわしに」
悲しいわー、辛いわー。
でも大丈夫!
私達きっとまた会えると思うんだ。
その時私は記憶はないと思うけど。
その時の私をよろしくお願いします。
そう言って私はお辞儀をして消えた。
「んな馬鹿なことがあるかぁああああああああああ!!」
ちなみに、その時の神様の顔は死んでも忘れないと思う。私はどうやら10029回も死んであの世に来てるみたいだけど、その事の記憶は一切覚えてないようだ。と言うか、どうやったら10029回も死ぬんだろう?
てか、私は一体誰なんだ? 記憶が一切無いんだが……。
そして、私は生き返った。
◇◇◇
目が覚めると、満天の青空が見えた。未だ霞む私の視界には、何処までも続くような大空が広がっている。
どうやら私は寝ていたようだ。
ゆっくりとその場から上体を起こし、辺りを見回す。
「森の中……」
ここは何処だと思えば辺りは自然溢れる森の中。
何故こんな所で寝ていたのかと考えてみるのだが………あれ、私は誰だ?
もう少し考えてみれば何故か頭に浮かぶのは神様の最後の顔………あれは死んでも忘れない……忘れない……忘れ……ない? あれ、どうして私は神様を覚えているのだろうか。
はっ! もしかして、私は転生したのか。
「ここが異世界か……」
これから始まる異世界生活。
私はこれから新しい人生を謳歌するのだ。
そんな感慨にふける私に、背後から誰かが近付いて声を掛けて来た。
「何を馬鹿なこと言ってるのよ、あんたは……」
異世界人生初の対面。
それは銀髪のお姉さんが現れた。
「大丈夫?」
何やら心配そうに此方に覗き込み、その太陽に反射されるように輝く銀色の髪を靡かせるお姉さん。そのお顔は大変整っており、お姉さんは私に向かって手を伸ばして来た。
「ほら、起きて」
伸ばされたお姉さんの手を握りしめると、不覚にも自分の胸が何故か物凄い高鳴りを上げ、息が苦しくなっていく。
これがトキメキと言うものなのだろうか。
そう思った私は悪くないと思う。
なのでお姉さんにこう尋ねてみた。
「お前さんは死んだぁ」
一体何故にこの言葉が出てきたのか、私は知らない。
そして気付くと大空を舞っていた私は、大地で握り拳を構え待つ銀髪のお姉さんと目が合い、
「あ、お母さん……」
私は全てを思い出した。
なるほど、10000回以上の自分の死は、どうやら全てこの銀髪のお姉さん……お母さんだったようだ。私は黒髪なんだけどね!
なぁんだ、トキメキは不整脈だったのか。
そして、私は死んだぁ。
そして、暫くして直ぐに生き返った。
ちなみにあの世は神様不在で誰も居なかった。
計10030回死んだぁだった。




